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IPAとThe Linux Foundation、OSS標準化に向け相互協力協定を締結


IPA、オープンソースソフトウェアセンター長の田代秀一氏
 独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)は10月1日、The Linux Foundation(以下、LF)と相互協力協定(MCA)を締結すると発表した。IPA、オープンソースソフトウェア(OSS)センター長の田代秀一氏が、背景や目的について説明。併せてIPAでは、2005年・2006年に続き、5つの自治体および病院において実施するOSSを利用した基幹システムの構築実証を紹介するとともに、これまで特定のソフトウェアでの活用を目的として配布されていた日本語フォント「IPAフォント」を、一般利用者へ無償配布すると発表した。


IPAとLF、相互協力協定を締結

相互協力協定の内容
 両者は、これまでLinuxとOSSの利用拡大に向けた活動を行ってきた。今回のMCAは、「双方の活動には共通点が多いため、協力することでよりオープンスタンダード確立に力を発揮できる」(田代氏)との判断によるという。

 このMCAで両者は具体的にOSSに関する、1)技術開発の推進、2)オープンスタンダードの推進、3)OSSの啓発、4)法的課題の研究を共同で進めていくことになる。先だって6月13日から15日に行われた「Linux Foundation Collaboration Summit」では、IPAが調査・開発成果として互換性テストツール「Linux Kernel Regression Test Tool」、障害解析メッセージ用マニュアルデータベース「Linux Error Message Database」などを発表している。こうした活動を今後も推進しつつ、啓発活動や法的課題などより広範な領域において、さらに協力し、OSSの普及促進を加速していくとしている。

 なお共同活動の手始めとして、10月30日に開催する「IPAフォーラム 2007」にてカンファレンスを共催する予定。


自治体への導入実証でOSSの有効性と課題を明らかに

IPA、研究員の石井広明氏
 IPAでは自治体に対して、2005年にはOSSデスクトップの導入実証を実施。2006年にはOSSを活用し、オープンな標準に則した情報システム基盤の導入実証を実施して、その有効性の検証と課題の抽出を行ってきた。

 その結果、OSSで、文字コードの対応、セキュリティの確保、レガシーソフトウェアの代替、および既存システムの連携が可能だということを証明する必要があると判明。さらに、OSSの普及のためには、OSSへの移行コスト、および運用コストも明示できなければならないということが課題として明らかになったという。

 今回紹介された2007年の導入実証は、これまでに見つかった課題の解決策を見いだすことが目的となる。

 具体的な対象団体は、島根県松江市、宮崎県延岡市、秋田県、静岡済生会総合病院、新潟県上越市の5つ。例えば島根県松江市の実証実験では、Rubyによる自治体基幹業務システムを構築。「ほとんど前例のないRuby大規模システム構築案件によって、Rubyの性能を十分に発揮させるためのノウハウが明らかになることが期待される」(IPA、研究員の石井広明氏)という。

 また、宮崎県延岡市では、入札管理業務システムと延岡市Webサイトを連携させる機能を開発。「既存のCMSをすべてOSSで再構築して公開することになるのだが、ほかの自治体での利用も想定して設計することで、自治体への普及が期待される」(石井氏)。

 秋田県では、秋田県庁に統合運用管理ソフトを導入して、既存の業務システムの死活監視、ログ監視、性能監視などの運用管理業務を統合。「この際、既存の業務システムの開発元から情報提供が必要となるため、情報開示を得るための事例としても取り組みが期待される」(石井氏)。このように、いずれにおいてもOSS普及のための目標が定められており、それにより期待される効果が明示されている。

 このほか、静岡済生会総合病院では、「病診連携および医療情報標準化の推進を目的としたOSSによるAS型電子カルテシステムの構築」、新潟県上越市では、「OSSによる統合データベースを介した基幹システムと業務システム連携の実証」を行う。いずれも2008年2月までを期間として予定している。


IPAフォントの無償配布を開始

下がIPAフォント(明朝)。JIS X 0208:1997を含め1万1233文字をサポート
 そのほか同日の発表会でIPAは、IPAフォントの無償公開を発表した。これまで同フォントは、IPAが支援したプロジェクトで開発されたソフトウェアの活用を目的として配布され、それ以外の利用については認められていなかった。今回、同フォントを一般利用者への無償公開を開始したことで、誰でもどのような用途にでも同フォントを利用できるほか、自由に複製・再配布することも可能となる。

 ただし、フォントデザインの変更については原則禁止となる。それさえも可能なフォント開発者向けライセンスについては、「今年度中に検討を終了して、来年度中のどこかで提供開始する予定」(田代氏)とした。



URL
  独立行政法人 情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  IPA オープンソフトウェアセンター
  http://www.ipa.go.jp/software/open/ossc/
  The Linux Foundation
  http://www.linux-foundation.org/
  プレスリリース
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20071001-1.html
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20071001-3.html

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( 川島 弘之 )
2007/10/01 15:50

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