Enterprise Watch
最新ニュース

「バックアップにはHDDとテープの併用が最適、セキュリティにも注力」-米HPニアライン担当副社長


米HPのHP StorageWorks ニアラインストレージ担当副社長、ボブ・ウィルソン氏
 現在のストレージ市場では、テープバックアップに代わり、HDDを用いたディスクバックアップを導入する企業が増えている。しかしそうした中でも、テープ装置はまだまだ必要とされており、テープソリューションを提供する企業は数多い。今回はそうした企業の1つ、米Hewlett-Packard(以下、HP)のHP StorageWorks ニアラインストレージ担当副社長、ボブ・ウィルソン氏に話を聞いた。


―まず、テープソリューションのメリットとはなんでしょう?

ウィルソン氏
 第一にコストが挙げられます。GBあたりのコストは一番安いですから。また、SATAのローエンドHDDの信頼性がそれほど高くないのに対して、テープでは高いデータ信頼性を持ちます。それから、多くの顧客がディザスタリカバリのためのオフサイトバックアップを行っているように、リムーバビリティも特徴ですし、転送速度もディスクアレイよりはずっと高速です。これは、非常に大きなデータベースバックアップをする場合などに効果的に働きます。


―バックアップに関して、マーケット全体のトレンドはいかがでしょうか?

ウィルソン氏
 スタンドアロンのテープドライブからテープライブラリへの移行が進んでいますし、バックアップ環境において、より多くのお客様がテープに加えて、HDDを併用するようになっています。またデータセキュリティもトレンドといえるでしょう。米国では、上場企業がもしテープを紛失してしまったら、情報をなくしたという事実を開示しなくてはいけません。テープは動かすことができますので、損失のリスクがつきまとうのですが、暗号化していれば漏えいの心配はないのです。


―そうしたトレンドに対してHPではどういった対応をしているのでしょう。

ウィルソン氏
 セキュリティでは、暗号化の機能が内蔵された次期テープ規格「LTO Ultrium4」の提供するほか、暗号化にあたっては暗号鍵の管理が必要になるので、鍵管理のソフトを発売する予定です。また、HDDベースバックアップへの投資を増やし、特に(HDDとテープを併用する)D2D2T(Disk to Disk to Tape)へ注力しています。ランダムアクセスのデバイスですからHDDにも優位性はありますが、信頼性面で、特にセカンダリストレージで利用するSATA HDDには問題があるので、HDDだけでデータ保護をするべきではありません。信頼性とコストの面から、最後はデータをテープに移す必要があると考えています。


―新技術への投資はいかがですか?

ウィルソン氏
 継続的に評価と研究を行っています。例えば、任意の地点へデータをリカバリできる「Continuous Data Protection」の評価では、有望な面も見られましたが、一方で課題もありました。あらゆるポイントでスナップショットを取り続けるような形になるので、ストレージがたくさん必要ですし、非常に高い性能が要求されます。

 また、HDDベースバックアップに利用する圧縮技術「deduplication」技術も有用です。まだ初期段階の技術ですが、非常に詳しく研究している担当者がHPラボの中にもいます。何年か先には当社の中からも製品が出てくるのではないでしょうか。非常に画期的な技術で、実験においてもデータサイズを1/50にも小さくできています。

 他方、UDOやMOなどの光ディスク市場はとても小さくなってしまっています。RAIDとテープの複合ソリューションの方がとてもコスト効果が高くなってしまったので、もう投資はしていません。HDDの回転を止めてコストの削減やMTBF(平均故障間隔)の延長を図るMAID(Massive Arrays of Inactive Disks)技術も評価はしましたが、コストアドバンテージを考えると、信頼性のリスクを十分に削減できるほどのメリットはないと考えましたので、実用化は行いません。


―昨今は、企業におけるデータの大容量化が進んでいますが、テープはこの流れに対応できるのでしょうか?

ウィルソン氏
 DATでは2011年ごろの提供が予定される第8世代までのロードマップが示されていますし、LTO Ultriumでも第5世代(1巻あたり圧縮時3.2TB)の開発がすでに始まっており、2011年ごろの第6世代(同6.4TB)まではロードマップが示されていますので、安心してユーザーに使っていただけると考えています。ラボでLTOカートリッジのサイズをテストした結果、10TBを超える能力がすでに確認されています。2011年が近づけば、またその先のロードマップをお見せできるでしょう。

 長期保存が可能なのもテープのメリットで、LTOの寿命は容易に20年を超えるというデータが出ていますが、一定の期間が経過すると新しいテクノロジーへの移行の必要性が生じます。当社でも新しいテープへの移行サービスを提供しています。移行については、アーカイブを取り出して別の技術へ移行することで、スペースを減らせるというメリットもあるでしょう。10年前のカートリッジでは部屋いっぱいにもなる容量を、1つのカートリッジに移行することが可能になっています。誰もガレージをきれいにしたくない状況なのでしょうか(笑)、あまりメディアのコンバージョンは進んでいませんが、いつかはしなくてはならないものだと思います。


―HPでは中小企業向けの製品リリースが続いてますが、この市場でのバックアップ製品に対するニーズはいかがでしょう。

ウィルソン氏
 SMBはエンタープライズ市場よりも急速に伸びており、とても重要なターゲットと認識しています。この市場では、テープが好まれないため、HDDベースのソリューション、D2Dバックアップシステムへの投資を中心に行っています。また容易に利用でき、お手軽な値段のものを提供することを目指しており、アプライアンスの提供を中心に考えています。近々日本でも新製品をお目にかけられるでしょう。この市場ではパートナービジネスが大きなウエイトを占めますが、当社はすでにサーバー市場で大きな存在感を確立しているので、その販路を利用することで、相乗効果を出していけるのではないでしょうか。



URL
  米Hewlett-Packard
  http://www.hp.com/
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/


( 石井 一志 )
2007/04/20 11:02

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.