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Linux Foundation代表、「Windowsの成功モデルをLinuxでも活かす」

Microsoftの特許侵害の訴えについては「誰も気にしない」

Executive DirectorのJim Zemlin氏
 Linux標準化活動を推進する非営利のコンソーシアムであるThe Linux Foundation(以下、Linux Foundation)は5月30日、活動計画に関する説明会を開催。Linuxを利用することが有効であるという初期の伝導活動の段階から、デスクトップOSとしての利用など次のステップに入ったと説明した。

 Linux Foundationは、2007年2月にOpen Source Development Labs(OSDL)とFree Standards Group(FSG)が合併して生まれた非営利団体。Linuxの商標管理、知的財産権関連の法的保護、Linuxの標準化支援、プロモーションのほか、Linux開発者のLinus Torvalds氏の支援などを行っている。

 Linux FoundationのExecutive DirectorであるJim Zemlin氏は、「Linux関連市場は数十億ドルの規模にまで成長しており、今後デスクトップ向けでの利用も進むという調査結果も出ている。このように、オープンソースソフトウェア(OSS)で得られる効果の高さは多くの人に知られるようになった。第一段階である、Linuxの伝導作業、アーリーアダプタへの活動は終わった」と、Linuxの認知度とその有効性が一般的に理解されるようになったと説明。「これからは、LinuxとWindowsという2つのモデルに分かれていくことになる」と、Windowsと対等に比較・評価される状態になっていると述べた。

 具体的な活動方針としてZemlin氏は、「われわれはMicrosoftを悪というつもりはない。Windowsは成功したモデルであると評価しており、Linux Foundationとしても教訓として学んでいく」と、Windowsの成功モデルを参考にした取り組みを行うと説明。「具体的には、プロモーション、保護、標準化、の3つを中心に活動する」と述べた。

 プロモーションでは、Linux Foundationが中立的な立場となり、プロモーションの場を提供する。また、競合他社からの脅威が起きたときには、それに対抗した活動も行うと述べた。Zemlin氏は、「Windowsの成功モデルのうち、大量の広告宣伝によるプロモーションの効果は大きい。Linuxの普及に際しても、Linux Foundationがこうしたプロモーションの場を提供することで、支援していく」とした。

 保護については、Linus Torvalds氏の活動の場の確保や、知的財産権関連の保護、また競合他社からの訴訟への対応などを行う。「Windowsは、(特許侵害リスクなど)利用者に対して不安をかりたてる戦略を駆使して、市場を拡大した。こうしたリスクに対抗するためにも、すでにあるソフトウェアに対する特許をリフォームするなど、知的財産権の改善を図っていく」(Zemlin氏)と、法的保護に力を入れると述べた。


 標準化について、Zemlin氏は「Windowsは、MS-DOSのアプリケーションであっても、Windows Vistaで動作させることができる。これを実現するために、テスト環境の整備やツールの提供などを積極的に行っている。また、Windowsロゴプログラムのように、利用者にわかりやすい展開を行っている」と評価。「Linuxは各ディストリビュータが提供しており、細分化してしまうとサポートも困難になってしまう。UNIXがそうであったように、MicrosoftはLinuxが細分化することを期待しているだろう。Linux Foundationでは細分化しないよう、どのバージョンでも動作するよう、LSB(Linux Standard Base)などスタンダード作りを行っている。すでに主要ディストリビューションは認定済みで、Linux標準を表すロゴプログラムも行う予定」と、安心して利用できる環境整備を行っていると説明した。

 「Linuxの品質やパフォーマンスが認められることで、Linuxプラットフォームで利益をあげることができる。また、Linuxプラットフォームが普及することで、対応ソフトウェアも増えてきて、市場規模がさらに大きくなる。市場規模が大きくなれば、システムベンダーなど多くの企業にとってビジネスチャンスが広がる。その結果、さらに品質が向上する」と、Linuxの成功モデルが回り始めていると説明。「われわれはWindowsがなくなるなどとはいわないが、成長もさせない」と、Linuxによる新たな市場を成長させることで、Windowsの成長を止めると述べた。


 Microsoftの235件の特許をOSSが侵害しているとの報道について、Zemlin氏は「この件はだれも気にしていない。ユーザーに対して恐怖心をあおることが目的。これにより(Linuxの伸びが止まって、Windowsの売上が継続することで)ビジネスとして儲かるから行っただけだ」と述べ、問題にならないと一蹴した。



URL
  The Linux Foundation
  http://www.linux-foundation.org/

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( 福浦 一広 )
2007/05/30 18:50

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