セキュリティアプライアンスの代表格といえば、以前はファイアウォール/VPNアプライアンスだった。ところが最近では、ウイルス対策やIPS、Webフィルタリングといった一連のセキュリティ機能を統合した「UTM(統合脅威管理)」が主流になっている。今回は、以前よりUTMアプライアンスを展開しているフォーティネットジャパン株式会社(フォーティネット)の岡本吉光社長に、UTM市場や同社の戦略について話を聞いた。
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フォーティネットの岡本吉光社長
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─まず、フォーティネット製品の特徴を教えていただけますか?
岡本氏
処理にASICを使っており、非常に高速な処理を行えるという点が挙げられます。これは、米Fortinetのケン・ジーCEOに先見の明があったといえるでしょう。また、すべての要素を自前で提供できる点も大きな差別化ポイントです。ワールドワイドの700名あまりの従業員のうち、半分が開発者であり、顧客のニーズをいち早く製品に取り込むことができます。
─市場の状況はいかがでしょうか?
岡本氏
UTMといっても、まだウイルス対策機能やファイアウォールが中心で、すべての機能をすべての顧客が使っているわけではないですが、市場では“UTM”という名前でないと売れない状況です。市場は右肩上がりで成長しており、IDC Japanの調査によれば、2005年から2010年までは年率14.3%の成長をすると予測されています。
その中で当社では、特にローエンドで実績が伸びていますが、これは、管理者がいない、予算が限られるというSMBの状況に、簡単に設置でき、基本機能がそろっていて、さらにライセンス無制限で安価に利用できる当社製品が、ぴったりはまっているからといえます。
また、アプライアンスのUTM化によって、サービスベンダが簡単にサービスを提供できるようになりました。この流れをうけ、マネージドサービスプロバイダ(MSSP)によるサービス提供が盛んになっており、当社の製品もさまざまなところに採用されています。中小企業にはセキュリティの専任管理者がいませんから、その代わりになるセキュリティサービスビジネスは、今後も広まっていくのではないでしょうか。
─そうすると、注力市場は引き続きローエンド市場なのでしょうか?
岡本氏
もちろん、そこへのアプローチは続けますが、当社としては、公共、エンタープライズ領域へのビジネス拡大を狙っています。当社ではローエンドからハイエンドまで製品がそろっていますが、エンタープライズには、支店からデータセンターまでさまざまな規模の拠点があるため、広いラインアップを持つ点はプラスに働きます。
キャリア、xSPでは、前述したようにマネージドサービス提供の動きが加速しており、そこを中心にフォーカスしていきます。当社製品は1台でなんでもでき、ウイルス対策、Webフィルタリングなど、顧客の要求に合わせてサービスを提供できる点が評価されているようです。この分野では、NTTコミュニケーションズに採用いただきまして、これは、市場に大きなインパクトがありました。同社のターゲットはSMBよりも上の分野で、これは当社の注力市場とも重なります。そこでも、ぜひ、UTMを浸透させていきたいですね。
また公共分野に関しては、もともと大学や地方自治体からの引き合いを多くいただいているのですが、政府の「セキュア・ジャパン」戦略に伴って需要がさらに伸び、大きな市場になると期待しています。教育関連では、大学ではネットワークの入れ替えなどに伴い、アプライアンスを導入するケースが増えていますし、高校や中学校からも引き合いがあります。また官公庁、電気・ガスなどの公共インフラ、金融機関といったところも期待できるでしょう。
それから、公共市場では5年間のサポートを求められることが多くなっていますが、当社ではそれが可能な点も強みです。アライアンスで足りないところをカバーしている競合では、5年後がどうなっているのかわかりません。しかし、当社ではすべて自前で用意しているため、5年間のサポートをコミットできるのです。
─新たな市場へ打って出るために、何か特別な施策は考えていますか?
岡本氏
当社では間接販売モデルを採用していますが、顧客のニーズをつかむために、ハイタッチのセールス活動を行う人員を採用しました。まずはエンタープライズ、xSP向けにアサインしています。このうち、特にエンタープライズ分野では、リセラーとの協業が大事ですので、ハイタッチセールスで顧客と関係をつなぎ、さらにリセラーとの関係を強化することで、いいソリューションをお届けできるようにします。
また認定エンジニアを増やすために、主にリセラー向けに、トレーニングを破格の値段で提供しています。現在は80名ほどですが、これを倍にはしたいですね。さらに、現在は台湾にあるRMA(リペア)センターを国内に設置し、迅速な対応をできるようにしていきます。
─大企業に対しては、どういった訴求をしていくのでしょう。
岡本氏
大企業では、以前からウイルス対策機能の二重化に対するニーズが高く、ここからまず攻め込もうと考えています。また最近では、イントラネット内でのセキュリティ強化に対するニーズが高くなりました。例えば、生産ラインのコントローラーもPCを利用していますが、ここにはウイルス対策ソフトは入れられません。この防御のために、1カ所で300台400台の小型アプライアンスを導入した事例があります。
こうした多数の製品を一度にコントロールできる、FortiManagerという管理ソフトがあるのも当社の強みです。パターンファイルを当社のセンターからダウンロードして、一括配信する仕組みも備えており、この点も評価されています。こうした事例は、流通業でのPOS端末防御でも見られています。
また大企業では、セキュリティゲートウェイの集約、置き換えも狙っていきたい分野ですが、ここは少し時間がかかるでしょうか。
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FortiGate-224B
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─先日発表された「FortiGate-224B」は、これまでとは変わり、内部ネットワークにフォーカスした製品です。この製品の持つ意義について教えてください。
岡本氏
現在では、サイバー犯罪のビジネスモデルができつつあり、組織犯罪は今後ますます増えるでしょう。それに対応するためには、ネットワークとセキュリティ技術を融合する必要があると考えて、セキュリティボックスの中にスイッチの機能を入れたFortiGate-224Bをリリースしました。
今までのようなゲートウェイのチェックだけでは、脅威を100%シャットアウトできなくなっています。今では、VPNやファイアウォールもインフラになってきましたが、ウイルス対策や迷惑メール対策もインフラに位置付けるべきではないでしょうか。当社では、ネットワークに当たり前の機能として加えるべきではないか、と考えています。
なお、FortiGate-224Bは手軽に導入できるというメリットもあります。価格も安いので、100の機能のうち50~60が利用できれば、導入する価値はあるでしょう。まだポリシーがきちんと整備されていない企業も多いですが、利用できる機能から、手軽にスタートしていただければいいのでは、と考えています。幸い、リセラーへの受けは非常に良く、顧客にも興味を持ってもらっています。
■ URL
フォーティネットジャパン株式会社
http://www.fortinet.co.jp/
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( 石井 一志 )
2007/03/02 17:10
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