Enterprise Watch
最新ニュース

NGNはサービスプロバイダの助け船になるか?-米Foundry


 キャリアやサービスプロバイダがめざす次世代ネットワーク「NGN」(Next Generation Network)は、これまでの電話網をIPネットワーク化する、というだけでなく、新しいビジネスモデルおよび融合サービス、ユビキタスな個人のライフスタイルなどをも実現させうる要素まで含んでいるといわれる。

 そのため、オープンで大容量、高品質、モビリティそしてセキュアな環境が重要であり、ITU-Tなどが中心になって標準化を進めている。最近のトピックスは、今年7月にリリース1勧告が承認された点だ。当然、内外ベンダ側でもNGNに向けた開発が活発化しつつあり、米Foundry Networks(以下、Foundry)もそうした中の1社である。今回は、このほど来日したハイエンドスイッチング/ルーティングソリューション プロダクトマーケティングディレクタ、アメド・アブデルハリム氏に、同社のNGN戦略を聞いた。


トリプルプレイからクワドラプルプレイへ

ハイエンドスイッチング/ルーティングソリューション プロダクトマーケティングディレクタ、アメド・アブデルハリム氏

NGNの概念図
 現在のように音声をはじめATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)、フレームリレー、TDM(Time Division Multiplexing:時分割多重)など複数ネットワークの混在環境では、管理が複雑だし、運用コストも膨らむ。一方で、ユビキタスなブロードバンドコネクティビティに向けユーザー数も増大しつつあり、このままではネットワークのパワーやキャパシティ低下が深刻にならざるをえなくなっている。こうした動向を反映して、既存のキャリアやサービスプロバイダ、あるいはCATV事業者などの間では、一段と競争が激化している。ここで生き残っていくためには、たとえばCATV事業者の場合VoIPを加えたり、サービスプロバイダの場合、有線および無線インフラ統合などに取り組んだりしている。「米国ではこうした状況のことを、トリプルプレイではなく、もはやクワドラプル(quadruple)プレイと呼ぶようになってきた」とアブデルハリム氏は最新事情を説明する。

 いま魅力的な新サービスといえば、HD-TVやVoD、インタラクティブTV、そして3G/4G携帯電話などだ。しかしこうした新サービスを提供すると、ネットワーク負荷が増大し、サービスプロバイダたちは、自らのネットワークのみではとても無理なのでは、といった懸念を抱き始めている。

 アブデルハリム氏は「NGNこそこうしたサービスプロバイダの諸問題を解決させるアーキテクチャモデル」と言い切る。NGNで多彩なサービスを実現させるために、実に多くのテクノロジがこのモデルのバックボーンに採用されているのだ。

 第1がIPv6。これでNGNに接続する多くの加入者やデバイスのためのIPアドレスを確保する。第2がここ4~5年普及しており、1つのインフラ上で多様なサービス統合を実現させるMPLS(Multi Protocol Label Switching)と、QoSを実現させるDiffServ。第3が、これまでのLANやメトロに加えてWANやバックボーンテクノロジとして使われるキャリアイーサネット。これは従来のEthernetを補完し標準化をはじめQoS、スケーラビリティ、信頼性、サービス管理などを実現させる。第4がOC-768/STM-256の2.5倍の容量をもつ100Gigabit Ethernet(GbE)。そして第5がGMPLS(Generalized MPLS)。これは、レイヤ3、2、1の運用環境を制御する1つの共通テクノロジであるほか、レイヤ3、2、1間の緊密な接続により、これまで電話容量アップに数週間かかっていたものが格段に迅速化されるというものだ。


標準化をふまえたFoundryの製品スタンス

2005年のInterop Tokyoに出品されていた、BigIron RX-4(上)と同 RX-8(下)
 Foundryは、これまでにも多くのテクノロジを開発、すでにNGNに向けても精力的に展開中という。2003年ごろから提供している第4、第5世代の製品群がそうで、たとえば第4世代と位置づけられるものにはIPv4/v6ルータであるNetIron 40G、第5世代と位置づけられるものには10GbE レイヤ2/3スイッチであるBigIron RX-4/8/16がある。さらにNetIron XMR 4000/8000/16000などのマルチサービスルータはIPv4、IPv6、MPLSに対応したキャリアイーサネット向けで、NGNのコア用に設計されたものだ。また、高可用性のMPLS対応メトロルータNetIron MLXもある。

