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レノボ、ユーザー向けフォーラムでアメリオCEOが講演

「ThinkPadはこれからもThinkPadであり続ける」と内藤副社長

レノボ・ジャパンの天野総太郎社長
 レノボ・ジャパン株式会社は2月6日、恵比寿ガーデンホールにおいて、ユーザーを対象にした「レノボ・ジャパン イノベーション・フォーラム2007」を開催した。

 副題に、レノボが掲げるキャッチフレーズの「New World. New Thinking.」とともに、「次世代グローバル企業の成長戦略とは~求められる人材像と企業像~」を掲げ、レノボの今後の成長戦略のほか、次世代を勝ち抜く企業像や人材の教育、そこにおけるITの役割についてのパネルディスカッションなどが行われた。

 冒頭、レノボ・ジャパンの天野総太郎社長があいさつ。「レノボの企業ブランドは、まだまだ低いと感じている。これを払しょくする活動を行っていくことが必要だ。レノボは、最高のエンジニアが最高のPCを提供するBest Engineered PCを提供することで、ユーザーのイノベーションに貢献していきたい」と語った。


レノボ・グループ社長兼CEOのウィリアム・アメリオ氏

New World Companyの条件

今後5年間でPCの出荷台数は61%成長し、なかでも、ロシア、中国、ブラジル、インドの成長率が高いという
 続いて、レノボ・グループ社長兼CEOのウィリアム・アメリオ氏が登場。「レノボの目指すNew World Companyとは」をテーマに基調講演を行い、同社の方針を示した。

 アメリオ氏は、PCの普及やインターネットの普及が急速に進展していることに触れながら、「1995年以降、インターネットの普及によって、世界がフラット化した。企業活動においても、それに対応した体制が求められている」と位置づけ、「フラット化し、グローバル化が求められる新たな世界において、最適化した企業がレノボである」とした。

 レノボは、米ノースカロライナ州のラーレイ、中国・北京、フランス・パリ、シンガポール、香港といった全世界に拠点を置きながらも、すべての拠点をテクノロジーによって結びつきを強めることで、フラット化した企業体制となっていることを強調。また、それぞれの地域やユーザー層に適した形でリレーションシップモデルとトランザクションモデルによる「デュアルビジネスモデル」戦略をとっていることに触れ、「リレーションシップモデルでは、安定性を求め、頻繁に購入し、取引先とは1対1の関係を求めるといった大企業を対象にしたもの。一方、トランザクションモデルは、中小企業やコンシューマユーザーのように、購買は頻繁ではないが、最新のテクノロジーを求めているユーザーを対象としたモデルとした。グローバル化のなかでのデュアルビジネスモデルは、当社のテンプレートになるもの」とした。

 さらに、イノベーション・トライアングルとして、ラーレイ、北京、そして日本の大和という3つの研究開発拠点が、ひとつの研究開発拠点のようにして稼働している成果をあげ、「ラーレイと大和に時差があることは、むしろプラスに働いている。ラーレイのエンジニアが一日の作業で終わらなかった課題を、大和のエンジニアに引きつげば、翌朝、ラーレイのエンジニアが出社した時には、メールボックスの中に解決策か、新たな優れたアイデアが入っていることになる」などとした。

 また、それぞれの拠点の役割についても言及。「大和はThinkPadのデザイン、信頼性、品質向上のための中枢神経ともいえ、同時にラーレイのラボと協力して、最新のソフトによるイノベーションをプラットフォームに埋め込んでいくことになる。北京は、Lenovo 3000の開発に携わり、品質管理の面で大和が協力して作り上げる。Lenovo 3000は、グローバルラボ体制による成功例であり、もし1カ所の研究開発拠点で開発をすすめていたら、このスピードでは完了しなかっただろう」などとした。

 最後にアメリオ氏は、「どの企業もNew World Companyになれる」とし、「テクノロジーを活用することで、グローバル化が可能になる。レノボはそれを実践してきた企業である」とした。


