米Extreme Networks(以下、Extereme)のビジョンは「Insight&Control(可視化機能と制御機能)」だ─。このビジョンのもと、いかにオープンなコンセプトで、ユーザーソリューションを創り出そうとしているのかアピールするため、6カ月前に就任したばかりの新CEO、マーク・カネパ氏が来日した。同氏は「日本市場を最重視する立場からも足しげく来日するつもり」と、さらなる意欲的なところをみせている。ここではカネパ氏のExtreme発展にかける決意を聞いた。
■ CEOがExtremeを選んだ理由
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マーク・カネパCEO
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─カネパCEOは、実に、30年にわたりコンピュータ業界で活躍されてきました。この間のネットワークの変遷を、どうご覧になっていましたか。
カネパ氏
1976年当時、私はカーネギメロン大学院で修士号を目指していましたが、このころ、ピッツバーグとカルテックとの間でARPANETによるファイル交換が行われていました。当時のルータはコンピュータとほとんど同じでしたが、Ethernetも伝送速度1Mbpsの時代で、当時はそれで十分でした。その後1990年代半ばには、高価な大型ルータはもはや必要ないことを実証するようなアイディアが出て、レイヤ3における情報のやりとりも、さらに安価なスイッチで可能になりました。こんな時に当社は誕生したのです。電話やTVなどのルーティングも、従来のような高コストのATM(Asynchronous Transfer Mode)やSONET(Synchronous Optical Network)ではなくEthernetで可能になってきました。
─そうしますと、ネットワークの発展そのものはかなり健全であったといえそうですね。
カネパ氏
そうですね。ネットワークのみならずコンピュータ業界でも変化は起こり、パワフルな技術が生まれています。まったく別の例ですが、70年代半ばのIC業界では、高度なICを作れるのは、NMOSかバイポーラかといった議論がありました。しかしムーアの法則により、少しずつスピードや集積度が向上してきて、CMOSがIC技術の中で君臨することになりました。
Ethernetもこれによく似ています。当初はATMやSONETがよりパワフルだったものの、Ethernetが、シンプルかつ低価格ということから、にわかに勢いづいてきました。今後5~10年では、こうした流れのもとで統合が起こってくるでしょう。たとえばデータセンターの場合は、FC(Fibre Channel)やInfiniBandがEthernet側に収束していくといった具合です。テレコムの世界も、従来の高度なあるいは高価な技術がEthernetの世界に移行していくのではないでしょうか。
─CEOご自身が、数ある企業の中からExtremeを選択された理由はなんでしょうか?
カネパ氏
自分が30年のコンピュータ業界で取り組んできたのはサーバーやワークステーション、ストレージなどで、いずれもネットワークに接続されるものばかりでした。これらは、自らがアプリケーションをきちっと認識できていました。その結果、アプリケーションサイドでも、プロビジョニングができたんですね。
しかしネットワークでは、こうしたことは起こっていません。たとえば特定ベンダがネットワークやOSをプロプラエタリにしています。従ってアプリケーションは、ネットワークとインタラクションが取れません。これは間違った戦略だと思います。アプリケーションとは、すべての要素にアクセス可能であるべきものなのです。Extremeはこの点をよく理解し、3年前にOSをExtreme XOSへ移行し始め、UNIXのようにインターフェイスをオープン化しました。これがネットワークの正しい方向付けです。私は、この点に魅力をおぼえたのです。
■ オープンなOSが実現するユーザーオリエンテッドな世界とは
─カネパCEOは就任以来、組織を改革し、CEOとエンジニアの距離感を縮めたり、エンジニアとマーケティングの融合をはかることなどに取り組まれています。今後さらに、どういったところを展開されるのでしょうか?
カネパ氏
当社の技術そのものはエキサイティングだと思いますが、外部に向けてこれをどうエキサイティングにみせるのか、ということは決して容易ではありません。今はその意味で、多くの顧客、特にCIOの方たちとコミュニケーションを図っています。CIOの立場ではまず予算が気にかかるでしょうし、サービス部門がネットワークをきちんとサポートできていないのではないか、という不安もあるでしょう。またネットワークの可用性や信頼性などをうまく運用できているのかどうかも心配されています。CIOや彼らのスタッフたちと当社がうまくコミュニケーションしていくことで、こうした心配事が解消されてくるものと確信しています。
マーケティング戦略には、パートナーのトレーニングや彼らとのコミュニケーションなどがありますが、一番大きな改革とは、技術的なことよりもむしろ、顧客が抱えるビジネス上の問題をどう解決するかです。こうしたメッセージを、さらにうまく引き出し伝えていくことに投資をしていきたいですね。そうすれば、IT担当のエグゼクティブはそれに共感をして、当社と接触を持っていただけるでしょうし、少なくとも当社のWebサイトはご覧になるでしょう。これで、さまざまなことを説明したり、アピールしたりすることが可能になります。
私自身、年に数回は来日して、パートナーやアナリストあるいはプレスの方たちにもお会いしたいと考えています。確かに、日本は保守的な面やブランドを好む面があるのかもしれません。ですが、そこで少しリスクを承知してでも当社のソリューションを導入していただきたい。そうすれば、ブランド志向のソリューションでは決して達成できなかったビジネスチャンスをつかめることをご理解いただけると思います。ブランドを売りにする会社とは明らかに違うことをアピールしていきます。
─Extreme XOSはオープン性が特徴の1つですが、デファクトスタンダード化もにらんでいるのでしょうか?
