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「仮想化はOSの一部になる」、レッドハットが仮想化勉強会を開催


同社マーケティング&パートナービジネス統括本部長の纐纈昌嗣氏
 レッドハット株式会社は9月20日、最新注目を集めている仮想化技術の現状と、仮想化技術に対する同社の取り組みに関するプレス向けセミナーを開催。同社マーケティング&パートナービジネス統括本部長の纐纈(こうけつ)昌嗣氏は、「今後、仮想化技術はOSが提供する機能になり、ミドルウェアは不要になるだろう」と、同社として仮想化をOS標準の機能にする考えを示した。

 纐纈氏はまず、仮想化の現状について、「仮想化そのものはメインフレームでは当たり前の技術であり、実は新しいものではない。Intelアーキテクチャ、いわゆるPCサーバーで仮想化が使えるようになったのが新しいこと」と説明。

 仮想化のメリットとしては、「1つのハード上で複数のOSが使えること、ハード更新時の影響を受けないこと、そしてOSに検知されることなくメモリを取り除いたり、リモートで電源をオンオフしたり、システムを活かしたままCPUを停止したりといったハイエンドサーバーでのみ実現していた機能を利用できる点が挙げられる」と紹介。デメリットとしては、「ハード上で直接動作させる場合と比べて、少し遅くなる点。また、障害対応や運用管理などが複雑化する。そして、なによりも物理マシンがダウンすると大きな影響を受ける点が挙げられる。そのため、物理マシンの可用性が重要になり、結果として仮想化には高価なサーバーが必要ということになる。ハードベンダーが仮想化に力を入れている理由かも」と、物理マシンの可用性が仮想化にとって不可欠な要素であると説明した。

 仮想化が抱える課題については、「CPUの仮想化では、OSの中でしか動作しない特権命令がいくつかあるため、それをどう処理するかが課題となっている。メモリの仮想化では、OSはメモリ状態が変化しないことを前提としているため、メモリが追加されるなどした場合、有効に使えないといった課題がある。そして一番の課題はネットワークの仮想化。ネットワークはディスクデバイスなどよりも速いため、オーバーヘッドが大きくなってしまう。ネットワークアクセスが多い仮想マシンは性能が低下しがちになる」と、ネットワークアクセスが多いアプリケーションには仮想化は不向きであるとした。


 こうした現状をふまえ、同社では仮想化に対してどのように取り組んでいるのだろうか。纐纈氏は、「サーバーとストレージの環境をOSS(オープンソースソフトウェア)によりプールして使えるようにするというのがレッドハットの基本的な考え方。CPUやメモリ、ディスクやネットワークなどコンピュータ資源を管理するのはOSの仕事でもあることから、仮想化はOSの仕事だと考えている。ミドルウェアで仮想化を行うのは将来的にはなくなるのではないか」と述べた。

 現在、仮想化ソフトのXenのほか、ストレージ管理のGlobal File SystemやクラスタソフトのCluster Suiteで仮想化に対応している同社だが、今後は標準Linuxに取り込まれたKVMが主流になるのではないかと説明する。「KVMはFedora 7に組み込まれた仮想化テクノロジー。標準Linuxとしてカーネル内に入っており、個別設定が不要というのがいい点だ。ただし、機能面ではXenのほうがまだ上であり、今後どうなるかは未知数」と、まだまだ機能面では見劣りのするKVMではあるが、標準Linuxに取り込まれている強みがあると述べた。

 仮想化が与える同社へのビジネスインパクトについては、「仮想化によりサーバー数が減ることになるので、単純にみれば売上は減るだろう。しかし、Linuxやメインフレームの市場を取るという面では、仮想化により活用が広がることにつながるので、長い目で見ればプラスと考えている」と、同社としても積極的に取り組む考えを示した。



URL
  レッドハット株式会社
  http://www.jp.redhat.com/


( 福浦 一広 )
2007/09/20 19:49

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