キャリア網の整備で実績を持つ米Juniper Networks(以下、Juniper)は、マネージドサービス向けのビジネスでも実績を上げつつあるという。マネージドサービスとは、キャリアがサービスとして、セキュリティやネットワークをエンタープライズに提供するもの。これを提供する事業者をMSP(マネージドサービスプロバイダ)と呼んでいる。今回は、アジア太平洋地域(APAC)においてマネージドサービス分野のビジネスを担当する、Juniperのアジア太平洋地域キャリアパートナー担当ディレクター、ジェームズ・ウィルソン氏に話を聞いた。
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アジア太平洋地域キャリアパートナー担当ディレクター、ジェームズ・ウィルソン氏
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―担当されている、キャリアパートナービジネスの現状はいかがですか?
ウィルソン氏
私の部署はマネージドサービス用のソリューションを担当しているのですが、2004年末に2人体勢でスタートさせたものが、成長や組織的な再編によって、現在はAPAC全体で70名以上にまで大きくなりました。売り上げも当初100万ドル以下だったものが、2006年には1000万ドル超にまで順調に伸びていますし、パートナー数も順調に増加しています。なお、ビジネスの基盤を形成していただいたのがNTTコミュニケーションズで、密接な協力関係を築いてからすでに4年になります。
―マネージドサービス市場自体は伸びているのですか?
ウィルソン氏
すでに多くの拠点を持っている多国籍企業ではかなり伸びてきていますが、この流れとは別に、標準化されたセキュリティソリューションを中心として、中規模企業向けも急激に伸びてきたところです。
また、より広い市場への展開を促す要因、すなわち日韓を中心とした高速なアクセス技術の普及によって、より大きな市場の展望が見えてきているのです。高速で堅牢なアクセスがあれば、より高度なネットワーキングを提供できる状況が生まれるのですが、それを実現するためのスキルが企業内にあるとは限らないので、キャリアがマネージドサービスによって代わりを果たすニーズが生まれました。
―こうしてビジネスが伸びている理由はなんでしょう?
ウィルソン氏
まずなんといっても、キャリアに匹敵するほどの高性能な製品をエンタープライズが要求してくるようになったことが挙げられます。当社では、高い堅牢性や性能、スケーラビリティのある製品を長年キャリアに提供してきましたから、それと同様の哲学、深いコミットをもって企業にCPE(Customer Premises Equipment:顧客宅内機器)を提供できます。それをもって、キャリアは厳格なSLAを顧客に提供することが可能になっているのです。
―マネージドサービスにおけるJuniperの強みはどんなところでしょうか?
ウィルソン氏
ここで、マネージドサービスというのは1つの製品や技術ではなくビジネス領域であることに注目すべきでしょう。ポイントソリューションしか持っていないベンダでは、このビジネスを支える上で大きな力を発揮できないのです。当社では包括的なポートフォリオを備えており、堅牢なルーティングだけでなくセキュリティの新しい要件に耐える技術、セキュアで高速なアプリケーションを支える技術、データセンターの高速化を可能にする技術などを取りそろえています。包括的なポートフォリオにより、キャリアに大きな価値を提供できるのですから、これが大きな強みになっています。
―日本でのビジネス状況を教えてください。
ウィルソン氏
APACのキャリアパートナービジネスの中で、日本の売り上げは2年前は8割でしたが、今は4割ほどになっています。これは、日本の市場が縮んだのではなく、APACでのビジネスが大きく拡大したからです。まだ4割もの大きさを占めるのですから、このビジネスにとって日本がどれだけ重要な市場かが理解いただけると思います。私も時間の約半分を日本で過ごしているのです。
また、キャリア経由の再販ビジネスも重要です。より小規模な企業を中心に、比較的シンプルなサービスだけを必要とするお客様もいるので、機器の再販となることもありえるのです。逆にハイパフォーマンスなソリューションを必要とするより大きな顧客にとっては、マネージドサービスの魅力が大きいようです。いずれの売り上げも伸びていますよ。
加えるなら日本には、キャリアにおいてもエンタープライズにおいても、非常に高度な洗練された、特徴的なネットワークがありますが、当社は、こうした要求水準の高い、高度な環境で仕事をすることでさまざまなメリットを享受できました。自らのレベルアップと柔軟性を達成する必要があったのですが、ここで得た教訓は、広い市場へ展開する上でのすばらしい準備となりました。
―マネージドサービスビジネスについては、ベンダとキャリアの信頼感、また顧客とMSP事業者の信頼感が重要だと思いますが、それはクリアされていますか?
ウィルソン氏
その質問に対する答えはイエス、です。キャリア網を提供しているキャリアグレードと同等のCPEを提供していることが強みです。例えば競合ベンダと当社のルータ製品を比べた場合、基本ルーティングだけではいずれも同じ性能が出せますが、通常キャリアはそれでは不十分で、QoSやACL(アクセスコントロールリスト)、IDSなどの機能を利用します。そうすると、当社の製品は性能を維持できますが、競合製品では性能に影響が出てしまいます。価格の面でも、倍の性能を1/4の価格で提供できます。こうした面が評価されています。
また顧客とキャリア、MSP事業者との信頼関係は、日本でもAPACのほかの地域でも同じで、しっかりと醸成されています。特にマネージドサービスのビジネスは信頼がすべてといえるほどで、エンタープライズはともかく、小規模な顧客は適切なQoSを獲得し、なるべく早く安く、業務への影響なしに問題を解決してもらうことは重要です。キャリアにとって、信頼感は大きな強みといえます。
―日本以外の大きな市場はどこになりますか?
ウィルソン氏
もっとも成長しているのは、ニュージーランドとオーストラリアですね。日本の成功要因と似ていて、洗練されたキャリアとビジネスコミュニティがその支えとなっています。もっとも、ほかの地域でもビジネスは順調で、現在タイでも4つの通信事業者との案件が進んでいますし、前四半期にはベトナムVTNとの成約しました。財務省関連の4500サイトへの導入が予定されています。
ほかでは、中国やインドなども今後大きな成長が見込まれていますが、新興の段階です。MSPを実現するためには、まずネットワークのアクセス基盤が整備されるのが前提ですので、同様に伸びると思いますが、売り上げの割合は現在は小さいものとなっています。
■ URL
ジュニパーネットワークス株式会社
http://www.juniper.co.jp/
( 石井 一志 )
2007/05/28 11:30
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