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PTCジャパン、日本における新年度事業計画を発表-同社初の日本人社長体制へ


井上公夫社長

3年後の目標
 PTCジャパン株式会社は11月7日、10月からスタートした2007年度事業計画を明らかにした。

 今年10月からは、同社初の日本人社長として、井上公夫氏が就任しており、日本人社長による新体制での事業計画の発表となった。

 井上社長は、2009年度までの中期経営計画を掲げ、ハイエンド3D CAD市場においては年率10%増の成長、ミッドレンジ3D CAD市場においては年率50%増、PLM(製品ライフサイクル管理)市場で年率50%増という高い成長を目指すことを明らかにした。

 「国内市場においては、3年で2倍以上の規模に拡大したい」(井上社長)と意欲を見せる。

 PTCは、ここ数年で、3D CADビジネスに加えて、PLMソリューション分野へと事業を拡大しつつある。米本社が発表した全社の売り上げ規模は、2006年度実績で前年比19%増の8億5500万ドルに達し、この分野では世界で3本指のうちの1社に位置づけられる。アジア地域の売り上げ構成比は約24%で、日本においても自動車、電気電子、重工業・機械などの製造業を中心に4000社以上への導入を図っている。

 井上社長は、「日本の市場で展開していくには、日本のユーザーを理解した人材が必要であるという本社の要望もあり、このほど私が社長に就任した。WindchillをはじめとするPDS(製品開発システム)に関する製品やサービスが日本の製造業ユーザーに受け入れられる地盤ができてきたともいえる。ものづくりをITで支援するパートナーとして、最良と評価される会社を目指したい」としている。


ワールドワイドでの業績 国内の主な顧客企業 同社のPDS製品群

 日本における具体的な施策として、ハイエンド3D CADの「Pro/Engineer」を導入している既存大手ユーザーのPDS化を加速し、ものづくりのデータベースとしての活用を促進するほか、Pro/INTRALINK8.0、PDMLink8.0、ProjectLink8.0といったCADデータ管理ツールと、他の関連システムを連動する形での提案を進めていくという。これにあわせて直販によるコンサルティング営業体制の強化を進める。

 また、新規にミッドレンジCADユーザーを獲得するために、準大手、中堅企業をターゲットとした営業体制を強化。この分野では、パートナーとの協業も積極化する考え。「ミッドレンジCADの領域において、PDSの分野にまで踏み込んでいけるパートナー企業との協業体制を確立したい」とした。

 さらに、今後の成長戦略として、米国で実績があがっているアパレル、製靴、製薬、航空宇宙防衛といった新規市場への参入も、順次模索していく姿勢を示した。

 「PTCジャパンの強みは、豊富なPro/Engineerの顧客基盤およびこれらの顧客からの基幹システムとして高い評価を得ていること、約80人の製品開発に携わるコンサルティング集団を有していること、完成度の高いCAD/PLM製品群を持っていること、機動力のある営業組織という点にある。また、製品ライフサイクルのなかで、製品設計にフォーカスしており、製品開発に関わるデータを一元的に提供し、PLM全体のソリューションを統合できる」とした。

 井上社長は、1980年に、米Tulane大学大学院修了後、同年、米ヒューレット・パッカードに入社。81年に横河ヒューレット・パッカードに移籍し、ワークステーション事業などを担当。2003年には、日本ヒューレット・パッカードのパーソナル・システム統括本部ワークステーション本部本部長を務めた。95年には、米ハーバード大学ビジネススクールででPMDを修了している。


東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター・吉川良三特任研究員
 一方、東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター・吉川良三特任研究員が会見に同席し、ものづくりにおけるIT活用の現状などについて説明した。

 吉川特任研究員は、自らが1993~2003年にわたって、韓国サムソンで実践した製造業におけるIT利用について説明。「ものづくりにおけるIT活用においては、ツールからITシステムへと進化させる視点と、プロセスと組織能力を重要することが大切である」とし、「現在のものづくりは、ものの流れから、設計情報の流れを重視する形へと移行している。ものづくりを分析することは、設計情報を分析することにほかならず、これが、21世紀のものづくりはデジタル化だといわれるゆえんである」と定義。ものづくりおよび製造業における競争力の源泉が、IT化にあることを訴えた。また、「日本のものづくりの特徴である摺り合わせを生かすため、あるいは、さらにグローバル化をしていくためには、ITを活用していく必要がある。だが、日本の製造業はこれが遅れている。情報戦略を、経営戦略の一部とは思っていない企業がある点が問題だ」と指摘した。



URL
  PTCジャパン株式会社
  http://www.ptc.com/


( 大河原 克行 )
2006/11/07 12:54

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