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「2007年は富士通が変わる年に」、黒川社長が中期経営方針を打ち出す

子会社の架空循環取引にも言及

黒川博昭社長

2004~2006年度のセグメント別業績
 富士通株式会社は6月8日、経営方針説明会を開催。黒川博昭社長が、社長就任以来3年間の総括とともに、2009年度を最終年度とする3カ年の事業計画について説明した。

 まず、黒川社長は、2004年度から2006年度までの3カ年を総括し、「1900億円の営業利益目標に対して、2006年度は1820億円にとどまった。利益成長に課題は残るが、増収増益基調を継続している。競争激化をコストダウン、物量増加でカバーできる基礎体力がついている」とした。

 2004年度までの3カ年における価格低下による業績への影響は約6000億円規模。これを物量増加やコストダウン効果、リストラ効果および不採算事業の縮小によってカバーし、営業利益で317億円の増益としている。

 特に、サービス事業は、2006年度の営業利益が1561億円と、過去3年間で695億円増加したことに触れ、「富士通にとって、サービス事業をどこまで伸ばすことができるかが、今後においても重要なポイントになる」とした。

 これに対して、システムプラットフォームは、3年間で365億円減少しており、2006年度の営業利益はわずか75億円。デバイスソリューションも3年間で100億円の減少となり、「プラットフォーム、デバイスに課題を残す3年間となった」と総括。「企業体質はかなり改善できた。主力のサービスビジネスは着実な利益成長軌道に乗った。ただし、構造的な課題にはさらなる踏み込みが必要」としている。


2007~2009年度の新中期目標

人を主役としたプロセスとITの継続的改善によって顧客革新を起こす、フィールド・イノベーション企業を目指すという
 一方、新中期経営計画では、2006年度の連結営業利益率3.6%から、2009年度には5%を超える目標を掲げるとともに、海外売上高比率を、現在の36%から40%を超えるところにまで高める方針を打ち出した。

 「テクノロジーソリューション分野は、サービス主導で利益を牽引し、7%を超える営業利益率を目指す。一方で、売り上げ規模が大きいものの、営業利益率が低いHDD、デバイスの成長力を、いかに利益に結びつけるか、また、システムプラットフォームにおける売り上げ、収益をいかに改善するかが、今後3年間の課題になる」とした。

 また、富士通では、過去3年間にわたって、リストラを前提とした構造改革を避けてきた経緯があったが、「今後は、強いところをさらに強くすることを前提に、ポジティブな姿勢で全社的な構造改革に着手する」として、既存組織の構造改革などにも取り組んでいく姿勢を見せた。

 新中期経営計画の4つのチャレンジとして、「経営力を革新する」、「商品力を革新する」、「職場力を革新する」、「人間力を革新する」を掲げ、ITソリューションを提供する企業から、ビジネスソリューションを提供する企業への転換を図るという。

 「フィールド・イノベーション企業として、人を主役としたプロセスとITの継続的改善によって顧客革新を起こす。フィールド・イノベータと呼ばれる、業務目線で顧客と語り、企業の問題点解決を図る人材を、まずは400人育成する」とした。


世界地域別・事業別の市場成長率

2007年度の全社業績目標

2007年度のセグメント別営業利益目標
 また、グローバルレベルのプレーヤーになる姿勢を示し、「日本のIT市場は、今後、低成長で推移することから、市場の奪い合いになる。これに対して、市場規模が大きい米国、欧州市場においてはサービス化が進展し、当社にとってもビジネスチャンスがある。また、BRICsは市場規模は小さいが、低い普及率を背景に高成長が期待される。グローバルに戦えるビジネス能力の拡大を目指す」として、SAPやMicrosoftとのグローバルアライアンスの拡大、インドにおける富士通グループとしてのオフショアセンターの設立、コンピテンシーセンターのグローバル展開、富士通サービスによるTRIOLEのグローバル戦略などを推進する考えだ。

 一方、新中期経営計画の初年度となる2007年度の事業計画としては、売上高5兆4000億円、営業利益1900億円、経常利益1500億円、純利益で750億円を掲げ、「富士通が変わる年になる。中期目標の達成に向けて、営業利益1900億円をなんとしてでも達成する」と意欲を見せた。

 テクノロジーソリューション分野においては、システムプラットフォーム事業の健全化、テレコムビジネスの構造改革、サービスビジネスの飛躍の3点をあげて、売上高は前年比4.5%増の3兆3000億円、営業利益は13.1%増の1850億円、営業利益率5.6%を目指す。

 デバイスソリューションでは、フロントラインの改革による営業力強化、90nmの先端ビジネス拡大と収益確保、基盤ビジネス能力の拡充による収益力強化を重点施策に位置づけ、売上高で7.5%増の8200億円、営業利益は57.9%増の300億円、営業利益率3.7%を掲げた。

 ユビキタスプロダクトソリューションは、HDDにおける高品質ブランドの維持と商品力の強化による成長持続を、PCでは使いやすさとクオリテイの追求を、また、携帯電話ではラインアップの拡充とビジネスインフラとしての可能性追求をポイントとして、売上高で7.3%増の1兆2000億円、営業利益で27.9%減の300億円、営業利益率で2.5%とした。

 「ユビキタスプロダクトソリューションの営業利益率は低いが、ともかく必死に戦って、生き抜くことを目指す。PC事業においては、高付加価値製品での収益確保と、低価格製品によるボリューム確保、海外事業の拡大、PCと携帯電話の融合を見据えた商品開発の推進を目指す」としている。

 同社では、2007年度に、51項目にのぼる改革目標を設定しており、「富士通は挑戦者だと思っている。戦う意識をなくすと、その途端に終わると考えている」として、計画達成と構造改革に挑む姿勢を見せた。


 なお、経営方針説明の冒頭、黒川社長は、約5分間に渡り、子会社である富士通関西システムズの架空循環取引について説明。「大変残念なこと。社長として責任を感じている。現在調査中であるが、調査結果は公にして、改めて判断を仰ぎたい。私は社長就任以来、FIJITSU WAYを打ち出し、行動規範については、しつこいぐらいに社内に言ってきた。起こしたことは問題だが、なぜ起こしたのか、なぜ社内の監査に引っかからなかったのか、なぜシステム的にチェックできなかったのかといった、本質的な部分を究明し、同じことが起こらないようにしたい」とした。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/


( 大河原 克行 )
2007/06/08 17:57

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