全世界の各拠点を結んだレノボ イノベーショントライアングルと呼ばれる研究開発拠点 レノボの2つのビジネスモデル

レノボ・ジャパンの研究・開発担当取締役副社長の内藤在正氏

スペースシャトルで使われたThinkPadの様子
 一方、レノボ・ジャパンの研究・開発担当である内藤在正取締役副社長は、「日本発、宇宙に飛んだ弁当箱」と題して、ThinkPadの製品化に関する基本的な姿勢や、Lenovo 3000シリーズにおけるコンセプトを示した。

 内藤副社長は、これまでのThinkPadの進化に触れながら、「第1世代では、われわれは新たなものを開発していくパイオニアであるという認識のものに開発を進めてきた。教科書や前例がないなかで、物事をどう定義するかという点では大変苦労した。だが、そこで培った、最小のサイズのなかに、最大のスクリーンを埋め込み、使いやすいキーボードやトラックポイントの採用、交換可能なHDDといった考え方は、現在のThinkPadにも生きている。こうした点が評価され、NASAがスペースシャトルに持ち込むPCとして、ThinkPadを採用した。いま、NASAで使用しているものは、一部を除いて、みなさんが使用しているものと同じものである」とした。

 だが、「第1世代では、CPUの冷却性やHDDの信頼性の課題によって、望んでいるテクノロジーの進化が得られないという問題も発生した。第2世代ではこうした問題を解決すべき冷却性能や耐久性の向上といった改良を図り、ワイヤレスネットワーク環境にも積極的に対応するなど通信性能の劇的な向上を実現した。また、第3世代では、CPUやHDDのテクノロジーの進化が息を吹き返した。圧倒的なプラットフォームパフォーマンスが発揮できるようになった。eメールやインターネット、プレゼンテーションなどにしか利用していないPCユーザーは、CPUの進化はもう必要ないといっているが、そうではないということを証明する、新たなThinkPadが待っている」として、第3世代の進化の方向性を示した。


ThinkPad第1世代 ThinkPad第2世代 ThinkPad第3世代

Lenovo 3000の基本的な考え方

研究開発体制は変化がないという
 内藤副社長は、その具体的な取り組みとして、「企業では、より安全性の高い環境を望んでいる。そのセキュリティを実現するにはパワーが必要である。また、Windows Vistaの環境になれば、より使いやすく、わかりやすく、安全な環境が実現されるが、この点でも、圧倒的なプラットフォームのパフォーマンスが要求されることになる。冷却性能や高速度システムバスといった高性能を支える基幹設計の再設計も行った。大容量ディスクを保護する新世代の機構設計も必要となる。こうしたことに第3世代のThinkPadでは取り組んでいる」とした。

 また、将来にわたるThinkPadの開発の方向性について、次のように示した。

 「研究開発体制は、IBM時代とは変わらず、さらに進化を遂げている。そして、ThinkPadは、テクノロジー、イノベーションを通じて、プロフェッショナルの道具として求められる機能のすべてを提供する。企業と個人の生産性、競争力を向上させるためのベストツールとして進化を遂げていく」

 そして、講演の最後には、「ThinkPadはこれからもThinkPadであり続ける。常に新しい技術で進化を遂げ、お客様の成功のためのツールというブランドコンセプトは変わらない。また、これからも大和事業所が中心となって開発を続けていく」と改めて宣言した。


 なお、その後、「次世代グローバル企業に求められる人材像と企業像~ITがもたらす人材育成の新しい可能性~」をテーマにパネルディスカッションが行われ、日本経済新聞編集委員兼論説委員の関口和一氏をモデレーターに、東京大学助教授・中原淳氏、マイクロソフト執行役公共インダストリー統括本部本部長の大井川和彦氏、レノボ・グループ社長兼CEOのウィリアム・アメリオ氏が登壇した。



URL
  レノボ・ジャパン株式会社
  http://www.lenovo.com/jp/ja/
  レノボ・ジャパン イノベーション・フォーラム2007
  http://www-06.ibm.com/jp/pc/seminar/2007/01/


( 大河原 克行 )
2007/02/06 18:39

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