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電子デバイス事業本部長・藤井滋経営執行役常務
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富士通株式会社は4月4日、電子デバイス事業戦略に関するプレス向け説明会を開催した。説明会では、同社が推進する電子デバイス事業戦略の現状と課題、さらには2007年度以降の展開について、電子デバイス事業本部長・藤井滋経営執行役常務がその方針を述べた。
まず、電子デバイス市場全体の動向について藤井執行役常務は、「電子デバイス市場全体は着実に成長している。地域別では、アジアパシフィックが急速に伸びているが、その中で日本の成長はそれほど大きくなくフラットにとどまっている。製品別では、当社が従来主力としていたASICの成長はここ数年止まりつつあり、基盤ロジックLSIであるマイコンやアナログ、汎用品であるASSPの市場は今後も成長していくとみている。国内の市場動向としては、デジタル家電を中心に国内セットメーカーのASIC需要が、アジアEMS/ODMのASSP需要に加速度的にシフトしており、ビジネスの中心がアジアに移りつつある」との見解を示す。
こうした市場環境のもと、同社では2004年から2005年にかけて、ディスプレイ事業を電子デバイス事業から切り離し、ロジックLSI事業へとリソースを集中。2006年以降は、事業基盤をロジックLSIに置き、「そのなかでもCOTなど90nm以下の先端ロジックLSIと、アナログやマイコンといった130nm以上の基盤ロジックLSIの2つの領域で利益の拡大化を図っていく」(藤井執行役常務)ことが、電子デバイス事業の基本方針だとする。
システム領域としては、LSI(ロジック、システムメモリ)、パッケージMCP/SiP(パッケージ・試験)、モジュール(メディアデバイス)、ボード(コンポーネント)にフォーカスし、関係会社を含めたトータルソリューションを提供。そして、電子デバイス事業から高付加価値のデバイスを供給していくことで、社内シナジーによる同社製品のプロダクト競争力の向上を図る。
さらに、パートナーや顧客企業との連携を軸にビジネスを進める「New IDMモデル」を基本戦略として、市場変化に合わせてこのビジネスモデルを深化・発展。ロジックLSI事業への注力をさらに加速し、ボリュームビジネスの展開を目指す。これに向けては、1)先端と基盤のバランス、2)差異化技術と価値創造、3)グローバル化のさらなる推進―という3つのキーワードを掲げた。
2007年度以降に向けた展開としては、「ロジックLSI事業の拡大に向けて、基盤ロジックLSIの売上規模をキープしながら、先端ロジックLSIを成長のエンジンと位置づけて、売上の大幅増を図っていく」(藤井執行役常務)考え。
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ASSP強化のためのエンジニア増強
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2006年度におけるプロダクト別の売上比率は、「COT/ASIC」が約5割を占め、「基盤ロジックLSI」が約3割、「ASSP」が約2割となっており、「ASSPの事業基盤がまだまだ弱いのが現状の課題。今後は、プロダクトミックスの最適化を目指し、COT/ASICについては売上比率を維持し、とくにASSPの売上規模を拡大させていく」(藤井執行役常務)としている。
具体的なASSPの事業展開としては、“画像の富士通”としてのASSPの実績をベースに、次の動きとして、ワイヤレス技術のWiMAXのワールドワイド展開や地上波デジタルラジオ(3セグ)の展開など、スタンダードへの早期参画からのソリューション展開を進めていく。さらに、ASSP強化に向けて世界各地でエンジニアの増強を行っており、日本においても、アプリケーションシステムのエンジニアをアドバイザリーチームとして獲得している。
基盤ロジックLSIの事業展開では、供給力、技術力、信頼性を強みにフラッシュマイコンのワールドワイド展開に注力するとともに、アナログについては国内ビジネスでの実績とこれまで蓄積してきたシステムノウハウを生かしてアジア向けビジネスを拡大し、ボリュームを追求していく方針。これに向け、3万枚/月の製造能力をもつ富士通セミコンダクターテクノロジ(FSET)が4月2日から事業を開始し、基盤ロジック工場の強化を図っている。さらに、後工程事業を強化するため、岐阜工場を九州工場に集約することを発表しており、拠点集中によるボリュームの確保、生産効率とコスト競争力の向上を目指す。
COT/ASIC事業に関しては、先端製造能力増強計画の見直しを実施する。同社では、90nmについて、2006年下期に1万5000枚/月の能力構築を完了。60nmについても2007年4月から量産投入を開始する予定だが、顧客所要が減少していることを受け、増産時期の最適化を行うという。能力構築については、所要にあわせて随時見直しを実施する計画。また、ASIC事業では、「一発完動」の実績を武器に新市場・新規市場を開拓していくほか、先端テクノロジの開発については、付加価値志向で先端プロセスの先行開発を行っていく方針。
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先端製造能力増強計画の見直し
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「一発完動」を武器に新市場・新顧客を開拓
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付加価値志向のテクノロジ開発
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2006年度デバイスソリューションの業績予想
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なお、2006年度の同社デバイスソリューションの業績予想についても言及し、2006年度第3四半期決算の時点で売上予想を7600億円に下方修正したことに関して、「ロジックLSIの売上減が原因。基盤ロジックLSIではデジタルAV、携帯電話を中心に複数顧客の生産調整があり、一方、先端ロジックLSIでもデジタルAVにおいて一部顧客の所要減があったことで下方修正せざるを得なかった」と、その背景を説明した。ただ、「当社の開発・製造が遅れたといった理由ではなく、あくまで顧客側の所要が変化したことによる影響が大きかった。この顧客の所要変動をふまえながら、New IDモデルを含めた各種施策については継続して進めていく」と前向きな姿勢を見せた。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
( 唐沢 正和 )
2007/04/05 09:16
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