|
事業計画
|
|
セグメント別売上高
|
キヤノンマーケティングジャパンは1月26日、2009年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。
2009年度には、売上高1兆円、営業利益500億円、経常利益500億円、純利益290億円を目指すもので、同社が長期経営構想で掲げた2010年の売上高1兆1000億円、経常利益率5.2%に向けた布石となる。
中期経営計画の重点戦略として掲げたのは、「ITソリューションを中核事業に育成」、「利益ある成長と次世代事業の確立」、「キヤノン製品事業NO.1の実現」、「グループ連結経営の強化」、「経営品質の向上」の5点。
なかでも、ITソリューション事業は、3カ年にわたり高い成長が計画されている。具体的には、2006年度実績で1418億円の事業規模を、2007年度には14%増の1620億円、2008年度には10%増の1780億円、2009年度には7%増の1900億円とし、「IT専門調査会社の調べでは、業界全体の成長率が3~4%程度とされているのに対して、キヤノンMJは、3カ年の年平均成長率で2けたの成長を目指す」(村瀬治男社長)と、業界を上回る速度で、ITソリューション事業を成長させていく計画を示した。
「ITソリューション事業においては、キヤノンブランドのハードウェアの充実とともに、グループ会社の商材や人材を生かせることに加え、大手企業から中小企業までを顧客対象とする強みもある。グループ会社の相互連携によって、キヤノンMJならではの特徴あるソリューション提供を行っていく。IT市場におけるキヤノンブランドの定着を図りたい」としている。
また、ビジネスソリューション事業を統括する土門敬二専務取締役も、「2009年度時点では、前年比7%増、1900億円以上という計画以上の数字をやらなくてはならないと考えている」と事業拡大に意欲を見せる。
|
ITソリューション事業のポートフォリオ
|
ITソリューション事業の具体的な方針には、「競争優位な差別化ソリューション創出と領域拡大」、「ITソリューション商談の支援体制の強化」、「M&Aおよびアライアンス強化による事業拡大」を掲げた。
現在、同社のITソリューション事業は、キヤノン製ハードウェアを核にし、ドキュメントソリューションおよび、製造/金融/医療向けソリューションを提供する「SI(システムインテグレーション)」、ネットワークソリューションやサーバー・データベースソリューション、セキュリティソリューションなどで構成される「NI(ネットワーク・インテグレーション)」、アウトソーシングや保守、ASPなどで展開する「ITアウトソーシング&プロフェッショナルサポート」、アプリケーション開発やOS、プラットフォームなどの「組み込み系」の4つの事業領域に分類できる。
これらの分野に対しては、キヤノンMJのほか、NIを担当するキヤノンネットワークコミュニケーションズ、SIおよびNIを担当するキヤノンシステムソリュシーョンズ(CSOL)およびアステラス製薬から買収し、CSOL傘下とした医療ソリューションに強いFMS、ビジネス機器の販売、サービス、小規模ソリューションを展開するキヤノンシステムアンドサポート、SIおよび組み込み系を担当するキヤノンソフトウェアといったグループ各社があり、これらの連携も強化していく考えだ。
また、「M&Aにも前向きに取り組んでいく。M&A、アライアンスの強化によって、現有事業とのシナジー効果を最大限に発揮できるようにしたい」(村瀬社長)ともしている。
|
ドキュメントビジネスの事業方針
|
一方、利益ある成長と次世代事業の確立としては、「ドキュメントビジネスの競争力強化と拡大」を掲げ、これまでキヤノンが手薄だったオフィスハイエンド市場の開拓に挑戦。昨年7月に投入した高速カラーMFP「Color imageRUNNER」シリーズのiRC5180/C4580/C3880などの拡販のほか、次世代MFPの投入によって事業拡大を目指す方針を示した。
imageRUNNERにおいては、キヤノンの特徴を生かせるオープンプラットフォーム「MEAP」関連ビジネスの拡大も重要なポイントとなりそうだ。
また、昨年8月の新ブランド「imagePRESS」を立ち上げ、テジタル商業印刷事業への参入を図った同社では、今後は、この収益化が課題といえる。2009年には、国内におけるデジタル商業印刷の市場規模が3000億円に達し、そのうち、imagePRESSのターゲットとなる800億円の市場に対して、強力なアプローチを図っていく。
「印刷業、プリントショップ、企業内印刷室など、オンデマンド用途で使用している環境に対して拡販を行う。800億円の市場に対して、約3割のシェアを狙う」(土門専務取締役)としている。
昨年11月に、デジタル商業印刷製品のデモ、教育、検証、コールセンター機能を集約する形で、キヤノンSタワーの6階に新設したプロダクションシステムセンターは、印刷会社、デザイン会社、企業内印刷室などのユーザーが一日に3~4件来場。平均2時間の滞在時間となっており、「ほぼフル稼働といえる状態」(村瀬社長)という。
そのほか、大判インクジェットプリンタの売上拡大や、保守サービス事業の高収益化も狙う。
「デジタル時代に対応した新たな保守サービスの形が必要である。リモート管理システムのネットアイでは、2006年度末時点で、全体の約20%を占めた。多いか、少ないかは解釈が分かれるところだが、すでに4億円のコスト低減効果があったと判断している。この比率をさらに拡大したい」(村瀬社長)としている。
一方、デジタルフォトソリューションの展開では、ホームプリントビジネスの拡大にとどまらず、フォトスタジオなどを交えたビジネスへと拡大していく姿勢を示した。
「カメラ、プリンタといった単体製品だけの事業ではなく、プロジェクタや大判プリンタなどとの組み合わせ提案も推進していく」(村瀬社長)という。
コンスーマ機器事業部門では、2007年度は前年並みの2710億円の売上高を見込むが、2009年度には2850億円の売上高を目指す。
また、産業機器事業部門は、半導体/液晶基板露光装置のシェア維持とともに、半導体関連輸入機器の拡販を目指す。同部門で扱っている医療ソリューションや放送局向け製品の販売増も鍵になるという。同事業部門では、2006年度の1142億円の売上高を、2009年度には1350億円に拡大する計画だ。
今回の中期経営計画では、キヤノン製品事業No.1を掲げたが、「ビジネスソリューション分野における顧客満足度では遅れをとっている反省がある。全国180数拠点のサポート拠点とサービス力を持っていながら、それが発揮できていない。拠点に魂をどう入れるか、ここの見直しを図る。また、コンスーマ機器に関しても、プリンタ、カメラなどの製品を統合した形でサポートする必要がある」(村瀬社長)としており、「シェアNo.1だけでなく、品質、サービス/サポートといった点でもNo.1とし、最終的には顧客満足度No.1が目標」とした。
シェアに関しては、オフィスMFP、液晶基板露光装置で、早期にNo.1を獲得する姿勢を示した。
そのほか、構築から5年目を迎えたキヤノンMJグループ統合情報システム「C21」が、2006年度に、ITサービス会社まで導入が完了したことで、2007年度以降は第3フェーズに入るとし、原価管理システム、プロジェクト管理システムをITサービス系各社に広げていく計画を示した。
4期連続での増収増益、2期連続での過去最高業績の更新という右肩上がりの状況にあるキヤノンMJ。中期経営計画もそれをトレースしたものになっている。成長戦略は、しばらく強気のまま推移しそうだ。
■ URL
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
http://canon.jp/
■ 関連記事
・ キヤノンMJ、2006年度決算で4期連続の増収増益(2007/01/26)
( 大河原 克行 )
2007/01/29 11:21
|