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SAPジャパン、エンタープライズSOA実現に向けた取り組みを説明

「SAP TechEd'06東京」を前に新製品・サービス発表

安田誠バイスプレジデント
 SAPジャパン株式会社は10月3日、エンタープライズSOAに関する同社の戦略説明会を開催した。この説明会は、10月5日、6日に行われる「SAP TechEd'06東京」に先立って行われたもので、安田誠バイスプレジデントがエンタープライズSOA実現への取り組みを述べるとともに、新たに発表されたエンタープライズSOA関連の製品・サービスなどについて説明した。

 まず安田バイスプレジデントは、従来のSOAとエンタープライズSOAを比較し、「従来からいわれているSOAとエンタープライズSOAは似ているようで、その視点やアプローチの仕方は異なっている。従来のSOAは、ビジネスプロセスにおける複数のシステムやデータベース、業務アプリケーションをつなぐためのツールや基盤が提供されているという状態。しかし、実際はつなぐだけでも非常に難しい作業になる。これに対し、エンタープライズSOAでは、簡単につなぐことができるよう、ある程度定義されたサービスブロックを事前に用意し、ミドルウェアだけでなくプラットフォームも含めて包括的にSOAを提供していく」と説明。

 具体的なエンタープライズSOAへの取り組みとしては、業界で初めてエンタープライズサービスの製品化を実現。エンタープライズSOAの中核製品「mySAP ERP 2005」において提供されている。「現在500個のサービスを製品化しており、最終的には1300個を目指す」という。


mySAP ERP 2005のロードマップ
 「mySAP ERP 2005」の製品ロードマップについては、「2010年までメジャーバージョンアップは行わず、エンタープライズSOAを実現するための安定したプラットフォームにしていく。エンタープライズサービス、ERPの新シナリオ、テクノロジー拡張といった機能拡張については、今後、選択適用可能な拡張パッケージを継続的に提供することで対応する」考えで、「これに対してオラクルが、2008年にバージョンアップ版を投入して対抗することを表明しているが、私は2008年に本当に出荷できるのか疑問に思っている。また、そのバージョンアップ版で搭載される機能は、すべてmySAP ERP 2005の機能拡張でカバーできる範囲だろう」と自信を見せた。

 さらに、同社では、エンタープライズSOAを実現するためのプラットフォームとして、エンタープライズSOAを体験できる「SAP Discovery System」、ISV向けのコンポジションプラットフォーム「SAP NetWeaver Composition Environment」の提供、ビジネス・プロセス・エキスパートを対象とした初のオープンコミュニティ「ビジネス・プロセス・エキスパート・コミュニティ」、SOA開発者を支援する「エンタープライズSOAトレーニングコース」の開設を新たに発表している。


SAP Labsジャパン エンタープライズSOA推進室エンタープライズSOAアドバイザ・松本潤マネージャ
 これらの取り組みは、いずれも10月2日、3日に独SAP本社またはSAPジャパンから発表されたエンタープライズSOAに関する最新の製品およびサービスとなり、SAP Labsジャパン エンタープライズSOA推進室エンタープライズSOAアドバイザ・松本潤マネージャが、それぞれについて説明を行った。

 「SAP Discovery System」は、エンタープライズSOAの導入に必要なサーバーやソフトウェアツール、機能をまとめたシステムパッケージ。具体的には、業界標準サーバー「HP ProLiant DL380」に、SAPの統合プラットフォーム「SAP NetWeaver」、統合基幹システム「mySAP ERP」およびエンタープライズSOAに基づくサンプル・ビジネスシナリオをあらかじめインストールし、設定済みの状態で提供する。10月30日から日本HPにより受注開始される予定。

 「これによって、エンタープライズSOAを本格導入する前に、短期間かつ比較的安価なコストでエンタープライズ・サービスを利用した新しいプロセスの構築や変更したことによる影響などを実際に試すことが可能となり、エンタープライズSOA導入の方法やそれに必要な知識の学習を支援できる」(松本マネージャ)としている。

 「SAP NetWeaver Composition Environment」は、「SAP NetWeaver」上でのアプリケーション開発・運用を容易にする、標準準拠の簡素化されたコンポジション環境。開発者やビジネス・プロセス・エキスパートにおける、より迅速で柔軟なコンポジット・アプリケーション開発を支援するための使いやすいビジュアルツールなどを提供する。まずはISV、パートナーに向けて来年前半にプレビュー出荷を開始する予定。

 「ビジネス・プロセス・エキスパート・コミュニティ」と「エンタープライズSOAトレーニングコース」は、同社の進めているエンタープライズSOAに関するエコシステム活動の一環となるもの。

 「ビジネス・プロセス・エキスパート・コミュニティ」は、ビジネスプロセスのエキスパートを対象とした業界初のオープンコミュニティ。「SAPのエコシステムでは、すでにエンタープライズ・サービス・コミュニティとSDNコミュニティ、IVNコミュニティが立ち上がっているが、ここに新たにビジネス・プロセス・エキスパート向けのコミュニティが加わることになる。これによって、効率よく情報、経験を共有し、エンタープライズSOAを活用してビジネスの俊敏性を高めることが可能になる」という。

 「エンタープライズSOAトレーニングコース」は、SOAに基づいたシステム構築に必要な最新の知識および技術を習得するための初のトレーニングプログラム。SOAへの対応を迫られているすべての開発者やシステムインテグレータを対象に、SOAの最新技術をいち早く取り入れて提供する。開講は2007年2月の予定。

 なお、エコシステムにおけるパートナーとの新たな取り組みについては、「SAP Discovery System」の提供にあわせ、日本HP内にエンタープライズSOA環境の評価・検証を支援する「SAP NetWeaverソリューションセンター」を新たに設立するほか、今後、東洋ビジネスエンジニアリングに「SAPコンピテンスセンター」を設立する計画も明らかにした。



URL
  SAPジャパン株式会社
  http://www.sap.com/japan/


( 唐沢 正和 )
2006/10/03 18:05

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