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ニュージーランドICT産業が日本市場向け戦略を本格化


ニュージーランド貿易経済促進庁 オークランド事務所 ICT部門マネージャー エリカ・ゴッイ氏(中央)、オリオン・ヘルス社 アジア地域事業開発部長 ハーリッシュ・パンチャル氏(左)、マキシマム・アベイラビリティー社 アジア太平洋地域担当副社長 半田和也氏(右)
 ニュージーランドのICT(情報通信技術)関連企業が、同国挙げての積極的な支援のもとビジネス活動を活発化させてきている。

 いまニュージーランドには8000以上のICT関連企業があるが、1994年度から2004年度までの間、ICT産業市場は対前年度比おおむね20%強の伸張を続けている。また2006年度のICT産業の総売上げ高は、同国GDPの約6%にあたる176億NZドル(約1.7兆円)を占め、なかでも輸出は16億NZドルで約10%、これは2005年度と比較すると45%増という好調ぶりだ。

 こんな中、日本のICT産業への理解を深めかつ日本市場でのビジネスチャンス創出に向けて、ニュージーランド貿易経済促進庁のICT部門から関連企業9社で結成された日本派遣団が来日した。

 ニュージーランド貿易経済促進庁は、同国経済開発庁の枠組みの中で、経済基盤堅牢化および事業拡大化などの政策を促進する政府機関。オークランド事務所ICT部門マネージャーのエリカ・ゴッイ氏は「ニュージーランドICT産業の最大の強みは、技術に対する創造性と最先端分野への展開を重視している点」を強調する。政府も、こうして誕生させた新技術の革新的な応用を含めて推進しているので、「技術自体もスピーディな立ち上がりをみせる」という。加えて「ビジネス自体もオープンに取り組むので、海外企業もニュージーランド企業とはつきあいやすいはず」とアピールしている。現に同国と日本の場合、年間貿易総額は5380億円を超えている。


 このたびの日本派遣団来日の直接的なキッカケは、2005年の愛知万博に始まる。愛知万博にはニュージーランドも参加したことで、両国間の事業関係はより緊密化し、貿易・経済促進のための協力枠組み体制が推進されることとなった。同国ICT産業の中で現在重要な役割を果たしているのは、医療をはじめ交通ロジスティックス、通信&ワイヤレス、デジタルコンテンツ、Eペイメント(電子的な支払い)の5本柱で、とくに医療関係は急速に伸張しつつあるIT分野という。

 来日した企業のうち、オリオン・ヘルス社もニュージーランドで医療関係ソフトの最大手企業といわれ、オーストラリア-ニュージーランド地域で輸出に大きく貢献、輸出大賞まで受賞した。同社の「Rhapsody(ラプソディ)」は医療機関向け統合化エンジンで、たとえば病院のラボや薬剤局などにおける異なるベンダのアプリケーションによるシステム使用時でも、既存資産のリプレースなしで統合化でき、セキュアなメッセージ交換環境を実現可能というものだ。これにより、患者の医療情報を共有化できるので異なる医療機関でも治療を容易に受けられることになる。

 実は、2000年度に日本で26県にわたる医療機関における情報共有環境を構築する試みがあり、ここでの技術EHR(Electronics Health Record)においてRhapsodyが使われた。これは、患者情報を26県いずれの医療機関でもWeb上で共有することをめざすものであったが、そのときは資金面等の問題で一時は頓挫せざるをえなかったが、いまNPOを中心に再び盛り盛り上がりを見せ始めているという。

 オリオン・ヘルス社はいま人材育成にも注力しており、奨学金制度のもと優秀な学生を人材として確保しようとする姿勢にも余念がない。同社アジア地域事業開発部長のハーリッシュ・パンチャル氏は、「EHRを中心にいまこの業界には大きなうねりが起こっており、医療情報共有化は不可欠といえる。当社は米、カナダ、スペイン、イギリス、オーストラリアなどで培った経験を生かして、日本の医療産業のプロの人たちと将来をみすえた連携をし多様なニーズに向け貢献していきたい」と意欲を示す。


 また、マキシマム・アベイラビリティー社は、IBMのSystem iサーバー(旧AS400)向けに、障害・災害対策あるいは事業継続向けソリューションをもたらすソフトウェア「noMAX」を提供している。これは地震や水害、火災あるいはシステムトラブルなどでいわば本番機がダウンしても、オンライン/リアルタイムで常時バックアップし事業を継続させるというものだ。すでに販売して6年になるが、30カ国以上で銀行や保険など金融関係を中心に、導入も数百に及んでいる。

 日本では日本語化対応のために参入して1年程度しか経っていないが、それでも製造・技術系を中心に約30社に導入されているという。同社アジア太平洋地域担当副社長の半田和也氏は、「ミラーリング速度、つまりリプリケーションが他ベンダのものと比較して倍以上速い点がユーザーの方から好評。また製品名noMAXは上限がないスケーラビリティを表しこの点も好評。障害・災害対策はテープやディスクのみのバックアップだけでは、信頼性や日々のメンテナンスを考えると十分とはいえない。ソフトウェアによるオンラインリアルタイムのバックアップ体制が重要」とアピールする。

 いまPC系サーバーへのニーズが高いと思われがちであるが「IBMのAS400は1988年から75万台出荷、いまでも世界では45万台以上稼働中であり、うち10%が日本で稼働している。この環境で障害・災害対策しているユーザは300社程度にすぎない。つまり残りを考えても、あるいは来年からの日本版SOX法をみてもビジネスチャンスは十分ある」(半田氏)と期待する。


 いまニュージーランドでは、「NEW ZEALAND NEW THINKING」ブランドを推進中だ。これは国をあげて、まさにゴッイ氏も指摘している考え方を擁護していく、また最先端技術を育成していく、という世界に向けたメッセージである。同時に好調な輸出をさらに促進させ経済拡大を図る「EXPORT2007」構想も推進中だ。

 キウイや羊などで知られるニュージーランドだが、マリンスポーツは20分移動するだけで、またウインタースポーツは2時間移動するだけで楽しめるという便利さ。文化や医療も充実、政府も自由なライフスタイルの選択肢を与えるなど、多くの人たちが生活のしやすさを語る。だが、ここへきてICT産業振興に向け国を挙げての取組みが本格化、今後、2012年度までに、GDPに占めるICT産業の比率を10%にまで高めることを国家目標においたところだ。



( 真実井 宣崇 )
2007/07/20 11:00

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