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「情報インフラベンダを目指す」-EMCジャパンが買収戦略を説明


執行役員 マーケティング兼パートナーアライアンス統括本部長の古谷幹則氏

EMCの買収した企業は3年で20社以上にのぼる
 EMCジャパン株式会社は12月13日、記者向けのセミナーを開催。執行役員 マーケティング兼パートナーアライアンス統括本部長の古谷幹則氏と、執行役員 EMCソフトウェアグループ本部長の安藤秀樹氏が、米EMCが行ってきた企業買収の方向性について、説明を行った。

 EMCでは、現職のトゥッチCEO就任前だった5年前には、ハードウェアがワールドワイドの売り上げの75%を占めていたという。しかし、同CEO就任後は明確にソフト・サービス系の事業に比重をシフト。今ではハードウェアの占める割合は46%にまで低下し、ソフト・サービスの割合が飛躍的に上昇した。古谷氏はこれを、「ストレージというハードウェア中心のビジネスモデルからの変革をCEOが進めているということ」と説明。さらに、「その段階で足りない部分の買収に取り組んでいる」とする。買収には実に70億ドル弱の費用を費やしているという。

 このように、ソフト・サービスという、これまでと違う事業分野に舵を切ったEMCではあるが、核として考えているのは、従来から同社が主張してきた「ILM(情報ライフサイクル管理)」概念であるのには変わっていない。安藤氏はこれについて、「階層型ストレージを利用するILMの考え方は業界に浸透してきているものの、道具立てで足りない部分があり、既存ソリューションだけではうまくいかなかった。その結果が(2003年の)米Documentumの買収だった」と当時を振り返った。

 Documentumのソリューションの特徴は、シングルリポジトリによるコンテンツの管理。企業内におけるデータの大半を占める、メール、Office文書、画像といった非構造化データを一元的に扱えるDocumentumのECM(エンタープライズコンテンツ管理)ソリューションを実現可能な点が評価され、国内でも非常に関心が高い分野となっている。EMCではこれを核とすることにより、情報データの誕生から廃棄までのライフサイクルを統一して扱えるソリューションを提供可能になったわけだ。安藤氏は、「ビジネスプロセスやバリューに注目し、さらにインテリジェントな情報管理を提供できるようになった。単なるストレージソリューション以上のメリットが提供できる」と述べる。

 EMCではさらに、ECMソリューションにおける付加価値を増大させるべく、紙ベースのデータを電子化する技術を持つCaptiva、レポート管理技術を持つAcartusなどの買収でさらにDocumentumを補完。セキュリティの面でも、DRM技術を持つauthentica、暗号化などセキュリティ技術を広くカバーするRSAなどを取り込むことにより、着実にソリューションを強化している。


執行役員 EMCソフトウェアグループ本部長の安藤秀樹氏
 このように、ソフト・サービスの製品が拡充される中で、EMCは必ずしも自社ストレージの展開にこだわっているわけではないという。Documentumで利用されるのストレージの半数以上は他ベンダの製品であるし、マルチベンダに対応したレプリケーションソフト「RecoverPoint」を手がけるKashyaを買収してEMCブランドで製品を展開。自社ストレージに特化したレプリケーションソフトの事業をシュリンクするなど、オープン化の方向にも足を踏み出している。

 ここからは、オープンな流れにも対応できるようにすることで、総合インフラベンダとして、どのようなニーズでも拾い上げられるようにしようという同社の意図は見て取れる。ただし、理想形は、自社ストレージと自社ソフトの組み合わせであるのはもちろんだろう。古谷氏は、ユーザーのインフラ選択の余地を残しつつ、自社製品間の連携を密にして、トータルソリューションとしての訴求を進めていきたい考えも示す。

 同氏は「長期ビジョンに基づいてDocumentumのソリューションを展開するが、非構造化データのデータベースが伸びれば、ストレージもたくさん使われるようになるし、(アーカイブストレージである)Centeraのような製品もますます伸びるだろう」と相乗効果に期待していた。



URL
  EMCジャパン株式会社
  http://japan.emc.com/


( 石井 一志 )
2006/12/13 19:20

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