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アライドテレシス、米軍横田基地でIPトリプルプレイ・サービスを開始


IPトリプルプレイサービスの運用が開始された米軍横田基地。この基地所属の主力輸送機「C-130ハーキュリーズ」などが待機している

左のラックが基地内ネットワークの心臓部にあたるDNS、DHCP、エクスチェンジ、バックアップなどの各種サーバー。右のラックには、Gigabit Ethernet対応のレイヤ3スイッチやメディアコンバータなど、グローバルスーパーリンクやインターネット、VoIPをつかさどる各種主要ネットワーク機器を搭載する
 米Allied Telesis Capital(AT Capital)は3月9日、米NTT Americaと協力して進めている米軍横田基地のIPトリプルプレイサービス開始にあたって、プレスに施設の一部を公開した。このサービスでは、まずデータおよび音声サービスから提供を開始し、1~2カ月以内に映像サービスも始める予定だ。米国サンノゼに本社を構えるAT Capitalはアライドテレシスホールディングスの子会社で、またニューヨークに本社を構えるNTT Americaは、NTTコミュニケーションズの子会社にあたる。

 横田基地の全施設に向けてIPトリプルプレイサービスを提供するため、ネットワークインフラの構築から、トリプルプレイサービス提供に必要な機材調達、運用保守といった各項目をAT Capitalが担当。AAFES(Army and Air Force Exchange Service:米国陸・空軍が共同運営する福利厚生組織)を通じて提供する形となり、すでに1月より試験サービスが開始されていた。

 この横田基地におけるAAFESの総支配人、ロレンゾ・サルガド氏によると、「米国内テレビを最先端のIP技術により、ライブで国外米軍基地に向けサービスするのは、ここ横田基地が初めて」という。全体的なネットワークシステムは、NTT AmericaがNTTコミュニケーションズの国際イーサネットサービスである「グローバルスーパーリンクサービス」を利用。横田基地と米国にあるIPテレビ設備との間を、MPLS over Ethernet技術を用いて、セキュアで高速なエンドツーエンドのEthernetで接続した。

 一方基地内においては、「iMAP(統合型マルチサービスプラットフォーム)の『TELESYNシリーズ』を核とした伝送速度1Gbpsの光ファイバネットワーク環境で、住居をはじめ商業施設、公共施設に向けてトリプルプレイサービスが提供される」(AT Capitalから委託を受け作業をサポートする、アライドテレシスネットワークス アプリケーション開発事業部 トリプルプレイ推進部 部長のドーフ・ヤクブ氏)という。また「ネッワークトポロジーはリング状になっており、万が一のトラブル時でも50ミリ秒以内に復旧が可能」(同氏)な、万全のシステム体制で備えている。VODコンテンツの調達・運用管理もAT Capitalが行う。

 今回サービスが提供されている横田基地は、東京都心から40kmという奥多摩のふもとに位置する、日本に3カ所ある米空軍基地の1つ。総面積は約710万平方メートルで、東京ドーム約150倍にあたる。基地内人口は軍人やその家族、日本人従業員など約1万1000人にのぼるが、これまでのサービスでは十分満足させられなかったという。「これまでは一部衛星によるテレビのライブ放送もあったものの、多くは1~2週間に1回程度の録画媒体で届けられ、これを基地内に配信していた。この遅延がユーザーには不満だった」(サルガド氏)。しかし今回の新システム導入によって、横田基地内の各家庭では、米国のテレビチャネルをIP環境で24時間リアルタイムで楽しむことができるようになったのである。


AAFESの横田基地総支配人、ロレンゾ・サルガド氏 アライドテレシスネットワークス アプリケーション開発事業部 トリプルプレイ推進部 部長のドーフ・ヤクブ氏

 また、これまで基地内における3つのサービスは別個に提供されていた。インターネットはサービスプロバイダと契約、電話は空軍の通信担当の部隊が担当、そして映像サービスはCATV業者と契約していた、といった具合である。今回は、CATV業者との契約切れを迎えるにあたり、特に映像サービスにおける遅延の問題などに絡むユーザー満足度向上のために、IPトリプルプレイサービス実現に向け取り組んだ。ヤコブ氏は「3つのサービスをパッケージにバンドルした形態でサービス可能になっており、この形態で申し込めばユーザーは10%のディスカウントも得られる」と述べ、IPトリプルプレイサービスとしてまとめたことのメリットをアピールしている。

 IPトリプルプレイサービスでは、さまざまなプランがある。これらのプランから、ユーザーがニーズにあわせて、毎月手ごろな料金で選択できるのも特徴の1つだ。たとえば、電話サービスでは、29.95ドルで米国とカナダへは通話し放題な「ベーシックホン」や、49.95ドルで100分間通話し放題な特典をあわせた「プレミアムホン」を用意した。データサービスでは24.95ドル(256kbps)~55.75ドル(3Mbps)まで帯域別に契約が用意されているほか、テレビサービスは、チャンネル数などに応じて無償~41.95ドルまでの3プランを設けている。

 いまのところ、電話サービスはベーシックホン、データサービスは3Mbps、テレビサービスは13チャンネルがプラスされる最上位契約への申し込みがそれぞれ目立つとのこと。これまでに、横田基地全体の約60%が新しいサービスに申し込んでいる状況だ。今後は、特にテレビサービスはユーザーニーズも多様であることから、第3四半期にはニーズをふまえて、最大55チャネルまで拡張可能になる予定である。


IPトリプルプレイをサービスするレジデンシャルゲートウェイ。ADSL(SIPベース)モデムにスイッチの機能も付いており、セットトップボックスを最大3台、PCを1台接続できる。各ポートに対してVLANを構築する機能や、どのサービスを優先するかを決める制御機能(QoS)もある サービスを申し込むと受け取る、モデムやセットトップボツクス、スプリッタなどが含まれる製品ソリューションキット。説明書に従って各家庭で接続する。複雑そうだが、ユーザーが申し込むとスタッフがトレーニングするので、問い合わせ件数は少ないという 基地内カスタマセンターにおけるIPトリプルプレイサービスの申込みカウンター。Webでも申し込めるが、ショッピングしながらここで申し込むユーザーも多い


URL
  アライドテレシスホールディングス株式会社
  http://www.at-global.com/
  ニュースリリース
  http://www.at-global.com/news/pr.aspx?012307_02


( 真実井 宣崇 )
2007/03/12 12:52

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