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富士通、第3四半期連結決算を発表

サービスが業績を牽引するも、PCは年度計画を下方修正

小倉正道取締役専務
 富士通株式会社は1月31日、2006年度第3四半期連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比6.8%増の1兆1976億円、営業利益は前年同期の54億円の赤字から71億円の黒字に転換。経常利益は前年同期の8億円から42億円に大幅に増加。当期純利益は前年同期のマイナス22億円の赤字から11億円の黒字となった。

 「企業におけるIT投資意欲は、依然として好調であり、ITサービス分野が伸びている。アウトソーシングのほか、SI事業が金融分野および製造、流通分野を中心に伸長した。また、医療分野においてもIT投資意欲が高まっている。だが、サーバーやストレージが低価格帯へとシフト、携帯電話基地局の投資の一服感や、Windows Vista発売前のPCの買い控えなどの影響があったほか、LSI事業が伸び悩み、売上高では10月公表時の計画を523億円下回った。また、営業利益も、減収の影響に加えて、HDDなどでの価格競争激化で、公表値に比べて78億円悪化している」(富士通・小倉正道取締役専務)という。

 経常利益の好転は、連結子会社であるニフティの上場に伴う同社株式の一部売却および第三者割当増資などに伴い、投資有価証券売却益76億円および持分変動利益21億円を特別利益に計上したことが影響。一方で、スパンションの株式一部売却などにより、投資有価証券売却損22億円を特別損失として計上している。なお、スパンションは、第3四半期から持分法の適用から除外された。


 セグメント別では、テクノロジーソリューションは、売上高が7.1%増の7168億円、そのうち国内売上高が前年同期比0.1%増の4436億円、海外売上高が20.8%増の2731億円。営業利益は、85億円増加の145億円。

 国内は、携帯電話基地局の需要が一巡しはじめたことで減収となったが、サービスビジネスが増収。一方、海外では、英国でのサービス事業の拡大、北米地区での買収効果などがあったほか、光伝送システムやUNIXサーバーが伸長したことがプラス要素となり、大幅な伸びを見せた。

 サービスビジネスの増収効果や、ものづくりの強化によるコストダウン効果は、北米地区における光伝送システムの価格競争の激化や、サーバー関連での戦略的な先行投資負担の継続によるマイナスを吸収する格好となった。

 なお、テクノロジーソリューションセグメントのうち、システムプラットフォームサービスは、売上高が1.9%増の1524億円、営業利益はマイナス91億円の赤字。さらに、そのうち、システムプロダクトが1.5%減の707億円、ネットワークプロダクトが5.0%増の817億円となっている。

 サービスでは、売上高が8.6%増の5643億円、営業利益が69億円増加の237億円。そのうち、ソリューション/SIの売上高が8.1%増の2432億円、インフラサービスが10.8%増の2823億円となった。

 なお、国内のSI事業では商談提案活動が活発化したことで戦略費用が増加していることを明らかにしたほか、2007年1月には、英国子会社の富士通サービスが、運用アウトソーシングサービスやコンサルティングなどの事業を展開する独ITサービス企業のTDSを買収。今後、欧州地区でのサービス事業を強化していく姿勢を示した。また、「都内のデータセンターも年度内には増床する予定であり、この分野では引き続き2けたの成長を見込みたい」としている。


 ユビキタスプロダクトソリューションは、売上高が前年同期比7.3%増の2734億円。営業利益は、前年同期のマイナス48億円の赤字から11億円の黒字に転換した。

 国内は、個人向けPCがWindows Vista発売前の買い控えの影響により伸び悩む一方、携帯電話が比較的堅調に推移。国内売上高全体では1.5%増の1616億円となった。海外は、HDDやPCの価格競争が激化したものの、HDDでは、ノートPC向けおよびサーバー向けが、いずれも過去最高の出荷台数を記録。16.9%増の1117億円となった。

 PC/携帯電話は売上高が1.0%減の1766億円、HDDは25.1%増の913億円となった。

 「第3四半期の国内PC市場は、Vista発売前の個人需要の低迷とともに、価格競争が厳しく、これに追随しない方針をとった。そのため、PCの出荷は予想以上に落ち込んだといえる。だが、第4四半期では、第3四半期の1.5倍程度の売り上げを想定している。これはVistaの買い控えが顕在化するという観点だけでなく、前年と同じぐらいの出荷が見込めるという前提でも見込める数字。2007年は、新たなOSに対応したPCが、個人需要喚起を誘因し、プラスに転じることになるだろう」と予測した。

 同社では、2006年度のPCの出荷計画を、当初見通しの全世界900万台から、880万台に下方修正した。また、携帯電話の出荷台数は40万台増の390万台に上方修正した。


 デバイスソリューションの売上高は、前年同期比2.7%増の1876億円、営業利益は前年同期のマイナス80億円の赤字から4億円の黒字となった。LSIの売上高が4.0%減の1123億円、電子部品その他が14.7%増の753億円となった。

 三重工場300mmラインの本格稼動や、LSIを除く電子部品の伸長といった増収要因があったものの、デジタル家電分野での競争激化などによる基盤ロジック製品の伸び悩みや、先端ロジック製品の所要不安定に加え、海外携帯電話向けシステムメモリの減収などが売上の伸び率鈍化に影響した。

 なお、建設中の65nmテクノロジーに対応した三重工場300mm第2棟は、予定通りに2007年4月より稼動するという。


 また、同社では、2006年度の通期見通しを一部下方修正した。

 10月公表値に対して、売上高を1000億円減の5兆1000億円とし、営業利益、経常利益、当期純利益は据え置いた。

 「Windows Vista発売前の買い控えが影響しているユビキタスプロダクトソリューションにおいて、500億円の売上げ減、第3四半期に急速に市況が悪化したLSIを含むデバイスソリューションで500億円減を盛り込んだ」という。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  2006年度第3四半期及び9ヶ月累計連結決算概要
  http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2006q3/


( 大河原 克行 )
2007/02/01 00:00

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