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米Google、「コンプライアンス強化でGoogle Appsの企業利用を促進する」


 米Googleは7月9日(米国時間)、メールのセキュリティフィルタリングをサービスとして提供する米Postiniを買収することを発表した。Postiniの買収により、メールアーカイブやスパムフィルタリング機能などをGoogle Appsのコンプライアンス強化に利用する考えだ。同社プロダクト・マネージメント・ディレクターのダン・スティッケル氏は、「Google Appsは中小企業を中心に利用されているが、このPostiniにより、エンタープライズクラスのニーズに対応できる」と、大企業でのGoogle Apps採用に弾みをつけたい考えを示した。スティッケル氏に、Google Appsの現状と、今後の展開について話を伺った。


米Googleプロダクト・マネージメント・ディレクターのダン・スティッケル氏
―Google Appsの現状について、簡単に説明していただけますか。

スティッケル氏
 まず、GoogleがなぜGoogle Appsを提供しているかを説明しましょう。

 現在、多くの企業が自社内にメール環境を用意しています。メールサーバーを設置し、ストレージを用意し、場合によっては二重化するといった環境を構築することになります。これを維持管理するには膨大な費用がかかります。よくいわれていることですが、企業のIT予算の80%が既存システムの維持管理に使われています。

 われわれが伝えようとしているのは、自社内にわざわざサーバーを構築せず、メールをサービスとして利用することで、コスト削減を実現できるという事実です。われわれが試算したところ、メールシステムを含め、自社内でサーバーを運用している企業の場合、従業員一人あたり年785ドルのコストが発生しています。これに対し、Google Appsでは一人あたり年87ドルで済みます。

 現在、1日あたり1000以上のドメインがGoogle Appsを利用しています。また、日本大学様やライブドア様などで採用していただくなど、大学やISPでの利用も進んでいます。


―コスト面でのメリットはわかりますが、企業にとってはセキュリティも重要です。メールのような大切なインフラをGoogleに任せきりでいいのかという議論があります。

スティッケル氏
 確かにそういった不安を聞きます。実際、Google Appsを利用している企業の多くが中小企業です。エンタープライズほど、慎重な動きをしています。

 こうした不安を解消するため、米Postiniの買収を決めました。Postiniが持つエンタープライズレベルのメールセキュリティサービスをGoogle Appsに追加することで、コンプライアンスに関する不安の多くは解消できます。


―具体的には?

スティッケル氏
 たとえば、Postiniにはメールの保管期間を利用企業ごとに設定する機能を用意しています。現在、企業に対して一定期間メールを保管することを義務づけていますが、Postiniを利用することで対応可能です。

 そのほか、スパムフィルタリングをフレキシブルに行えるのも特長です。これにより、各企業に応じた細かなフィルタリング設定も実現できます。

 Postiniの買収はまだ完了していませんが、いずれこうした機能をGoogle Appsに組み込んで提供します。


―Google Appsには、Google Docs & Spreadsheetsというワープロ&表計算ソフトも用意されています。しかし、企業で多く使われているMicrosoft Officeと比較すると、互換性や使い勝手など、満足できるレベルとはおもわれません。

スティッケル氏
 Microsoft Officeは確かによい製品です。1990年代はMicrosoft Officeの時代でした。しかし、ネットワークが発達した現在、共有という点では不十分です。

 われわれは、Docs & SpreadsheetsをMicrosoft Officeの置き換え製品とは考えていません。Docs & Spreadsheetsは、複数人で文書を共有できる新しいパラダイムの製品です。Webベースの製品ですので、どこからでも利用でき、また、一度文書を作ってしまえば、そのフォーマットを活かしたまま文書を更新することができます。

 新機能を随時追加できるのもDocs & Spreadsheetsの特長です。Microsoft Officeの場合、数年に一度バージョンアップが行われますが、Docs & Spreadsheetsは日々機能追加や改善が行われています。そしてその機能は追加料金なしにすぐに利用できます。

 Microsoft Officeと比較されるのは仕方のないことではあります。また、Microsoft Officeユーザーに対して、強制的にDocs & Spreadsheetsを利用させるつもりもありません。ただし、Docs & Spreadsheetsの特長である、オンライン・共有機能を一度でも使っていただければ、きっと元には戻れなくなるとおもいます。


―Google Appsには、ワープロと表計算ソフトが用意されていますが、今後ビジネスアプリケーションで追加する製品はありますか?

スティッケル氏
 プレゼンテーションソフトはすでに発表しています。それ以外に関しては未定です。あくまでも、コンシューマでのニーズの高い製品から追加することになるとおもいます。


―企業でのニーズを考えると、プロジェクト管理ソフトなども求められそうですが?

スティッケル氏
 すべてのエンタープライズの問題に応えられるわけではありません。どうしてもコンシューマの方が先行しているので、まずはコンシューマで求められるものから実現することになります。


―大学やISP、中小企業でGoogle Appsの導入が進んでいるのは理解できますが、やはりエンタープライズでの採用はまだまだ厳しいように感じます。エンタープライズにフォーカスした展開などは考えていますか?

スティッケル氏
 われわれは特定セグメントだけに力を入れるということは行いません。すべてのセグメントに対して、力を入れています。どのセグメントも立ち上げ時は苦労しています。エンタープライズに関しても同様です。

 ただし先ほども述べましたが、コンプライアンスなどエンタープライズが抱える不安に対しては手を打っていきます。たとえば、企業全体でGoogle Appsを導入するのは難しくても、一部からの導入は可能です。一時的に雇った人に対してGoogle Appsを利用してメールを利用させるといった使い方を提案していきます。

 エンタープライズに対しては、われわれは大きな期待を持っています。収益面でも将来大きなものになるとみていますし。


―読者に対して、メッセージがあればお願いします。

スティッケル氏
 ぜひ試してみてください。言葉ではわからないことでも、体験すると真実がわかりますから。



URL
  グーグル株式会社
  http://www.google.co.jp/


( 福浦 一広 )
2007/08/03 11:50

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