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“FAN”でファイルサーバー管理の悩みを解決します-ブロケードとネットアップ


ブロケードのシステムエンジニアリング統括部長、小今井裕氏

グローバルネームスペースを利用すると、ファイルの物理的な位置を気にせずに利用することが可能になる
 ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社(以下、ブロケード)は、FAN(File Area Network)と呼ばれる構想を掲げ、ユーザーの課題解決に寄与するとして事業を展開している。今回は、FANとは何か、そして国内でのビジネスをどう展開していくかについて、ブロケードと、そのパートナーである日本ネットワークアプライアンス株式会社(以下、ネットアップ)に話を聞いた。

 FANとは、一言でいえばファイル管理のための技術を体系化したもの。現在の企業内では、Office文書ファイルを中心にユーザーが利用するデータは多くのファイルサーバーに分散しており、営業データはこのサーバー、プレゼンテーション資料は別のサーバー、というように、常にサーバー、つまりファイルの物理的な保管場所を意識した運用をせざるを得ない状況だ。こうした運用は非常に効率が悪いだけでなく、「データを探すのに手間取ってしまうと、ビジネス上の迅速さが失われてしまう」(ブロケードのシステムエンジニアリング統括部長、小今井裕氏)。

 そこでブロケードでは、FANによってこの課題を解決しようとしている。ここで利用しているのが、「グローバルネームスペース」と呼ばれる技術だ。グローバルネームスペースとは、すべてをまたがった単一の論理的な名前空間のこと。CIFS/NFSを経由したファイルアクセスで利用することができ、この技術を用いると、管理者はファイルの物理的な位置ではなく、業務別、部署別などの視点でファイルを分類して、ユーザーに示せるようになるため、業務効率を改善することが可能になるという。

 また管理者側の視点に立った場合、通常のファイルサーバーのみを利用した運用では、ファイルやフォルダを再配置しようとしても、位置の変更が直接ユーザーに影響してしまい、移動後の位置をユーザーに通知する手間が生じてくる。しかしグローバルネームスペースを利用すると、「ファイルの物理的な位置が変わってもユーザーからの見え方は変わらなくなるため、データ移行、ファイルサーバー統合といった作業を管理者が裏で行うことが容易になる」(小今井氏)。

 また、ファイルの価値にあった可用性やリスクを考慮して、ポリシーベースで適切なストレージに保存するILM(情報ライフサイクル管理)も導入しやすくなるし、レプリケーションなどの作業も簡単に行える。最近では、ストレージをすべて中央のデータセンターに集約して、支店・支社などの拠点からファイルサーバーをなくす「WAFS(Wide Area File Services)」のソリューションも注目を集めているが、FANへの切り替えを済ませておけば、ユーザーからの見え方を変えることなく、段階的にWAFSを導入することもできるのだ。


ネットアップのマーケティング本部 プロダクトマーケティング担当マネージャ、阿部恵史氏
 ブロケードではこうしたFANの構築を可能にするソフト「Storage X」を、ファイルサービス製品群「Tapestry File Services」の中で提供しているが、その展開の一翼を担っているのがネットアップ。同社ではブロケードからOEM提供を受け、「NetApp Virtual File Manager」(VFM)として国内でも販売を行っている。

 ネットアップのマーケティング本部 プロダクトマーケティング担当マネージャ、阿部恵史氏は、VFMの戦略上の意味合いについて、「Windows市場に対して切り込む武器にしたい」と話す。同社はNFSの市場、つまりUNIX/Linuxの市場ではかなりの強さを持つが、Windows市場では苦戦しているのが現状。企業としては、米国本社と米Microsoftが包括契約を結ぶなど、Windows市場に対してのアプローチは続けており、その一環として、企業内に多く存在するWindowsファイルサーバーの統合を訴求できるVFMにより、Windows市場に切り込みたいと考えているのである。

 そのため、ブロケードとも積極的にパートナーシップを展開。ブロケードのエンジニアにパートナー向けセミナーで登壇してもらったり、デモ環境構築に協力してもらったり、セールス部隊へトレーニングを実施したりして、発表されたばかりのVFM新版についても、着々と販売準備を進めているという。

 なおネットアップは、買収した米Spinnaker Networksのグローバルネームスペース技術を、OSである「Data ONTAP GX」に取り込んでいる最中であり、2つの技術が併存する形になる。阿部氏はこれについて、「Data ONTAP GXの管理下にあるものについては、グローバルネームスペースによってデータの位置を抽象化していこうという試みをしているのは確かだが、CIFS環境に制限があるなど、まだ実装中の段階」との現状を説明。「ヘテロジニアス環境で、今、提供できる製品としてはVFMが適している。ベースとなるインフラがあればすぐに利用できるし、即効性と用途によって、Data ONTAP GX(で実現される機能)とのすみ分けが可能になるだろう」とした。

 またFANは、市場規模の拡大が見込まれている点も両社が注力している理由の1つ。FANは新しい概念のため、直接これを取り扱った市場規模予測はないが、国内における非構造化データの容量は年率60%で増加している。NASの市場もデータ増大を受けて年率15.3%(IDC予測)で成長するとされているほか、データ管理の集中化という面では、昨今のコンプライアンス意識の高まりを受け、FANのような体系化されたファイル管理の仕組みに対するニーズが高まっている。こうした背景から、今後ニーズが高まりこそすれ減少することはないだろうと考えられており、両社では今後も連携を密にして、FAN事業を拡大していきたい考えである。

 VFMの参考価格は、FAS270とあわせて利用するケースで190万円前後から。



URL
  ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社
  http://www.brocadejapan.com/
  日本ネットワークアプライアンス株式会社
  http://www-jp.netapp.com/

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( 石井 一志 )
2006/10/23 12:54

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