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代表取締役社長の黒川博昭氏
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キーワードは「フィールド・イノベーション」
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フィールド・イノベーションで目指すこと
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富士通フォーラムの初日となる5月17日、富士通株式会社の代表取締役社長である黒川博昭氏が基調講演に登場。「富士通のめざすこと~お客様とともに夢をかたちに」をテーマに講演を行った。
冒頭、黒川社長は、「おかげさまで、大変足腰も強くなってきた。これを踏まえて、もっとお役に立て、お客様に頼られる富士通になりたい。お客様の『もっと』をかたちにしていく」と切り出した。
富士通では、「フィールド・イノベーション」をキーワードに、ITによって現場と経営を密接に連携させることで、ユーザー企業を強い企業へと変革する役割を担いたいとしている。
黒川社長は、「フィールドというと、どうしても現場という感触が強いが、富士通がいうフィールドとは、課題を見つけて、解決のために取り組む場、変えなくてはいけない領域のことを指す」と定義。「人を主役にして、プロセスとITの継続的改善で革新体質をつくるのがフィールド・イノベーション。人や、プロセス、ITの役割を見える化し、活動に関わるさまざまな人々の無限の知恵を生かすための支援を富士通は行っていく」とした。
一例として自らの立場を示し、「私自身が、富士通の新製品のヒット率をあげたいとした場合に、私にとってのフィールドとは、お客様であり、営業であり、設計・開発、工場、調達、取引先、サービスということになる。すべての現場に直接さわることはできないが、これをフィールドととらえ、それを見える化することで、解決が図れるようになる」と、フィールド・イノベーションの実例を紹介した。
また、「フィールドのオーナーがイノベーションの責任者である」とし、「フィールドの設定と課題の明示が重要であり、人、プロセス、ITといったフィールドの構成要素の見える化に取り組む必要がある。それこそがスタートポイント。そして、ITをブラックボックス化することは、企業における課題を見えにくくしており、これも避けなくてはならない」などとした。
ここで黒川社長は、「失敗するプロジェクト案件を見ると、いまの機能を実現してくれれば良いといわれてスタートしたものが多い」として、「40年前に、いまのシステムを構築したときには、業務を分析して、動くデータはどれかということを判断して、組み上げていった。だが、それと同じものを、20年、30年経って、わかる人がいるはずがない。つまり、いまの機能というものを誰も理解しないまま、システム構築が始まることになる」と語った。いわば、これがITのブラックボックス化した悪例のひとつというわけだ。
富士通では、フィールド・イノベーションを実現するために必要となる「人、プロセス、ITの見える化」には、観察することと、インタビューをすることをうまく組み合わせることが大切だとし、「まだ発展途中だが、観察とインタビューによって、ITの外のプロセスと、人の動きをきちんと判断できるような仕組みが構築されつつある」とする。
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人の知恵を活かすには見える化が必須と説明
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見える化技術を富士通として追求
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この手法を同社のユーザーである、銀行に展開。営業現場の空間を分析し、業務の流れを分析し、人の意識、モチベーションを分析。そして、現場およびプロセスを可視化したという。銀行の営業拠点においては、レイアウトの問題、午前9時の仕事の多さ、立ち歩きの多さ、窓口での問題、教育などの課題が浮き彫りにされ、その結果、必要なITが見えてきたという。
また、ソフト開発を行っている富山富士通では、トヨタ生産方式を導入。作業を社員と共有する形で見える化し、現場を改善。この人とプロセスの改善、およびITの活用により、2009年までに2倍の生産性を目指す改革に取り組んでいるという。
「見える化の技術とは、観察とインタビュー、あるいはBPM、システム運用のやり方のほか、内部統制をきっかけにした取り組みなどと、いろいろある。見える化することで、無駄とか、無理、ムラがわかるようになる。富士通は、これらの技術を提供することで、企業、生活、社会の活動の場のプロセスとITを継続的に改善し、新しい革新を起こしたい」とした。
こうした見える化によるフィールド・イノベーションに取り組むための「富士通のチャレンジ」として、黒川社長は、「富士通グループの『もっと』を、かたちにすることが大切であり、従来から推し進めてきたITソリューションにとどまらず、ビジネスソリューションをさらに追求していきたい」とした。
その具体的な取り組みとして、社内にフィールド・イノベータを育成することを掲げ、「お客様と業務目線で話すことができる人材を育成することが必要。部長、課長などの業務を理解している社員を対象に、見える化技術、富士通の業務、シスム実践内容などを徹底的にたたき込み、新生富士通総研を軸にしながら、ビジネスソリューションを展開していく。富士通の社員全員がフィールド・イノベータの素養や基本技術をもたなくてはならない」と、富士通の方向性を示して見せた。
また、「まず富士通がチャレンジすることが大切。富士通自身がフィールド・イノベーションを不断に続ける会社でありたい」とした。
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ITソリューションからビジネスソリューションへ
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フィールド・イノベーターの育成を掲げる
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BPOサービスの提供能力の向上も図る
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一方、「富士通が持つインフラという強い商品は、サービスを支える大事な要素である。そのインフラをもっとシンプルにし、SEがいないと動かないシステムや製品というものを極力少なくしていきたい。インフラの工業化、すなわち標準化を進めろと社内には言っている」などとしたほか、「オンデマンドデータセンターを拡充し、お客様の要求にグローバルに応えられる体制を確立し、これまでのコールセンター、エントリーサービス、プリンティングサービスといった基本サービスにとどまらず、富士通自身の経験を生かした品質、デジタルエンジニアリング、社員健康増進、人事・総務といった業務サービスもBPOで提供していく」と語った。
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プロダクトの新しい価値を“もっと”追求すると紹介
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ハードウェアに関しては、「富士通は、高速処理、大容量、高信頼性、低価格といった点での価値を提供してきたが、お客様の価値が広がり、静かなものが欲しい、低消費電力のものが欲しい、環境に配慮したものが欲しいといった要求も出ている。富士通は、この部分に関しては、鈍かった反省もある。今後は強い姿勢で取り組んでいくことで、人にやさしい製品、環境にやさしい製品を提供していく」とした。
最後に黒川社長はThe FUJITSU Wayを示し、「お客様の事業に貢献して、お客様とともに成長することができる、お客様のかけがえのないパートナーになる」と、富士通の方向性を改めて強調した。
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The FUJITSU Wayを掲げる黒川社長
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■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
富士通フォーラム2007
http://forum.fujitsu.com/2007/tokyo/
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( 大河原 克行 )
2007/05/17 17:12
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