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SAP、エンタープライズ2.0への取り組みを説明

「SAP NetWeaver Enterprise Search」の概要も明らかに

 SAPジャパン株式会社は7月23日、「企業ビジネスユーザを支援するSAPの取り組み~SAP Solutions for Information Worker~」と題したプレスセミナーを開催。同社のエンタープライズ2.0への取り組み、および正式発表前の製品「SAP NetWeaver Enterprise Search」の概要について説明した。


SAP AG ソリューションマーケティング シニアディレクターのバイロン・バンクス氏
 まず、エンタープライズ2.0への取り組みについて、SAP AG ソリューションマーケティング シニアディレクターのバイロン・バンクス氏がプレゼンテーションを行った。バンクス氏は、「Web 2.0は企業にも少しずつ浸透しつつある。代表的なWeb 2.0テクノロジーとしては、ブログ、RSS、Wikiなどがあるが、それぞれ企業の個別部門レベルから導入が始まっているのが現状。ただ、部門ごとにバラバラで導入されたWeb 2.0は、個人にはメリットをもたらすが、企業全体からみるとコンプライアンスやセキュリティのリスクを増加させるという課題を抱えている」と指摘する。

 そして、「柔軟性に富み、簡単に使えるWeb 2.0テクノロジーを企業のプロセスに組み込みながら、コンプライアンス、セキュリティ、ガバメントにも適合させていくことが、当社の展開するエンタープライズ2.0のビジョンである」(バンクス氏)とし、エンタープライズ2.0によって、Web 2.0を企業システムの一部として統合していく方針を示した。

 エンタープライズ2.0で実現するビジネスの拡張性としては、「既存プロセスの拡張」と「企業マッシュアップの作成」の2点を挙げた。「既存プロセスの拡張」では、既存資産の活用を促進するWeb 2.0テクノロジーとして、さまざまな企業情報を小さなデスクトップツールに表示できる「エンタープライズウィジット」と、携帯電話やPDAから企業情報にアクセスできる「プロジェクトデルタ」を紹介。一方、「企業マッシュアップの作成」については、エンタープライズSOAによって、企業におけるWebベースのデータとプロセスのマッシュアップが可能となり、企業変革をサポートするとした。

 さらに、次のエンタープライズ2.1で実現するビジネス拡張性として、セキュリティとコンプライアンスに準拠し、即座に新しいプロセスを実行可能にする「Colaborative Portal」を説明。このポータル機能では、Wiki、ブログ、RSSなどとのコラボレーションによって、社員の知識を企業全体で利用することができ、ダイナミックに組立可能な作業環境を提供するという。

 バンクス氏は、「こうしたエンタープライズ2.0への取り組みによって、従来までのように個人だけで情報収集するのではなく、集団の知識・情報を利用できるようになる。また、標準化データと非標準化データ間のギャップを埋めることでワークパターンを拡張できる。そして、自分で情報にアクセスして情報を組み立て、活用するためのツールの提供により、自給自足率の向上を図ることも可能になる」と、エンタープライズ2.0がもたらす企業へのメリットをまとめた。


企業に浸透しつつあるWeb 2.0 Enterprise-Class Web 2.0によるビジネスの拡張 生産性と意思決定を向上させるEnterprise-Class Web 2.0

SAP AG エンタープライズサーチ シニアディレクターのバラムルガン・カリア氏
 続いて、「SAP NetWeaver Enterprise Search」の概要を、SAP AG エンタープライズサーチ シニアディレクターのバラムルガン・カリア氏が説明した。

 「SAP NetWeaver」は、企業ポータル、ナレッジマネジメント、ユーザーコラボレーション、モバイル活用をサポートし、重要アプリケーションやデータへのパーソナライズされたアクセスを可能にすることで、IT組織におけるユーザーやグループの生産性向上を実現するソリューション。今回のセミナーで紹介した「SAP NetWeaver Enterprise Search」は、この「SAP NetWeaver」で展開されるSAPビジネスアプリケーションをはじめ、ファイル、Webサーバー、サードパーティビジネスアプリケーション、サードパーティ検索エンジンまでを横断的に検索できるようにするソリューション。

 カリア氏は、「現在、企業内における情報アクセスはいくつかの問題点を抱えている。必要な情報を見つけ出すために時間がかかる、保存場所がわからない、システムの使い方がよくわからない、分析機能がビジネスプロセスとつながっていないなど、情報へのアクセスが非効率になっているのが現状で、ユーザーは情報検索のために1日の40%近くの時間を浪費しているとの調査結果もある。また、経営層からみると、企業の情報資産がフルに活用されず、人件費の10%を無駄な検索に費やしているというデータもあるほどだ」と、企業における情報検索の効率化の重要性を指摘。

 こうしたなかで、ユーザーからは、企業の情報やプロセスに直感的にアクセスできるシンプルで簡単な操作性、応答時間の速さ、検索結果の質の高さ、また経営層からは、安全な情報へのアクセス、既存システムとの統合、ユーザー権限に基づく検索結果の絞り込みといった機能が、企業情報の検索に求められているという。


 「SAP NetWeaver Enterprise Searchは、これらのニーズを満たす検索ソリューションを実現するため、当社がこれまで培ってきたビジネスプロセスや顧客へのノウハウを生かし、SAPと外部システムへの検索結果を一覧にまとめて表示することを可能にした。さらに、SAPビジネスアプリケーションのセキュリティモデルを活用することで、必要とする情報に安全、かつ迅速、簡単にアクセスすることができるようになる。これにより、ユーザーは意思決定を改善し、時間の節約を図ることができるとともに、経営層にとってはセキュリティと情報活用を強化できるメリットがある」(カリア氏)と説明する。

 「SAP NetWeaver Enterprise Search」は、プラグイン型のアプライアンスとして提供され、64ビットIntelプラットフォーム用にチューニングされた検索エンジン(TREX)とインメモリDBを使用することで、検索時の即時応答を可能にした。また、すぐに使えるハードウェア、機器セットアップにより、手ごろな価格を実現し、持続可能なコストでパフォーマンスと俊敏性を両立。ブレードアーキテクチャの採用によるスケーラビリティの高さも特徴となっている。

 なお、同製品は、現在パイロットプロジェクトの段階で、8月に英語版が制限出荷される予定。一般出荷は、2008年第2四半期を予定している。日本語対応については、検索機能はすでに日本語にも対応しているが、ユーザーインターフェイス部分の日本語サポートは一般出荷と同時期になる見込み。


アプリケーションを横断検索できるSAP NetWeaver Enterprise Search SAP NetWeaverの活用イメージ SAP NetWeaver Enterprise Searchのロードマップ


URL
  SAPジャパン株式会社
  http://www.sap.com/japan/


( 唐沢 正和 )
2007/07/24 00:00

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