Enterprise Watch
最新ニュース

AMD、「Intelの不正行為で消費者から約600億ドルの利益が奪われた」

インテルに対する訴訟は長期化

日本AMD取締役マーケティング本部長の吉沢俊介氏
 日本AMD株式会社は8月30日、米AMD法務部門責任者のトーマス・マッコイ氏の来日に伴い、インテル株式会社に対する訴訟の経過、および欧州委員会が米Intelに送付した異議告知書に関する説明会を開催した。

 同社は2005年6月に、東京高等裁判所(東京高裁)および東京地方裁判所(東京地裁)に対して、インテルに対する損害賠償請求を2件提起している。東京高裁に提起された訴訟は、2005年3月に公正取引委員会が行った排除勧告で認定された、インテルの独占禁止法第25条への違反行為に対する損害賠償請求訴訟で、請求額は5000万ドル。一方の東京地裁に提起された訴訟は、排除勧告において認定された違反行為を含め、インテルの取引・営業妨害行為から生じた損害についての損害賠償を請求するもので、請求額は5500万ドル。この金額には東京高裁での請求額が含まれている。

 提起からすでに2年が経過したことについて、同社取締役マーケティング本部長の吉沢俊介氏は、「この間のインテルの動きを見ると、“隠す”“延ばす”という戦略をとっているのは明らか」と、裁判が長期化するとの見通しを示した。

 「訴訟のきっかけとなった公正取引委員会によるインテルへの排除勧告とその応諾という事実がありながらも、インテルは請求原因事実を包括否認している。東京地裁での裁判はいつ始まるのかという質問を受けるが、裁判そのものはすでに始まっている。これまでに、公正取引委員会に対して文書送付嘱託申立てを行い、2006年には当事者に対して開示されている。また、裁判所に対して準備書面を何度か提出している。しかし、インテルは企業秘密の情報が含まれているとして、情報開示を延ばしている。また開示された情報も黒くマスキングされたもののみ」(吉沢氏)と、情報を隠すことを戦略としていると指摘する。

 もう一方の東京高裁の状況については、「東京地裁の進ちょくを見ている状態」(吉沢氏)と、審理はペンディングの状態にあると説明した。


2005年の東京地裁での動き 2006年の東京地裁での動き 2007年の東京地裁での動き

米AMD Exective Vice President,Legal Affairs, and Chief Administrative Officerのトーマス・マッコイ氏

日本市場のシェアは2002年には24%まで高まったが、翌年には11%まで急落
 7月27日に欧州委員会が米Intelに対し、米AMDに対して不当な排除行為を行ったとし欧州競争法違反を認定する異議告知書を送付した件について、マッコイ氏は、「今回の異議告知書の内容をAMDは見ることはできないが、内容を整理すると、OEMベンダーに対しIntelのみからCPUを調達することで多額のリベートを提供するという違法行為があったこと、資金提供を行うことでAMDが新製品を投入しても支持しないようにさせていること、Opteronを搭載しないことで多額のリベートが与えられたこと、が挙げられる」と、競合に対する不正な行為があったことを認定したものとの見解を紹介。

 「日本の公正取引委員会による排除勧告と、欧州委員会による異議告知書の送付と、世界の2つの委員会が同様の判断を行ったことは重要なことだ。Intelによる不正行為により、革新が阻害され、また消費者の利益が損なわれている。Intelがビジネスをコントロールした結果、収益の大半がIntelに集中しており、PC業界は大きな損失を被っている。また、この10年間の被害額を分析したところ、消費者から約600億ドルの利益が奪われているという結果が出ている。消費者保護の観点からも重要な問題だ」(マッコイ氏)と、業界にとっても消費者にとっても不利益を与えていると強く指摘した。

 マッコイ氏は、「AMDが訴訟を行ったのは、革新を促進するため。また、消費者の利益を保護するためだ。この10年間を振り返ると、x64やネイティブデュアルコアプロセッサなど、AMDが先行して新技術を投入してきている。実際、日本では24%まで市場シェアを高めたものの、11%以下にまで急減している」と、製品力では説明できない現象が実際に起こったと指摘。「事実はひとつ。日本と欧州の当局が(不法行為と)判断したことだ」と、引き続き公正な活動が行われるように主張するとした。



URL
  日本AMD株式会社
  http://www.amd.com/jp-ja/

関連記事
  ・ 公取委、独禁法違反でインテルへ排除勧告(2005/03/08)
  ・ インテル、公取委の排除勧告受け入れも、事実関係は否認(2005/04/01)
  ・ 日本AMD、国内でもインテルに損害賠償請求を提起(2005/06/30)


( 福浦 一広 )
2007/08/30 16:30

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.