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米RSAのプレジデントが来日、EMCとの合併効果強調


米EMCのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼RSA,The Security Division of EMCのプレジデント、アート・コビエロ氏

RSAセキュリティの山野修社長
 RSAセキュリティ株式会社は9月11日、米EMCのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼RSA,The Security Division of EMCのプレジデント、アート・コビエロ氏が来日したことにあわせ、プレスラウンドテーブルを開催した。

 EMCとRSAは、ちょうど1年前となる2006年9月18日に企業合併を実現。合併前はRSAのCEOだったコビエロ氏も現在の役職に就任し、EMCの戦略にのっとったRSAの戦略構築ならびに、日常のオペレーション業務に従事している。

 冒頭、RSAセキュリティの日本法人の社長である山野修氏があいさつし、「合併後の日本でのビジネスも堅調に推移している。内部統制、IT内部統制への注目の高まりもあって、当社のアクセス管理ソリューション、ログ管理ソリューションも売り上げも大きく伸張し、日本の大手金融機関への製品導入も実現した」と日本法人の現状が順調であることをアピールした。

 それを受けてコビエロ氏は最初に、EMCとの合併を決断した背景を説明した。

 「RSAは1984年の誕生以来、独立したセキュリティ専業ベンダーとして成功を収めてきた。これまでIT業界の中でも、セキュリティというのは独立したジャンルとして展開してきたが、その状況が大きく変化したことによって、ITセキュリティというのがひとつの独立したジャンルであり続けることができるのか、曲がり角に差し掛かっている。この約7年間で、ウイルス、サイトへのアタック、ハッキングなどITインフラへの攻撃がどれだけ増えているのかを思い出して欲しい」。

 そしてITセキュリティベンダーが、独立してビジネスを続けていくことができなくなってきている要因として、次の3つをあげる。1)企業がWebアプリケーション活用をさらに促進している、2)ワイヤレス技術が進展して導入され、アクセスポイントが増加している、3)上記2つの要因を受け、ハッカーや犯罪者の行動にも大きな変化が生まれている、の3点だ。

 こうした変化を受けてユーザー側の意識も、「ITインフラ自身にセキュリティ機能が含まれていくことを望むようになった」と説明。よりコストメリットのある形で、効果の高いセキュリティソリューションを利用することを望むユーザーに対して、ITインフラソリューションを提供するEMCと、セキュリティを提供するRSAの合併が必要だったと説明した。


 さらにEMCが進めている情報管理強化という発想はセキュリティにとっても重要なものであるとした。

 「ここ数年で情報量は指数関数的に増加している。しかも、それはとどまることなくさらに増加の一途をたどるだろう。ユーザーは爆発的に増加する情報をきちんと把握し、管理、分類していく必要がある。自分が持っている情報の価値を理解しないまま、最適なセキュリティ対策を考えられるはずがないからだ。この5年間、EMCは製品拡大施策によって、情報をストレージや管理ソリューションによってきっちりと管理するだけにとどまらず、情報の保護、最適化、レバレッジといったことを実現する企業となった。つまり、EMCというのはセキュリティ対策をとる際、必須となる情報を分類、管理していくためのコアとなる製品群を保有しているということだ。情報管理とセキュリティという両輪をそろえることの重要性は、今後さらに高まっていくだろう」(コビエロ氏)。

 RSAとしてのEMCとの合併効果については、「当社の取締役会でも、独立したセキュリティ企業としてEMCのようなITインフラを持っている企業と、同等にパートナーシップをとっていくという選択もあるのではないかという意見はあった。だが、EMCからの提案は十分に賛同にあたいすべきものであったし、ユーザー側がITインフラにセキュリティが組み込まれていることを望むようになった以上、合併は決して間違った選択ではない。また、潤沢な資金を得ることができたために、RSAとしても2006年9月から2007年8月までに4社の買収を実現できた」と説明した。

 実際に合併後のRSAの売り上げは対前年比で20%成長となったが、「この成果に関しては、まだ合併効果があらわれているとはいえない。当社のビジネスサイクルが9カ月から12カ月となっているため、売り上げ面での合併効果が出てきたのは直近の四半期だけだからだ。ただ、現段階ではかなりプラス効果が出ていると見てよい」という。

 日本法人について山野社長は、「実働がスタートしたのは2007年1月以降であり、売り上げ面での効果があらわれるのは今後のこととなるだろう。ただし、RSAのこれまでの製品販売がパートナー経由であったのに対し、EMCは直販を行っていたため、EMCの紹介で金融機関や通信事業者などとの接点を持つことができた」とプラス面が出ていると説明した。


EMCジャパン 執行役員 マーケティング兼パートナーアライアンス統括部長の古谷幹則氏
 EMCジャパンの執行役員 マーケティング兼パートナーアライアンス統括部長の古谷幹則氏は、「EMCにとってもセキュリティにからめたビジネスというのは、事業の大きな柱となりつつある。ユーザー側のセキュリティ意識が高まる中、RSAとのジョイントは大きなプラス」と説明した。

 コビエロ氏は、「ITインフラのセキュリティ効果という点では、OS、ネットワークなど各要素での機能強化は間違いなく実現していくだろう。ただ、EMCとRSAは合併によって、ITインフラの中でも複数の要素が絡み合う部分をカバーできるようになったことが大きな強みといえるだろう。ユーザーはどこに行っても、同じように情報を守る環境を得られるようになる。同様のアプローチをとっているベンダーはほかにはなく、2社の合併によって他社にはない大きな強みが実現した」と合併効果が大きいことを強調した。



URL
  RSAセキュリティ株式会社
  http://japan.rsa.com/

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( 三浦 優子 )
2007/09/11 17:56

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