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代表取締役社長の吉田仁志氏
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基幹系とは別に設けた情報系システムから、SASのソリューションをプラットフォームとして導入することが必要と強調
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SAS Institute Japan株式会社は3月27日、同社の最新のビジネス動向を紹介するプレスラウンドテーブルを開催した。同社は昨年9月1日付けで吉田仁志氏が社長に就任。その後、7カ月を経過したことから、吉田社長自身がSASのビジネス動向を紹介した。
吉田社長は最初に、BIを巡る動向を紹介した。
「SASといえば、BI(ビジネス・インテリジェンス)のベンダーと認識していただいているだろうが、最近の調査会社の調査においても、BIは今後大きく発展する分野という結果が出ている。ただし、日本においてはBIの活用範囲は、個人や部門データの分析といった狭い範囲にとどまり、レベル1から2という状態。経営者にとって必要なのは、部門レベルの情報収集ではなく、全社的に統合された情報。より広いBIが必要となってくる。知見を導き出すための解釈としても、従来のレポーティング範囲では不十分で、より深いBIが必要になっている」
その前提に立って、「情報系システムは、基幹系とは別に必要」と主張した。これは、「基幹系システムと、情報系システムは性質がまったく異なる。基幹系システムは、膨大なトランザクションを止めずに正確に処理することが必要。それに対し、顧客データなどの情報系システムは、分析が主体で、それを元に今後の予測を行うことが必要」とそれぞれの特性が異なっているためだという。
こうした状況を認識した上で、「プラットフォームとしてSASを導入してくれれば、そこからデータの統合、分析することが可能となる。新たにBIに進出するベンダーも出ているが、データの統合、分析が正確にできる企業はSASの他にはないと自信をもって言える」と断言した。
SASでは大量のデータを統合し分析していくために、1)技術層にあたる=SAS Enterprise Intelligence Platform、2)企業であれば必要な業務階層=SAS Intelligence Solutions、3)業種別ソリューション=SAS Industry Solutions、と三階層に分かれたソリューションを提供。
業種セグメントでは、「金融」「製造」「公益」「ヘルスケアサービス」「保険」「流通」「通信」に分類しており、それぞれの業種にあわせたソリューション、セールスを進めている。
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金融機関の事例として、年間500万ドルの収益拡大を実現した米国の金融機関US Bankの事例を紹介
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金融ユーザーの事例では、米国で第6位のUS BankがSASのCustomer Intelligence導入によって、イベント・ベースド・マーケティング(EBM)を実現した結果、従来見落としていた販売機会を確実に補足し、一日あたり約5000人の見込み顧客をリストアップ。その結果、年間で500万ドルの収益拡大を実現した。
「皆さんの手元にも大量のダイレクトメールが届いていると思うが、高級外車に乗っている顧客向けに国産大衆車のダイレクトメールを送っても、商談には結びつかない。効果的なマーケティング活動を行っていくためには、金融機関の場合、オンラインバンキング、コンタクトセンター、窓口、ATMといったさまざまなチャネルから入ってくる顧客データを統合し、正確に分析していくことが必要だ。例えば、米国では小切手取引が止まって休眠口座になっているものは、他の銀行に乗り換えられる典型的なパターン。一日あたり1万6000以上のトランザクションデータがあると、個別の顧客動向を正確に把握することは難しい。そこで当社のソリューションを利用することで、膨大なトランザクションの中から、顧客動向を正確に把握し、フォローしていくことが可能となる」
また、分析結果で同じ結果が出ている顧客であっても、それぞれのプロフィールによって必要とする商品には違いがある。そういった部分をフォローしていくために、US Bankでは会話を通じて顧客に応じた商品を勧めている。
EBMに対しては、米国の金融機関だけでなく、「日本の金融機関にも広がっている」と吉田社長は強調する。
「金融での事例は、米国ではUS Bankの他にもいくつもの実績がある。日本においても、リテール開拓に取り組んでいる金融機関もEBMに注目している。都市銀行だけでなく、顧客の深掘りが必要な地銀からの注目度も高まっている」
その他の業種においても、通信業界では携帯電話のナンバーポータビリティ制度導入による顧客流動化の歯止めとなるソリューションとしてSASのCustomer Intelligenceが注目され、流通業界においては顧客のし好変化の頻発や多様化にあわせたマーケティングミックス分析などに活用する例が出ている。
吉田社長はこうしたソリューションの成熟により、「これまでのIT導入は管理のためのもの中心であったが、ようやく戦略のためのIT活用が実現できる状況になった」と分析している。
今後は就任当初からの課題としてきた企業知名度の向上を一層進めていくと共に、「SASのソリューションを導入しているユーザーの成功を実現していくことが、今後につながる重要な一歩となる」として成功事例の着実な増加を目指していく方針だ。
また、SaaSのようなWeb型のアプリケーションを利用するユーザー向けに、「今後、サービスとして当社のソリューションを提供することも検討中。SaaSベンダーとの提携も実現していきたい」としている。
■ URL
SAS Institute Japan 株式会社
http://www.sas.com/japan/
( 三浦 優子 )
2007/03/27 16:53
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