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札幌市など、IT人材育成のため拠点を開設

マイクロソフトの協力で、研究開発施設も提供

左より、札幌市高度ICT人材育成・活用事業シニア・アドバイザーの赤羽幸雄氏、豆蔵の羽生田栄一取締役会長、総務省情報通信政策局・高田義久課長補佐、札幌市経済局産業振興部IT推進担当係長の渡邉昌輝氏、札幌市経済局産業振興部産業企画課・本間敬規課長、マイクロソフトの最高技術責任者の加治佐俊一氏、マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部ビジネスインキュベーション推進部・長井伸明部長
 札幌市とさっぽろ産業振興財団は6月12日、マイクロソフト株式会社の協力のもと、「札幌イノベーションセンター」を、札幌市エレクトロニクスセンター内に、7月2日に開設すると発表した。

 地域のIT産業を活性化を目的に、IT人材の育成、ソフトウェア開発会社に対する研究開発施設の提供などを行うもので、「札幌市では、2015年度までに、3万人の技術者、600社のIT企業、売上高1兆円の産業創出を目指し、自治体主導による企業支援事業を展開している。また、今後3年間で、ITアーキテクトなど高度情報通信人材を300人育成することを目指している。今回の札幌イノベーションセンターは、札幌市内における技術者育成にも大きな効果がある。他地域に比べて、IT事業ポテンシャルがあがることになる」(札幌市経済局産業振興部産業企画課・本間敬規課長)としている。

 12日午前に、札幌市役所本庁舎で行われた会見では、札幌市経済局産業振興部産業企画課・本間敬規課長やマイクロソフトの最高技術責任者の加治佐俊一氏のほか、総務省情報通信政策局・高田義久課長補佐、札幌市高度ICT人材育成・活用事業シニア・アドバイザーの赤羽幸雄氏などが出席。

 「マイクロソフトの人材育成ノウハウの活用や、新たな雇用創出に加えて、検証ファシリティを持つことで、地場のソフトウェア開発会社が、自社のソフトウェアを持ち込んで最新のプラットフォーム上で検証テストや実証実験を実施することが可能になる。また、札幌イノベーションセンターで生まれた新たなソリューションが、マイクロソフトのグローバルに広がるパートナーシップを活用して、マーケティング支援効果にもつながることを期待したい」(札幌市経済局産業振興部IT推進担当係長の渡邉昌輝氏)としている。

 マイクロソフトの加治佐俊一最高技術責任者は、「札幌市は具体的な数値目標を掲げ、IT利活用と人材育成に取り組んでいるのはすばらしいこと。マイクロソフトは、2005年からPLAN-Jを掲げ、日本市場における投資、産官学連携の強化、イノベーションの推進という3つのポイントに取り組み、その一環として2006年11月に調布にマイクロソフトイノベーションセンターを開設した。さっぽろ産業振興財団と相互にリソースを出し合い、協力することで、IT産業の下請け的構造からの脱却や、ITアーキテクトの育成を推進したい」とした。


札幌エレクトロニクスセンター内に設置

札幌イノベーションセンターの見取り図
 札幌イノベーションセンターは、札幌テクノパーク内の札幌エレクトロニクスセンター1階部分に設置する。札幌テクノパークは、1986年に札幌市厚別区にオープン。現在40社2500人のIT関連企業が入居する。

 札幌イノベーションセンターは、2つの部屋を用意。27平方メートルで、4台のクライアントPCを設置、8人程度で会議ができる部屋と、50平方メートル、8台のクライアントPCを設置、12人程度で会議ができる部屋がある。

 クライアントPCはすべて、東京・調布のマイクロソフトイノベーションセンターとネットワークで接続され、同センターと同等の環境が利用できる。各部屋は、一日単位での利用が可能。部屋の利用料は無料となっている。申し込み方法や利用の詳細については、さっぽろ産業振興財団のホームページに近日中に掲載する予定。札幌市に拠点を持つIT関連企業が利用できる。

 さっぽろ産業振興財団では、今後の利用状況を見て、施設の拡大を検討していく可能性もあるとしている。

 また、総務省は、昨今の情報通信分野におけるITアーキテクトの人材不足を払しょくするためことを目的に、情報通信分野の高等教育機関等で活用可能なITアーキテクトを育成するPBL(Project Based Learning)教材を開発したが、この開発に参加した株式会社豆蔵が、札幌イノベーションセンターの運営にも参画。同教材を利用した高度情報通信人材の育成が、同センターでも行われる。

 PBLは、学習者に実際のプロジェクトや擬似的なプロジェクトを体験させることにより、課題解決の手法や能力を修得させる育成手法であり、「座学だけでなく、実践的な手法を導入することで、より効果の高い人材育成が可能になる」(豆蔵の羽生田栄一取締役会長)という。

 総務省情報通信政策局・高田義久課長補佐は、「高度なIT人材は、日本国内で78万人が必要だとされているが、現時点では43万人しかおらず、あと35万人不足している。2006年1月に政府が発表したIT新改革戦略でも、世界に通用する高度IT人材の育成が盛り込まれている。とくに、CIO、プロダクトマネジメント、ITアーキテクトの人材が足りないとされており、こうした人材育成のためにPBL教材を幅広く活用してもらいたい」とした。


 一方、札幌イノベーションセンターの開設にあわわせて、6月12日午後、マイクロソフト北海道支店において、センター開設記念セミナーを開催した。

 記念パネルディスカッションでは、「地方におけるITアーキテクトの必要性と役割」をテーマに、総務省情報通信政策局・高田義久課長補佐、札幌市高度ICT人材育成・活用事業シニア・アドバイザーの赤羽幸雄氏、豆蔵の羽生田栄一取締役会長、マイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏がパネラーとして参加。マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部ビジネスインキュベーション推進部・長井伸明部長をモデレーターに活発な議論が交わされた。



URL
  札幌市
  http://www.city.sapporo.jp/city/
  財団法人さっぽろ産業振興財団
  http://www.sec.or.jp/top/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3095

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( 大河原 克行 )
2007/06/12 16:50

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