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「チャレンジャー企業Juniperにはフォーカス戦略が必須」、イーロップCOO

ハイパフォーマンスネットワーキング分野へ注力する姿勢をアピール

 米Juniper Networks(以下、Juniper)のCOO(最高執行責任者)を務めるスティーブン・イーロップ氏は、企業全体として注力すべきことに「ハイパフォーマンスネットワーキング(HPN)」を挙げている。HPNとは、スピードはもちろんのこと、信頼性、QoS、セキュリティを兼ね備えたネットワークのことだが、今回は、このHPNに関することを中心に、COOとしてJuniperをどうかじ取りしていくかについて、同氏に話を聞いた。


スティーブン・イーロップCOO
―HPNの展開のために研究投資にも力を入れているとのことですが、それはどこが今のJuniperに不足しているからなのでしょうか?

イーロップCOO
 現状でそんなに不足しているところがあるとは思っていません。しかし、ネットワークが成長するに従って新しい要素が生まれてくるので、常にその一歩先を行けるように投資をしています。


―それでは、何がこの先に必要になってくると考えていますか?

イーロップCOO
 例えば、非常に大きなネットワークを持っているxSPで学んだことをエンタープライズへ移管できるように、ということがあります。ここには大きなチャンスが存在しているのです。また、セキュリティやアプリケーションアクセラレーション、アクセスコントロールといった方向を追求し、企業が抱えている問題を解決するソリューションを提供することに注力したいと考えています。これらはCIOがいつも気に掛けているテーマでありますが、それらを解決することが重要なのであって、よりピカピカする電気の箱を売ることが重要なのではありません(笑)。


―注力する分野として、エンタープライズ、xSP、公共機関の3つを挙げていますが、これらに対してどう取り組むのでしょう。

イーロップCOO
 3つのバランスが大事になります。xSPは従来当社が力を入れており、一番実績のあるところ。エンタープライズではHPNを望むハイエンド企業にフォーカスしていきます。規模も大きく強いネットワークを望むところも多いのです。また公共機関、これは教育機関や軍も含みますが、ここでは非常に高いセキュリティと性能を持ったネットワークのニーズが強い。これらそれぞれにバランスある形でかかわっていきたいと考えています。

 現状のビジネスでは、xSP向けとエンタープライズ向けを比べますと、xSP向けが2/3を占めるものの、伸びが速いのはエンタープライズ向けビジネスになっています。


―エンタープライズ向けではハイエンド市場を中心に展開するとのことですが、そうしたところには既存ソリューションが導入されているケースが多いのではないでしょうか。Juniperでは何を強みとして置き換えを推進するのですか?

イーロップCOO
 今あるシステムを買い替えさせるということではありません。ネットワークの需要は今も伸び続けているので、当社の製品であれ他社のそれであれ、数年前に購入した製品では容量が足りなくなっているはず。将来の需要にも耐え、ネットワークの管理を容易にし、高い品質を達成しつつ、運用管理コストを削減できる製品を顧客は求めています。当社ではこれに応えられるでしょう。

 このうち、管理コスト削減に対しては、共通のOSで運用できるという点は競合に対する大きな強みです。現時点では大部分、将来はすべての製品が共通のOSで稼働できるようになるので、ネットワークの管理が容易になります。トレーニングや日常の運営も簡素化できるでしょうね。また、同じデータセンターで何十種類のOSが稼働している大変さと比べてみてください。


―成長が期待できる領域として近年注目するベンダが増えている、SMB市場についてはどう見ていますか?

イーロップCOO
 繰り返しになりますが、当社が注力するのはHPN分野であり、ネットワークが一種のコモディティと化していく可能性のあるSMBは、もっとも注力する領域とは考えていません。エンタープライズ/キャリアの両市場はこれからも伸び続けるでしょうし、その各市場でシェアを伸ばすチャンスもあります。この両面でビジネスチャンスはたくさんあるでしょう。

 ただし、SMBでもネットワークがクリティカルな影響をビジネスに及ぼす顧客もいるので、そういったところでの採用は期待できます。また、SMB向けにサービスを提供するMSP(マネージドサービスプロバイダ)と組んで、MSP経由でSMBへサービスを提供するというアプローチはあるでしょう。

 何度も言いますが、チャレンジャー企業としては、とにかく“フォーカス”することがとても大事なのです。


―オープンであることも非常に重視されていますが、この面で進めている取り組みはありますか?

イーロップCOO
 いい例が、(米国時間5月21日に発表した、アクセス制御技術である)マイクロソフトのNAP(Network Access Protection)と当社のUAC(Unified Access Control)の統合を図った件です。マイクロソフトとその標準との相互運用性を実現することは、標準化の取り組みに貢献していく1つの例になります。当社は市場のチャレンジャーですから、そのままではデファクトスタンダードの製品にはなりません。さまざまな標準化にも取り組み、オープンな環境を作っていくことが非常に重要だと考えています。


―最後に、日本法人をどう見ているか教えてください。

イーロップCOO
 さまざまな意味で、世界のほかの拠点をけん引する役目を果たしています。先進的な日本市場は、今後の世界の動向をとらえる上で非常に重要であり、日本の動向やニーズをとらえる役割を広く果たしてきました。例えば、無線LAN、携帯電話、NGNの分野などがそれにあたります。また今後については、今まで強かったサービスプロバイダ向けビジネスだけでなく、エンタープライズ向けでも大きな実績をあげてくれることを期待しています。



URL
  ジュニパーネットワークス株式会社
  http://www.juniper.co.jp/


( 石井 一志 )
2007/05/25 00:00

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