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WindowsアプリのSaaS化でソフト流通が変わる-きっとエイエスピー松田社長


 8月9日に発表された株式会社きっとエイエスピーのSaaSプラットフォーム「Pivot Path/JSDN」の最大の特長は、WebアプリケーションだけでなくWindowsアプリケーションも配信できる点にある。きっとエイエスピーのGo-GlobalとAppStreamの2つの製品をPivot Path/JSDNにアドオンすることで、WindowsやLinuxなどにホスティングしたアプリケーションの配信と、Windowsアプリケーションそのものの配信を実現している。

 同社代表取締役社長の松田利夫氏は、「WebアプリケーションだけがSaaSという認識があるが、そうではない。WindowsアプリケーションもSaaSとして提供することは可能だ。WindowsアプリケーションをSaaSで配信することで、(パッケージソフトの流通という)既存のビジネスモデルとは違う新しいビジネスモデルを構築する」と意欲的だ。今回、松田氏にPivotPath/JSDNの特長や今後のビジネスについて話を伺った。


代表取締役社長の松田利夫氏
―今回発表されたPivotPath/JSDNについて、あらためて説明していただけますか?

松田氏
 PivotPathは、Webアプリケーションのデリバリーを行う製品です。このPivotPathに店舗機能や仕入、ユーザー管理といったマーケットプレース機能を提供するのが、JSDNになります。

 このPivotPath/JSDNに、弊社が提供するWindowsアプリケーションの配信機能をアドオンすることで、Webアプリケーションだけでなく、パッケージソフトもSaaSとして配信できる環境を整えました。利用者にとっては、ひとつのポータル上でさまざまなアプリケーションを利用できます。


―アプリケーションを配信するとなると、サーバーの負荷は大きくなるのではないでしょうか?

松田氏
 PivotPath/JSDNの開発元である米Jamcracker社のアメリカでの実績で見ると、4つのブレードサーバーで1万ユーザーを管理しています。オープンソースソフトで構成されており、必要に応じて拡張可能です。日本ではまだテスト段階ですので、正式サービスの提供までに検証を続けていきます。


―きっとエイエスピーでは、プラットフォームのみを提供するということですが、なぜ自社で直接販売されないのですか?

松田氏
 弊社は基本的には、テクノロジーの会社であると認識しています。テクノロジーについては自信はありますが、それを多くの方に販売できるかというと正直得意とはいえません。ですので、販売に関しては得意とするパートナーに任せた方がいいと判断しています。これはJamcrackerも同様です。企業風土が似ていたことから、日本での独占販売権が得られたのではないでしょうか。


―今回のモデルでは、パッケージベンダーなどがどの程度参加するかが成功のカギを握っているように思います。パッケージベンダーの反応はどうなんでしょうか?

松田氏
 反応は大きいです。各社もSaaSにチャレンジしたいとおもいながらも、自社だけで実現するのは難しいですからね。このビジネスモデルを利用すると、従来のパッケージ流通とは異なる新しいソフトウェアの流通経路ができます。それも開発に与える負担もほとんどありませんから。


―確かに、このモデルですと手軽にアプリケーションの配信環境が用意できますね。でも、これまでのSaaSのイメージとは違う印象を受けますね。

松田氏
 salesforce.comがSaaSで成功しているため、SaaS=Webアプリケーションという印象が強くなっていますね。でも、SaaSはソフトウェアをサービスとして提供するというものですから、決してWebアプリケーションに限定されるものではないと考えています。

 実際、JamcrackerにWindowsアプリケーションをPivotPath/JSDNで配信したいといったところ難色を示しました。やはり、Webアプリケーションを使うのがSaaSだと考えていたからです。しかし、根気強く説明を繰り返した結果、Windowsアプリケーションを配信することもSaaSであると理解していただきました。


―きっとエイエスピーでは販売されないということですが、具体的なパートナーは決まっているのでしょうか?

松田氏
 何社かと現在調整中です。10月には発表できるとおもいます。

 今回のモデルは、エコシステムをいかに構築できるかがカギだと考えています。特に企業と接しているSIerなどの方にとっては、メリットがあるモデルだといえます。店舗という形態で、配信するアプリケーションを管理できますし、ライセンス管理も容易に行えます。また、各企業向けに独自開発したアプリケーションも配信可能なので、既存資産も容易にSaaS化できます。もちろんSaaSですから、アプリケーションのバージョンも一元化できますので、管理面でのメリットも大きいでしょう。

 個人的には、ITコーディネーターなどの声を反映した売り方が可能になるのがメリットだとおもっています。量販店の店頭にパッケージソフトが陳列されているよりも、ITコーディネーター自身がSaaSの店舗を作り販売すれば、どのように利用すればよいかといったアドバイス込みでアプリケーションを利用できるようになります。これが新しいパッケージソフトの世界になるのではないでしょうか。


―パッケージベンダーにとっては、新たな流通の機会が得られるということですね。とはいえ、今までこのようなモデルはあまり進んでいません。なにが障害となっているのでしょうか?

松田氏
 PivotPath/JSDNのようなプラットフォームがなかったこともありますが、やはり既存流通との関係が一番の要因です。

 パッケージベンダーにとっては、すでに流通網が整っており、それを利用したビジネスが成立しています。このモデルを崩してまでSaaS化できるかというと大きな決断が必要です。どの企業もそうですが、ビジネスモデルを変えるのは難しいことです。

 個人的には、SaaSといった形でのアプリケーション配信が主流になると考えています。パッケージベンダー各社の方には、これを機に積極的に取り組んでいただきたいですね。



URL
  株式会社きっとエイエスピー
  http://www.kitasp.com/

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( 福浦 一広 )
2007/08/24 00:00

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