 これらをNGNの概念図にあてはめてみると、たとえばNetIron XMRはバックボーンルータに使用され、NetIron MLXはMPLSに基づいたメトロ部分に使用される。このとき、MPLSが不要のレイヤ2/3ニーズにはBigIron RXシリーズを使用すればいい、というわけである。

 アブデルハリム氏は、「BigIron RXにしろNetIron XMR、NetIron MLXにしろ事実上100GbE対応なので、NGNの100Gbpsになっても取り替えなくてすむ」と、そのユーザーメリットを強調する。つまりはGMPLSをのぞいたNGN向けキーテクノロジのほとんどをFoundryではサポートしていることになる。なお「GMPLSは、MPLSが9年かかってテクノロジや標準を決めてきたことを思うと、まだ2~3年はかかるのかもしれない」とアブデルハリム氏は今後を予測する。

 同社はいま、標準化に向けても積極的な取り組みを展開中で、2001年に設立した「メトロイーサネットフォーラム」のメンバーになっている。このフォーラムは、テクノロジの定義を定めており、さらにメトロを超えたWANやキャリア間のインターフェイスまでをも手がけている。

 また100GbE推進にも意欲的で、IEEE Ethernetアライアンス中の「ハイスピードスタディグループ」のメンバーでもある。このグループは100GbE実現のために必要なテクノロジの研究を行っている。IETFではMPLSについても継続してサポートしており、マルチキャスト最適化やMPLSを拡大してGMPLSにする作業、およびオプティカルレイヤのコントロールの強化などにも取り組んでいる。

 一方NGN自体は、ITU-Tを中心に標準化中であることは周知の通りだ。アブデルハリム氏は「確かにそうではあろうが、ITU-TはIEEEやIETFで定義したテクノロジを使っているはず。特にIETFではいま、上位レベルに取り組んでいる。つまりネットワークコンポーネント間でのインターフェイスのとり方や、サービス提供などについて議論している。最近ITU-TではEthernetの規格にも取り組んでいるようであるが、これもMPLSによるサービス提供の方法であり、IEEEやメトロイーサネットフォーラムで作った規格がベースのはず」という。


NGN、日米の違い

 アブデルハリム氏は、NGNについて日米でのキャリア市場の違いを指摘する。

 「日本ではこの12月からNTTがNGNのフィールドトライアルを行うといわれているが、同社は慎重な取り組みを行う企業。なんといってもアプローチの仕方がいい。まずは実験をしテクノロジの安定性を見極めた上でスタッフのトレーニングも行い、実際に使えるまで2~3年を見込んでいるようだ」。バックボーンを握るNTTが、今後も市場の方向性を決めていくことを予測する。

 だが一方、米国ではNGNは複数の大きなキャリアが“個別の島”状態で競争しあっているという。各戦略やアプローチが異なり、アプリケーションも異なる。米国政府も競争によって通信市場に刺激を与えることが重要という見解に立っているともいう。「Time WarnerやFoxのような大手ケーブル会社もあり、VerizonやATTなどの通信事業者もいて、大変な競合状態だ。CATV事業者は、まずはIPやMPLSなどでTVやHDTVのトラフィックを流したい。しかし電話事業者はまずVoIPに取り組みたい。自社で携帯電話会社をもっていればワイヤレスバックボーンにも取り組みたい。だから各社が各様のサービス提供を行うことになろう」。本格化するのは2010年以降になるかもしれない、という。

 アブデルハリム氏は「いまサービスプロバイダには、NGNのような方向性には最終的に合意した方がいいといっている。その方がベンダとしてはより最適化したソリューションを提供できるし、テクノロジも進展していく。当然コスト低減も可能。このことは、サービスプロバイダにとってもいいはずだ」と、業界発展をにらんだアピールをしていた。



URL
  米Foundry Networks
  http://www.foundrynet.com/
  ファウンドリーネットワークス株式会社
  http://www.foundrynetworks.co.jp/


( 真実井 宣崇 )
2006/11/08 08:49

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.