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米Adobeナラヤン社長が事業戦略を説明-「SaaS化の準備はできている」


米Adobe Systems社長兼COOのシャンタヌ・ナラヤン氏

Adobe Device Central

Flash対応デバイスの出荷台数
 アドビシステムズ株式会社は7月27日、米Adobe Systems社長兼COOのシャンタヌ・ナラヤン氏の来日に合わせて、同社の事業戦略説明会を開催した。説明会では、Creative Suiteなどの主力製品のほか、開発中のAIR(Adobe Integrated Runtime)などの新技術についても説明が行われた。

 ナラヤン氏は、Webサイトやデジタルコンテンツの増大、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話の成長など、同社を取り巻く市場環境が追い風となっていると強調。印刷物からWeb、ビデオ、モバイルまでをカバーするクリエイター向けのスイート製品「Adobe Creative Suite 3(CS3)」日本語版を発売するなど、同社製品へのニーズもさらに高まっているという。

 「今回のCS3は、マクロメディア製品を統合した初のスイート。日本では最近出荷されたが、米国では4月より出荷しており、ユーザーの反応もいい。今回のCS3では、モバイルコンテンツ開発環境として、Device Centralを用意しており、これを利用すれば、何百ものデバイス上で確認することなく、Device Central上でコンテンツを容易に確認できる」(ナラヤン氏)と、CS3が幅広い分野に対応している点をアピールした。

 モバイル環境に対しては、Flash Liteが急速に普及している点を紹介。ナラヤン氏は、「Adobeとしては、PC以外のデバイス環境において、ツールの提供、クライアント製品のライセンス、サービス提供の3つのビジネスチャンスがあると見ている。Flash Liteはその中核製品で、携帯電話だけでなく、セットトップボックスやPS3、カーナビなどでも利用されている」と、Flash Liteが事実上の業界標準となっていると述べた。

 ナレッジワーカー向けの製品としては、AcrobatおよびAcrobat Connectにより効率的なコミュニケーション環境を提供していると説明。「ビジネスにおいて、ペーパーレス化は進んでおらず、ドキュメントは重要な存在となっている。PDFはドキュメントのアーカイブの標準となっており、これまでにAcrobatを2500万本出荷しているが、まだまだ市場を拡大する余地があるとみている」と、Acrobatのさらなる普及を目指すとした。また、Acrobatが非同期のコミュニケーション環境とすれば、Acrobat Connectは同期コミュニケーション環境として有効と紹介。「リアルタイム会議に関しては、Acrobat Connecgtで実現できる。Adobeは、同期・非同期ともに製品を提供している」と、ナレッジワーカーの効率化という面でも有利な立場にあるとした。


 エンタープライズ分野に関しては、「Adobeとしては、人を中心としたビジネスプロセスの合理化を実現することを目的としている。企業は何十億もかけてバックオフィスの効率化を実現しているが、ナレッジワーカーの立場から見た場合、そうしたシステムを利用するにはまだまだギャップがあり、さらなる改善が必要だ」と述べ、こうしたギャップを解消するソリューションを持っているのがAdobeであるとした。


AIRの特長
 開発中のAIRに関しては、「Webブラウザの制約を解き放つのがAIRで、Webとデスクトップの長所を融合したプラットフォーム。HTML、Ajax、Flash、PDFのほか、オーディオやビデオに対応している。また、Windowsだけでなく、Mac OSやLinux、さらには非PCデバイスでも動作するクロスプラットフォームでもある。すでに何百ものアプリケーションが開発されており、今年後半にも公開を予定しているAdobe Media Playerも、このAIRを基盤として開発している」(ナラヤン氏)と、同社にとって重要なプラットフォーム製品であるとした。発表会では、AIRを利用したアプリケーションなどのデモンストレーションも行われ、AIRが実現するさまざまな可能性を示して見せた。


株式会社Site4Dが開発した、AIRを用いて作成されたアプリケーション。ひとつずつに異なった情報を表示したり、スキンを変えたりすることができる 同じ仕組みを利用して、Salesforceのデータを表示した例。ビジネスアプリケーションでも利用が可能だ WebベースのAdobe Premier Expressを利用したYouTubeのサイト。Webブラウザでビデオの編集ができる

 WPFやSilverlightなど、PDF・Flash対応技術を投入するマイクロソフトについて、ナラヤン氏は、「マイクロソフトもわれわれのビジョンに似てきたのではないか。われわれの強みは、Windowsだけで動作するのではなく、MacやLinuxなどクロスプラットフォームに対応しているという点。そして、すでにデファクトスタンダードであるということだ」と、圧倒的に強い立場にあるとした。

 また、SaaSモデルについては、「SaaSはエキサイティングや領域。現行製品をSaaSを使って強化できるかどうか、つねに検討している。実際、Acrobat ConnectはSaaSで提供しているし、Flash Castはモバイル版のSaaSのようなものだ。さまざまな事業分野において、SaaSという形で提供する準備ができている」と、ユーザーからの要望があれば、SaaS化して提供できる状態にあると述べた。



URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.com/jp/


( 福浦 一広 )
2007/07/27 16:19

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