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ノキア・シーメンス、日本での本格的な営業活動を開始-WiMAXとLTEを重点戦略製品に


日本・韓国市場担当責任者のマイケル・クーナー氏
 ノキア・シーメンス・ネットワークス株式会社(ノキア・シーメンス)は5月29日、日本での営業活動を本格的に開始したことを機に、日本で初めてとなる記者発表会を開催。同社の現況や日本市場向けのビジネス戦略などを説明するとともに、重点戦略製品となる次世代無線方式「WiMAX」および「LTE(Long Term Evolution:長期進化型)」にフォーカスした技術説明とデモを行った。

 Nokia Siemens Networksは、フィンランドNokiaと独Siemens AGの合弁会社としてスタートし、ワイヤレスネットワーク市場で2位、オペレータサービス市場で2位、有線ネットワークで3位と、グローバルの通信インフラ市場においてトップ3の地位を確保している。約150カ国に600社以上の顧客をもち、中でもトップ100社オペレータのうち75社を顧客として獲得。2006年度の売上高は171億ユーロを見込んでいる。

 すでに、グローバル市場では4月1日から営業活動を開始していたが、今回、日本市場でも本格的に営業展開できる体制が整ったという。記者発表会には、日本・韓国市場担当責任者に就任したマイケル・クーナー氏が出席し、日本の通信インフラ市場の現状について「日本市場は、世界の中でも非常にユニークな市場と見ている。まず、日本では政府が“u-Japan”という構想のもと、ハイエンドのICT(Information and Communication Technology)国を目指しており、その中で多くの消費者が有線、無線を問わずユビキタスな環境で、画像メールやムービーメール、ゲーム・音楽ダウンロードなどの広帯域幅を必要とするリッチなコンテンツを求めている」と分析。

 そして、「オペレータ側では、こうした消費者の要望に応え、定額・低料金で音楽やデータサービスを提供するために多大なコストをかけており、今後のコスト削減が大きな課題になっている。コスト削減に向けてオペレータは、グローバルスタンダードの製品を使い始めているが、そこには大容量かつ省スペースといった日本市場の特殊な条件があり、われわれベンダー側はこの要求を満たす製品を提供していく必要がある。さらに、営業費(Opex)の節約も、日本のオペレータにとって重要課題となっている」と指摘した。

 ノキア・シーメンスでは、通信インフラ領域において、無線アクセス、ブロードバンド・アクセス、サービス・コアおよびアプリケーション、IP/トランスポート、運用支援システムまでをカバーする約560もの製品・ソリューション群を用意しており、「日本市場のオペレータにとって強力なパートナーになれると確信している。そして、クリエイティブなビジネスモデルを使って、顧客と一緒に新しいビジネスチャンスを開発し、展開していきたい」と意欲を述べた。


WiMAXのend-to-endソリューション

WiMAX無線基地局(BTS)の製品戦略
 次に、小津泰史代表取締役が、次世代高速無線通信方式として注目されるWiMAXに関する同社の取り組みを説明した。現在、日本では総務省から70MHz(30MHz×2、10MHz×1)がWiMAX用として通信事業者に割り当てられるとの方針が公表されているが、「WiMAX製品は、当社の無線アクセス装置における重要戦略製品に位置づけられる。当社では、端末からコアネットワーク装置、さらにはネットワーク設計、据え付け、保守サポートまで含めたエンドトゥエンドのソリューションを提供できる体制を整えており、すでに通信事業者3社と契約を締結している」という。今年末から来年初めにかけて、同社がシステム提供する通信事業者がWiMAXの運用を開始する予定だ。

 記者発表会のデモでは、会場にWiMAX無線基地局(BTS)を設置し、ノートPCおよび2008年に発売が予定されているノキア製WiMAX端末の試作機を使った高速無線通信によるビデオオンデマンドの実演が行われた。


LTEによるHDTV伝送のデモ
 WiMAXの戦略説明に続いては、未来型通信ネットワークの「LTE」無線方式の取り組みについて説明が行われた。LTE無線方式の特徴は、複雑性を解消しIPベースのパケットオンリーのシンプルなアーキテクチャを提供することでTCOの削減を実現するとともに、1.4~20MHzの低い周波数帯域への拡張性により、制限のあるスペクトラムを柔軟に設定することが可能となる。

 これによって、オペレータ側では、コスト効率の良い定額制構造の導入が可能になるほか、総合サービスの継続としてレガシーシステムとの相互作用や、マルチメディアサービスにおけるスペクトラム効率およびデータ性能の大幅な向上を図ることができる。一方、エンドユーザーにとっては、リアルタイムかつ双方向のサービス、またシームレスな接続性を体験できるようになり、高速対応可能な広範囲のブロードバンドモビリティ、遅延の少ないスループットの向上、様々な装置およびサービスの提供といったメリットが得られるとしている。会場では、LTE無線方式によるHDTV伝送のデモが行われた。

 今後の展開としては、世界的オペレータが参加する次世代モバイルネットワークの共同事業体「NGMN」を中心に、主要ベンダーとともに来年からフィールドでのLTEトライアルを実施する計画。また、今年末までには、商用製品に向けてLTEの標準化が策定される見込みで、2009年から2010年をめどに商用製品をリリースする予定。


2008年発売予定のWiMAX端末試作機 小型化を実現したWiMAX無線基地局


URL
  Nokia Siemens Networks
  http://www.nokiasiemensnetworks.com/


( 唐沢 正和 )
2007/05/29 17:50

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