Enterprise Watch
最新ニュース

「ビジネス開発にHPCを」、IntelがHPC普及に向け専門組織を新設


 プロセッサの高性能化により、低価格化したHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に注目が集まりつつある。マイクロソフトでは、HPC向けOSとしてWindows Compute Cluster Server 2003を提供。インテルも、部門横断のHPC部門を新設するなど、特に商業用途でのHPCの利用促進に動き出している。来日したHPC部門の責任者であるリチャード・ドラコット氏に、同社のHPC分野への取り組みについて話を伺った。


米Intelサーバー・プラットフォーム事業本部 ハイパフォーマンス・コンピューティング統括部長のリチャード・ドラコット氏
―まず、HPC部門のIntel社内での位置づけについて教えてください。

ドラコット氏
 HPC部門は、アーキテクチャグループ、ソフトウェアグループ、サーバープラットフォームグループとIntel内の各部門を横断する組織として新設されました。ここ数年、プロセッサのパフォーマンスが向上したことで、金融業や石油化学など、各方面でHPCが利用されています。Intel内も同様で、アーキテクチャやソフトウェアなどの開発でHPCを利用しており、さまざまな専門知識を保有しています。Intelとしては、各ベンダーに対して、標準品を提供するだけでなく、HPCに最適化したプラットフォームも提供する用意があります。HPCが大量に利用されるようになるまでに数年はかかるかもしれませんが、HPC部門を育苗場として利用していただければとおもっています。


―HPCという分野について、Intelではどのように位置づけていますか?

ドラコット氏
 スーパーコンピュータを含めてHPCと呼んでいます。具体的には、クラスタ構成により技術演算用途で利用されるコンピューティングを指しています。データベースやメールサーバーなどクラスタ構成となっていても、それらはHPCには含めていません。


HPC市場の規模
―HPCの市場規模はどのようにとらえていますか?

ドラコット氏
 IDCの調査結果を見ますと、2006年の100億ドルから、5年後の2011年には155億ドルまで成長すると予想されています。そのうち、トップ500企業で使われるHPCよりも、150ノード以下で利用されるボリュームマーケットでの伸びが高いと予想されています。

 つまり、これまで高価であったため商業用途で利用されていなかったHPCが、低価格化により商業用途でも利用されるという予想となっています。


―商業用途でのHPC利用というのは?

ドラコット氏
 たとえば、洗剤などを製造しているアメリカの消費材メーカーの場合、化学薬品の配合や、洗剤用のプラスティック容器の強度や充填方法などのシミュレーションに、HPCを利用しています。また、販売店の仮想空間を作り、商品をどの位置に置くと手に取りやすいかなどの調査にも利用しているようです。

 こうした利用方法は、HPCが安価に利用できるようになったおかげで実現しています。まだまだどのように使えばよいかわからない企業も多いでしょうが、使い方もなれてくるのではないでしょうか。


1Uの筐体内に1プロセッサ構成のボードを2枚搭載したプロトタイプモデル。メモリを多用する演算に最適な構成となっている
―Intelとして、具体的にHPCにどのように取り組んでいるのでしょうか? さきほどHPCに最適化したプラットフォームを提供することもあると伺いましたが、HPC専用のプラットフォームを開発するということでしょうか?

ドラコット氏
 基本的には、サーバー向けの汎用製品をベースにしたHPCを提案します。また、富士通やNEC、IBMといったサプライヤーに対し、HPCに関する技術支援などもHPC部門で行います。

 とはいえ、HPCで求められる機能もさまざまです。たとえば、メモリを多用するアプリケーションを用いた演算を行う場合、複数プロセッサを搭載したシステムよりも、1プロセッサ単位のボードを用いて演算を行うほうが効果的であったりもします。こうした用途に応じたプロトタイプをIntelで開発することもありますが、具体的な製品を用意することはありません。

 また、将来的な技術として、シングルダイに80コアを搭載したテラフロップスの研究用チップの開発なども行っています。

 そのほか、マルチコア化の能力をいかすため、ソフトウェア開発に対する手助けも行っています。HPC開発向けなど、あまり知られていませんが、ソフトウェア開発ツールを多数用意しています。


―HPC分野でのIntelの強みをどのようにとらえていますか?

ドラコット氏
 Intelでは、2年単位で製品開発を行っています。具体的には、マイクロアーキテクチャとプロセス技術の2つです。マイクロアーキテクチャでいえば、昨年Core Microarchitectureを発表しました。今年は45nmプロセス製品を発表します。また、マルチコア化も進めており、デュアルコアプロセッサとクアッドコアプロセッサで比較した場合、120~150%の性能向上を実現しています。こうしたプロセッサの性能をHPCでもそのまま利用できます。


―以前はItaniumをHPC向けプロセッサと位置づけていたように記憶していますが?

ドラコット氏
 もちろん、ItaniumもHPC用途で利用されています。Itaniumは、富士通のPRIMEQUESTやSGIのAltixなどで採用されており、大規模システム向けのプロセッサという位置づけとなっています。さまざまな分野で、これまでに10万件以上の利用実績があります。

 これに対して、Xeonはクラスタ構成でのHPC利用が中心となっています。XeonのHPC利用については、今後成長が期待できる分野です。


―HPCの企業利用は今後どのように進むと見ていますか?

ドラコット氏
 IDCの調査にもありますが、企業でのHPC利用が進むと見ています。なぜなら、これまで高価で手がでなかったHPCが手頃な価格で利用できるからです。これにより、今までできなかったようなシミュレーションを企業は行うことができるようになります。ビジネスモデルの開発などにも利用できるでしょう。

 HPC部門の新設は、IntelとしてHPCに対して長期にわたるコミットを行うことの現れでもあります。高性能のプロセッサの提供、HPCシステム開発に関するシステムベンダーへの協力、ソフトウェア開発ツールの提供など、各方面で今後もHPCの普及に力を入れていきます。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/


( 福浦 一広 )
2007/05/25 13:40

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.