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Ajax発展に挑む富士通、開発を効率化するフレームワーク製品を説明


ソフトウェア事業本部 アプリケーションマネジメントミドルウェア事業部 プロジェクト部長の広田勉氏
 富士通株式会社は8月28日、Ajaxアプリケーション開発を支援するAjaxフレームワーク製品「Interstage Interaction Manager(以下、IIM)」の説明会を開催。製品の特長やビジネス展開に関する解説を行った。

 IIMは、2007年6月から提供を開始しているAjax開発を効率化するフレームワーク製品。画面やデータを扱うUI部品を再利用可能にし、Ajaxの特長である非同期通信を実現するための部品も提供するのが特長。これによりWebアプリケーションの品質や保守性などを向上する。

 ソフトウェア事業本部 アプリケーションマネジメントミドルウェア事業部 プロダクト部長の広田勉氏は、同製品を提供するに至った背景として、既存のシステムの問題点を指摘。「従来型Webシステムでは、画面の機能性が低いため、操作に応じて頻繁に画面遷移を行わなければならない。その度に画面全体を更新するため、サーバー側の処理が頻発し、使い勝手はお世辞にもいいとはいえない。HTMLによるUIはすでに限界だ」と説明。一方、依然として高い割合を占めるクライアントサーバーシステムでも、「OSやJavaのバージョンアップやバグ対応、クライアントアプリケーションの配布と管理などの負担が大きいといった問題がある」(同氏)と説明。こうした点を改善する仕組みが求められていると述べた。

 そこで注目を浴びているのがAjaxである。Ajaxでは画面の一部だけを更新することや、クライアント側で多くの処理を実行させることができる。「これによる圧倒的なレスポンス速度や、JavaScriptの画面表現力および操作性により、既存のWebシステムだけでなく、クライアントサーバーシステムのデメリットすら埋めることが可能。Googleなどのようにすでに実用化されているケースもあり、今後、ますます普及していく技術である」(同氏)とした。

 とはいえ、Ajaxアプリケーションの開発は決して簡単なものではない。「JavaScriptのほか、HTTP非同期通信などに関する高度な知識が必要とされ、特に通信部分に関しては国内では技術者が育っていない。そのためAjaxはまだ、画面のカスタマイズを目的とした局所的な使われ方しかしていないのが現状」(同氏)。Ajaxの発展には、開発を効率化して品質をあげる仕組みが必要とされている。


Interstage Interaction Manager概要-開発効率化と品質をあげる仕組み Ajaxで従来型Webフロントシステムのユーザビリティを向上 Ajaxでクライアントサーバーシステムの管理作業を削減

富士通研究所 ITコア研究所 ソフトウェアイノベーション研究部の松塚貴英氏
 この課題に対する富士通のアプローチとなるのがIIM。特長は「Ajaxクライアントフレームワーク」から「Ajax通信フレームワーク」までAjax開発に必要とされる価値を総合的に提供する点。これにより、品質・生産性・保守性に優れたWebアプリケーションの開発をトータルに支援する。

 Ajaxクライアントフレームワークでは、「画面表示用」と「機能用」に分けられたUI部品が提供される。画面表示用部品とは、スプレッドシートやテキストフィールド、ポップアップカレンダーなど画面上に表示される部品のことで、機能用部品は、ファンクションキー制御やフォーカス自動移動、入力補完などの機能を実現する画面上には表示されない部品のこと。これらを再利用、組み合わせて開発することで、JavaScriptの開発量を大幅に削減できる。

 郵便番号の入力画面を例に取ると、IIMを使えば「従来は約240行のJavaScriptコードを記述する必要があるところを、わずか4つの部品タグ宣言だけで実現することができる」(広田氏)という。コード数が少なければ少ないほど、そのメンテナンスも容易になり、ひいてはアプリケーションの品質向上が実現できるのは明らかだ。この部品を組み合わせるという仕組みについては、すでに特許を出願済みという。

 また、プレゼンテーションロジックの開発に関しては、MVCモデルに対応。単純にModel、View、Controlerを分割しただけの一般的なMVCモデルではなく、モデルオブジェクトにスキーマ(入力ルール)を対応づけられるなど、富士通独自の工夫がなされたMVCモデルを採用しており、「入力チェック機能などが簡単に実装できる」(富士通研究所 ITコア研究所 ソフトウェアイノベーション研究部の松塚貴英氏)という。「ひと味違った」(同氏)このMVCモデルに関しても特許を出願済みとのこと。

 もうひとつ、非同期通信処理の簡易化を図るために提供されるのが、Ajax通信フレームワーク。XML/XSLT・DOMなどの難しい知識なしでデータの作成を可能にするもの。Webブラウザの互換性なども吸収してくれるため、ユーザー環境を考慮した開発時の余計な手間を削減することも可能だ。

 以下の写真は、IIMを利用して開発したWebアプリケーションの一例。ここで紹介している例は、Ajaxそのものの特長なので、IIMを利用しなくても実現することは可能だ。IIMはこうした開発を効率化してくれるためのフレームワークであることに注意されたい。


PC受注・申請業務画面の例。顧客データを表示している。IIMでは、簡単にファンクションキーにさまざまな機能を割り当てることが可能 商品名フィールドを選択すると、上部の顧客情報が製品詳細情報に自動で切り替わる。このようにAjaxでは、画面の一部だけをクライアント側で更新することができるので、サーバーへの負担を抑えることが可能

入力チェック機能の例。受注数を150と指定した結果、多すぎるのでは?と判断されて、赤字でエラー標示される。IIMでは、こうしたスキーマも容易に組み込むことができる 入力補完機能の例。郵便番号を途中まで入力した時点で、住所の候補一覧が表示されている

 ライセンスのラインアップは「プロセッサライセンス」と「ユーザーライセンス」の2種類。前者は、大規模導入用でユーザー数に制限なく導入することができる。価格は、プロセッサライセンスが260万円(税別)。メディアパックライセンスが1万円(同)。後者は、まずは試用のための小規模導入に適したもので、価格は、サーバーライセンスが45万円(同)。1ユーザーライセンスが5000円(同)。20ユーザーライセンスが8万円(同)。

 なお現状では、まずは試してみたいというニーズに応えるため、導入しやすいWindows用のみが提供開始されている。Solaris用は来月ごろから出荷する予定とのこと。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/


( 川島 弘之 )
2007/08/28 16:56

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