カネパ氏
そうしたいのは確かですが、OSの標準化よりも、XML APIの標準化を推進した方がいいでしょう。電話とスイッチ間の通信プロトコルであるLLDP(Link Layer Discovery Protocol)などもそうですね。電話だけでなくコンピュータも含めてパワフルな標準になるのではないでしょうか。
ストレージを例に取ると、管理ソフトとストレージ間を結ぶプロトコルは標準化されていませんでした。競争が激化するので大企業が取り組んでこなかったのです。しかし、既存の大企業と競争する米HPなどが、SNIAなどを通じて標準化に取り組んできました。一方サーバー分野でも、米Microsoftではなく、米SunのSolarisやRed Hat Linuxが標準化を促進してきました。ネットワークでも、当社など決して大企業ではないベンダがルールを作るべく、パートナーとともに取り組んでいます。そのような観点から、ネットワークの連携に関して、オープンスタンダード化を目指したいですね。
■ 新生Extremeの勝利への道のり
─近ごろ取り組みが加速しているNGN(次世代ネットワーク)に向けてはいかがでしょう。
カネパ氏
Extremeの戦略はシンプルです。次世代Ethernetベースのネットワークに向けた展開とその導入は、容易でなくてはなりません。スイッチのOSは1つあればよく、競合のように2つも3つもOSの勉強をせねばならないのでは困ります。またコア製品は高スケーラビリティなもので、エッジ製品は安価でなくてはなりません。負荷がかかってきても、うまく機能してくれなくてはなりませんし、さまざまな情報の流れには優先度がつけられなくてはなりませんから、QoSは階層別に提供できなくてはならないでしょう。
NGNではこうした機能やサービスの提供が重要であると思われます。当社はこの点を十分理解していますので、それらを実現しうる機器をどんどん提供していきたいですね。ほかの国でもさまざまなキャリアがNGNを構築してきていますが、そうした中でも当社は成功し、よりよいソリューションを提供できています。だからこそ、当社のビジネス全体の25%程度が、サービスプロバイダからのものになっているのです。
─Extremeではこれまで、Ethernet Everywhereなどのさまざまなビジョンを展開してきましたが、今後の方向性はいかがですか?
カネパ氏
現在のビジョンである「Insight&Control」は、登場以来まだ1年程度です。来年あたりから具体的な効果が出てくるのではないでしょうか。現在、スイッチとルータの各技術は区別されていますよね。特にルータは、スイッチよりインテリジェントかつ高価であるという考え方があります。これから、Extreme XOSのスケーラビリティやプロトコル面がさらに進化を遂げていきますと、スイッチとルータの境界線が薄れていき、ネットワーク構築の考え方も変わってくるでしょう。これまでルータでしかできないと思われていたことが、スイッチで実現できるような大きな変化がみられるようになるかもしれません。
─そうすると、Extremeにとって「勝利の方程式はExtreme XOSである」と考えてよいですか?
カネパ氏
それが1つなのは確かですが、もう1つ、Extreme XOSの下位層に位置するASICも忘れてはいけません。これにより、ワイヤスピードでパケットを見ること、理解することができて、さまざまなアクションへつなげていけます。モジュラー型で、スケーラビリティがあって、しかもオープンなOSをもち、さらに独自のASICを抱えているベンダは当社だけです。これらを他社との差別化要素とし、顧客の方たちの問題解決をサポートしていきます。これまでお会いした方たちからも、大変ありがたいことに「是が非でも成功してほしい」と激励いただいています。顧客の本音としては、選択肢があることを常に望んでいるのですから。
■ URL
米Extreme Networks
http://www.extremenetworks.com/
エクストリームネットワークス株式会社
http://www.extremenetworks.co.jp/
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