米サンフランシスコで、10月22~26日の5日間にわたり、Oracle OpenWorldが開催されている。23日には、AMDの会長兼CEOのヘクター・ルイズ氏、Oracleのサーバ・テクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデントのチャック・ロズワット氏、Dell会長のマイケル・デル氏の基調講演が行われた。
■ 顧客に選択肢を提供、顧客の選択が革新をリードする
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AMDの会長兼CEO、ヘクター・ルイズ氏
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AMD会長兼CEOのヘクター・ルイズ氏は、「選択肢の存在」の重要性をアピールし、実質的な選択肢が存在しなかった状況から、IntelかAMDかを選べるようになったことがいかに価値あることか、そこでAMDが選ばれているということにどのような意味があるかを丁寧に語った。
ルイズ氏は、従来は提供されていなかった選択肢が現実化し、その新しい選択肢をユーザーが選び取ることで、新たな技術革新が推進される、という。AMDは、ユーザーが求めるものについて耳を傾けた結果、「32ビットからの移行の負担を伴わない64ビットプロセッサで、電力効率が高く、高性能とスケーラビリティも犠牲にしていない」プロセッサが求められていることを理解し、2003年にフラッグシップ・プロセッサとしてAMD64アーキテクチャに基づく“Opteron”を投入した。現在はデュアルコアまでが提供されているが、2007年にはクアッドコア(4コア)版も投入される。
Opteronは、AMDにとって成功であったのはもちろん、ユーザーにとっても成功であったといえる。それは、Opteronの提供により、それまで得られていなかった、x86プロセッサにおける「選択」が可能になったからだ。選択があれば競争が生まれ、競争の結果、技術革新が起こる。選択が革新を引き起こすということは、言い換えれば、技術革新を起こす力がベンダーからユーザーに移っているということでもある。自由でオープンな市場で競争し、製品の品質を高めていく必要がある。AMDは、ユーザーの需要を理解して「革新」に変換し、有意義な「選択肢」として提供したいと考えている、という。
また、ちょっとしたエンターテインメントとして、映画「マトリックス」を踏まえたイメージビデオが上映された。ルイズ氏がモーフィアス役を演じ、IT管理者に「賢い選択」を迫る、というもの。Intelプロセッサ搭載サーバーの高熱・騒音という環境と、AMDプロセッサ搭載サーバーによる快適な環境のどちらを選ぶか、という内容で、高い電力効率の実現でIntelに先んじたということをしっかりアピールすることも忘れなかった。
さらに、AMDの採用がPCベンダー各社に拡大していることを、各社のロゴをスクリーンに映しながら説明しているときに、「1つ抜けてませんか」と話を遮りながらDellのマイケル・デル会長が壇上に現われるという演出もあり、DellとAMDがパートナーシップを確立し、DellからAMDプロセッサ搭載サーバーが発売されることがアピールされた。ただし、製品の紹介は午後のマイケル・デル氏の基調講演で、とされ、ここでは予告にとどまったのだが。
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ルイズ氏が示した、主なAMDプロセッサ採用企業のロゴ
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AMDとDellがパートナーシップを結んだことが強調された
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ヘクター・ルイズ氏(左)と、Dellのマイケル・デル会長(右)
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■ 情報の爆発的増加に対するデータベースの革新
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基調講演を行うOracleのサーバ・テクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデントのチャック・ロズワット氏
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データベース製品を担当するOracleのEVP、チャック・ロズワット氏による基調講演は、「情報の急増」という現状を踏まえ、Oracleのさまざまな製品や技術がこの問題にどう取り組むか、概略を紹介するというスタイルで行われた。
情報の急増に関して興味深かったのは、通常はWebで公開されている情報の急増について語られることが多いのに対し、同氏は“Web”に加えて“Deep Web”と“Dark Web”という概念を持ちだしたことだ。Deep Webは、企業イントラネットの内側にあり、インターネット側から参照できていない情報、そして、Dark WebはまだWeb化されていない各種情報のことだという。一般的なWebの情報急増に加えて、こうした情報量を加えると、その総量は莫大なものとなり、ITはその情報量に対応することが求められるということだ。そして、Oracleの対応としてこの1年間にリリースされた新製品群や、Oracle Databaseの次世代バージョンとなる“Oracle Database 11g”のβ版に搭載された各種の新機能のリストを示した。
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Webのデータ量はいわば氷山の一角で、その背後にさらに多くの“Deep Web”“Dark Web”といったデータが隠れているのだという
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前回のOracle OpenWorldから今回までの一年間にリリースされたOracle製品の例
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次世代データベース製品であるOracle Database 11gのβで実装された新機能の数々
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■ 新たなパートナーシップをアピール
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Dell会長のマイケル・デル氏
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デル氏の基調講演の冒頭で上映されたビデオの一シーン。登場人物は、左からIntel社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏、Oracle CEOのラリー・エリソン氏、マイケル・デル氏、EMC会長兼社長兼CEOのジョー・トゥッチ氏、AMD会長兼CEOのヘクター・ルイズ氏
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Dell会長のマイケル・デル氏の基調講演でもビデオが上映され、会場を大いに沸かせた。ファンタジー仕立てのショートストーリーで、救世主デル氏が仲間と力を合わせて人々を救うという流れ。アニメーションではあるが、人物の顔の部分には写真を使っており、米国流のキツいユーモアにあふれたものだ。
救世主デル氏は、Oracleのラリー・エリソン氏やEMCのジョー・トゥッチ氏と力を合わせる。Intelのポール・オッテリーニ氏とAMDのヘクター・ルイズ氏は当初けんかをしているのだが、デル氏の仲裁でけんかをやめる。両氏がそれぞれ差し出すポテトチップをデル氏が両方とも食べる、というシーンは、デルはIntelともAMDとの良好な関係を保ち、両社のプロセッサを採用していく、ということをコミカルに表現したものだ。敵として出てきて人々を苦しめているのは「複雑性(Complexity)」「高コスト(High Cost)」「レガシー(Legacy)」「電力消費(Power Consumption)」などだが、WebSphere(IBMのアプリケーションサーバー)やSolaris(サンのOS)がちらっと出てきたりなど、短いながらもいろいろ仕掛けがしてあり、来場者には大受けだった。
■ URL
Oracle OpenWorld
http://www.oracle.com/openworld/
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