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NEC、最終赤字の2006年度中間期決算を発表

国内パーソナルソリューション事業は黒字に

取締役執行役員専務の的井保夫氏
 日本電気株式会社(NEC)は11月21日、2006年度中間期連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比2.5%減の2兆2276億円、営業利益は22.5%増の61億円、税引前損益は前年のマイナス193億円の赤字から58億円改善したものの、マイナス135億円の赤字。当期純損失は前年のマイナス15億円から悪化し、マイナス74億円の赤字となった。

 全体的には、モバイルターミナル事業の低迷を、他事業でカバーする決算内容となった。

 「全体の進ちょくとしては想定どおりだが、米国会計基準による上期試算値に比べると、営業利益では7月時点の予想を10%程度下回る」(的井保夫取締役執行役員専務)とした。

 これまでの決算発表では、米国会計基準を採用していたが、米国証券取引委員会(SEC)向けの年次報告書の提出が遅れていることを背景に、中間実績の適時開示を実現するために、今回の決算から日本基準に変更。それに伴い、瑕疵(かし)補修費用計上分として約100億円の減少や、量産化試作費の計上方法の違いなどの差が出ている。


2006年度上期実績
2006年度セグメント別上期実績

IT/NWソリューション事業の実績

NGN関連ビジネスの推移
 セグメント別では、IT/NWソリューションは、売上高が前年同期比2.4%増の1兆2704億円、営業利益は90億円増加の578億円。

 IT/NWソリューションのうち、ITサービス/SI分野の売上高は前年同期比0.3%減の3457億円。営業利益は前年並みの約100億円弱。

 外注費の削減やプロジェクト管理の徹底などによりほぼ予想どおりの利益を確保した。下期は、金融、流通における競争力の強化に向けた投資の拡大や、通信キャリア向けプラットフォームの需要増大などの市況の回復を背景に、堅調な売上高成長を見込むほか、SI生産革新による成果により増益を見込んでいるという。

 通期では、500億円強の営業利益を見込み、営業利益率は7%程度を見込んでいる。

 ITプラットフォーム分野の売上高は、前年に大規模なサーバー案件があった反動もあり、前年同期比0.3%増の3121億円、営業利益は約40億円となった。

 上期は、プラットフォームコンセプトのREAL IT PLATFORMの発表や、国内サーバー市場においてシェアナンバーワンを堅持する一方、下期はSIGMABLADE、SigmaSystemCenter、シンクライアントなどのコンセプトに基づいた特色ある製品展開によって売り上げ拡大を目指す。

 ネットワークシステム分野は、上期にMNP開始を前に、カバーエリアの拡大やサービスの高度化といった、モバイルキャリアの設備投資が顕著となり、キャリア向けネットワーク事業が好調。ロシアやアジアを中心にパソリンクの需要が伸張するなど、売上高は前年同期比4.6%増の4890億円、営業利益が約400億円。下期は、キャリア向けNGNの商談獲得に力を注ぐほか、企業向けソリューションの強化を目指す。

 社会インフラ分野は、地上デジタル放送、準基幹設備などへの投資が増加したことで順調に推移。売上高が6.7%増の1236億円となった。

 IT/NWソリューション事業では、NGN関連ビジネスが当初の予定よりも前倒しで進ちょくしているのが特筆できる。NTTドコモからのクレジットサービスを支える基盤システムの構築、KDDI向けのウルトラ3Gの中核となるMMDの受注、NTTのフィールドトライアル用中核製品群の受注などの実績があった。

 「NGN関連では上期400億円の受注があったが、通期では1000億円の受注を目指したい。売り上げとしては、このうち7割程度を計上できる」(的井取締役執行役員専務)とした。


モバイル/パーソナルソリューション事業の実績
 一方、モバイル/パーソナルソリューション事業は売上高が前年同期比13.9%減の4992億円、営業損益は241億円悪化のマイナス410億円の赤字となった。

 モバイルターミナル分野が、売上高が前年同期比25.4%減の1633億円。上期の携帯電話の出荷台数が、前年同期比4割減となる290万台にとどまったことが大きく響いた。

 「国内では、想定以上に市況が厳しく、出荷台数は前年同期に比べて3割減。海外では、欧州では新機種の投入を中止し、さらに中国では絞り込みを行い、出荷台数は約4割縮小した」(NECの的井保夫取締役執行役員専務)という。

 下期は国内向けの製品強化による出荷増を目指すが、海外は、中国市場に対して当面製品投入を見合わせるために出荷台数はわずかになる。

 「海外は、3Gの先行きが不透明であり、3.5世代以降に絞り込んだ形で構造改革を進めている。欧州は、2.5Gの新機種投入を終了するとともに、現地事業体制の縮小を完了した。中国に関しても、年度内に事業構造改革を完了する。まずは国内での商品力強化でシェア回復を狙い、2007年度以降、松下電器との連携によって、強い商品力を持った端末を効率的に開発していく体制をつくる」とした。

 PCおよびビッグローブ事業で構成されるパーソナルソリューション分野は、売上高が7.0%減の3359億円。国内事業では黒字を確保。欧州で個人向けPC事業を展開しているPackard Bellを売却することで、国内事業を中心とする体制へと再編した。

 下期は、Windows Vistaの効果により、第4四半期の出荷拡大を見込んでいるほか、部材コストの削減、品質向上によるサポート費用の減少などがプラス要素に働くとしている。

 なお、上期の国内PC出荷台数は、前年同期比5.7%減の133万台となった。PC事業は、上期はブレイクイーブンとしているが、若干の赤字になった模様だ。


エレクトロンデバイス事業の実績
 エレクトロンデバイス事業は、売上高が前年同期比7.2%増の4270億円、営業損益では91億円改善のマイナス25億円の赤字となった。

 半導体では、ディスクリート、多目的マイコン、小型表示ドライバなどが売り上げ増となった。下期は、ゲーム向けSoCが本格出荷になることや、モバイル向けのデジタルベースバンドの回復や、自動車向けのLSIの向上などによって、売上高は9.6%増の3430億円。だが、所要の見直しやリスク再評価により、業績予想を下方修正する。

 電子部品に関しては、キャパシタに対する需要拡大、電子部品そのものの市場拡大を背景に好調を継続。売上高は1.8%減の840億円。エレクトロンデバイス事業全体で下期は黒字転換を目指す。


2006年度通期業績予想
 同社では、上期の連結業績予想は、売上高は前年比5.1%減の4兆6800億円、営業利益は前年比272億円増加の1000億円、経常利益は同227億円増の400億円、連結当期純利益は231億円増の180億円と増収増益を目指す。

 欧州でのPackard Bell事業の売却によって、売上高で約1000億円減少の影響があるとしている。

 セグメント別には、IT/NWソリューションの売上高が前年比1%増の2兆8000億円、営業利益は68億円増の1840億円。モバイル/パーソナルソリューション事業の売上高は24%減の9450億円、営業損益は23億円改善のマイナス540億円の赤字。エレクトロンデバイス事業は、売上高は6%増の8650億円、営業利益は309億円改善によりマイナスからの脱却を見込んでいる。



URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  平成18年度(第169期)中間期 決算概要
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0611/2101.html

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( 大河原 克行 )
2006/11/21 19:06

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