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「UTM-1で中堅市場を開拓、xSPとのマネージドビジネスにも期待」-Check Pointウォルフ氏


 チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社は、2007年2月にUTM(統合脅威管理)アプライアンス「UTM-1」を発表した。この製品は、同社の主力製品である「VPN-1 UTM」が持つ機能をアプライアンス化し、中堅・中小企業でも簡単に導入できるようにしたもの。ソフトウェア製品を中心に提供してきた同社が提供するアプライアンス製品ということで、市場からは大きな反響があった。今回はこの製品について、イスラエルCheck Point Software Technologies(以下、Check Point)のプロダクトマーケティングマネージャー、エリック・ウォルフ氏に話を聞いた。


Check Pointのプロダクトマーケティングマネージャー、エリック・ウォルフ氏
―まず、これまでソフトウェアベースで製品を提供してきたCheck Pointがアプライアンスを提供することの意義を説明してください。

ウォルフ氏
 当社では、ConnectraやInterSpect、Safe@OfficeやVPN-1 Edgeといったアプライアンスを長い間提供してきています。しかし確かに、コア製品分野でハードウェア製品を出すのは、大きな一歩でした。かなり用意周到に準備をした結果、成功を納めることができたのは喜ばしいことです。既存アカウントがUTM-1を選択してくれたことで、大企業向けで成功を遂げましたし、中規模企業へも浸透していますよ。


―大企業にも受け入れられているとのことですが、これまでその市場に対してアプライアンス製品を提供してきたNokiaとのアライアンスは縮小されてしまうのでしょうか?

ウォルフ氏
 いえ、Nokiaとのパートナーシップは大変強力なもので、さらに強化されていきます。当社はハイエンド向け、つまりエンタープライズ市場で地位を勝ち取れるように努力してきましたし、Nokiaも素晴らしい価値を提供してきました。その結果、お互いの市場でなかったところにも浸透してきています。今回当社では、中規模市場への浸透をUTM-1で狙いますが、それがNokiaとのアライアンスと対立するということはありません。同じことが、ほかのハードウェアパートナーにとってもいえます。


―その中規模市場でのCheck Pointの認知度は、エンタープライズ市場と比べて今ひとつだと思います。ネームバリュー拡大のためのブランディング戦略はどうでしょう?

ウォルフ氏
 もちろん、こうした市場で、当社がセキュリティのリーディングカンパニーであることを認知してもらうために、グローバルレベルで努力をしています。ただ現在は、中規模企業であっても、Fortune 100と同じようなセキュリティが必要とされているので、ブランドの認知度を高めることは困難ではないと考えています。


UTM-1
―UTM-1はさまざまなセキュリティ機能を持っていますが、どの機能が中規模市場で一番求められるのでしょうか?

ウォルフ氏
 どれか1つというよりも、この市場のユーザーが一番満足しているのは「統合」ということです。すべてのものが1つのボックスに入っていれば、価格交渉も1回で済みますし、サポート契約も複数結ぶ必要がありません。すべて、1社から提供される点が歓迎されていますよ。


―では、競合する製品と比べてどこが評価されているのでしょうか?

ウォルフ氏
 UTMの世界に洗練されたセキュリティを提供できる点が挙げられます。例えば、顧客はWebサイトを持っているでしょうけれど、UTM-1ではWAF(Webアプリケーションファイアウォール)の機能を持っていますので、Webサイトを保護するのに役に立ちます。また、製品のどの部分でも安心してアップグレードができるのも強みです。(P2Pソフトの)Kazaaの新版が発見された場合、単にシグネチャだけでなく全体のプロトコルやデコーダのアップデートが必要になりますが、これにも対応できます。

 もう1つ、検疫機能も特徴的です。UTM-1のユーザーは、パーソナルファイアウォールソフト「Integrity」との連携により、統合されたエンドポイントのセキュリティ状態を、ゲートウェイでチェックすることができるのです。


―逆に、現時点でUTM-1に足りないと思う部分や、今後必要になってくると思われる部分を教えてください。

ウォルフ氏
 当社がまず努力してるのは、すべてのインターフェイスの簡素化です。また、言語サポートでも努力しており、言語に依存しない形でできるようなフィルタリングエンジンについて取り組んでいます。これは特に、日本の顧客に効果的でしょう。


―xSPやキャリアを通じて顧客にサービスを提供する、マネージドサービスビジネスも拡大が見込まれています。UTM-1もこのビジネスに利用できるのでしょうか?

ウォルフ氏
 UTM-1は、キャリアのポートフォリオに完璧にフィットするように設計されています。セキュリティポイントとしてキャリアの顧客のセキュリティ改善にも使えますし、機能のアップグレードやレポーティング機能などを顧客に簡単に提供できるのです。現在、ワールドワイドで多くのxSPと、彼らのポートフォリオに組み込んでもらえるように協議しているところです。

 さらに大変強力なツールをxSP/キャリア向けに提供しています。これによって大変多くの顧客の管理を行えますし、それぞれのデータを分けてしっかり保存、確保ができるのでユーザーを混同することはありません。また、1クリックで1万システムがバージョンアップできるようになっているのも、特筆できることでしょう。このようなシステムがほかにあるでしょうか?


―一般に、VPN製品は設定・管理が難しいという印象があります。市場拡大のためには、簡単な導入が可能な点をもっとアピールしていく必要があると思いますが?

ウォルフ氏
 おっしゃるとおり、大変簡素化された現在のVPNのコンフィグレーションが導入される前は、VPNは専門家が取り扱うものと考えられていました。しかしこういった簡素化された製品が投入された後は、ほんの数分でできるようになっています。こういった改善や変化を、すべてのセキュリティに対して提供していきたいですね。

 当社でも設定の簡素化のために努力をしていまして、ユーザーにおける作業を簡素化できるようにしています。また、xSPに強力なツールを提供しており、それによって最終的にユーザーが簡単に使えるようにもしています。あわせて、さまざまなドキュメントを順次提供していますが、そうしたドキュメントやWebサイトを日本語に翻訳することも行いました。英語以外に翻訳されているのは唯一日本語だけであり、それだけ当社では日本に焦点を合わせているといえます。


―最後に、UTM-1について何か興味深い事例があれば教えてください。

ウォルフ氏
 米国の大学での例ですが、まったくセキュリティのない状況だったところを、UTM-1を用いてすべての学部を管理できるようにした、というものがあります。実はこの大学での導入で一番評価されたのは、セキュリティの機能ではないのです。

 彼らが興味を示したのは、セキュリティゲートウェイが何をブロックしているか、というレポート機能でした。この機能によって、セキュリティレベルが向上した状況が明確に理解されまして、なぜセキュリティが必要かということを実感されたそうです。

 これはほかの顧客にとっても重要なことです。セキュリティは、攻撃も何もなければそれでいいということなのですが、何も起こらないように見える背後で、実はこれだけの攻撃がきているのだ、ということがレポートによって認識できたのですね。



URL
  チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社
  http://www.checkpoint.co.jp/

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  ・ チェック・ポイント、中堅企業向けUTMアプライアンス-“大企業と同じセキュリティ基盤を実現”(2007/02/06)


( 石井 一志 )
2007/06/13 11:40

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