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「日本のIT産業競争力は世界2位、研究開発がけん引」-EIU調査


IT産業競争力指標の総合結果

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 Business Software Alliance(BSA)は10月1日、記者懇談会を開催。同団体がEIU(Economist Intelligence Unit)に調査を依頼した、IT産業競争力のベンチマーク結果に関して説明を行った。

 このIT産業競争力のベンチマークは、複数の異なるカテゴリを評価した結果を総合したもの。64カ国のIT産業環境の評価・比較を行い、IT部門に競争力をもたらす力がどの程度備わっているかを割り出すことを目的にしているという。調査は、2006年11月から約半年をかけて実施。大カテゴリは、1)総合的なビジネス環境(指標に対するウエイト10%)、2)ITインフラ(同20%)、3)人的資源(同20%)、4)法的環境(同10%)、5)研究開発環境(同25%)、6)IT産業発展の支援(同15%)、の6つで、カテゴリごとにさらに詳細な小指標(計25)を用いて計算されている。また補足として、20人を超える専門家へのヒアリング調査も実施した。

 その結果によると、日本は72.7ポイント(満点は100ポイント)を獲得して全体の2位、アジア太平洋地域(APAC)では1位にランクインした。全体のトップは米国(77.4ポイント)で、韓国(67.2ポイント)が3位、英国(67.1ポイント)が4位にランクインしたほか、オーストラリアが5位、台湾が6位、スウェーデンが7位となっている。一方、IT従事者1人あたりの総生産高を表すIT労働生産性では、台湾が1位。2位が韓国、3位がアイルランドで、日本は8位となった。

 今回、IT産業競争力で日本が2位になったのは、指標形成にあたり5)の占める割合が大きかったことが挙げられるという。同分野だけを見ると、日本は84.3ポイントで、2位の韓国を30ポイント弱も引き離してトップに立っているが、これは評価項目の1つである特許登録数で他国を圧倒したほか、GDPの3.5%もの膨大な研究開発費を投入している点を評価されてのものという。


BSAの副会長兼アジア太平洋地域責任者 ジェフリー・ハーディー氏
 一方で、ほかの指標は総合順位と比べて低い水準にとどまっている。1)では、82ポイントで全体の24位。外資の受容力が低いほか、公式/非公式な慣行によって、既存の市場参加者が保護されており、オープンな市場性とは言い難い状況だという。「海外直接投資促進プログラムによって、GDPにおける外国投資の割合を2010年までに5%へ上昇させようとしているが、海外からの影響をもっと受け入れない限りこの達成は困難だろう」(BSAの副会長兼アジア太平洋地域責任者 ジェフリー・ハーディー氏)。

 また2)では52.3ポイントで全体の17位。1000人あたりのPC所有数などで諸外国に見劣り、6カテゴリ中最低の評価になっている。さらに4)でも79ポイントで18位。日本に限らずアジアの諸国はこのカテゴリでは軒並み低評価となり、知的財産やスパム/プライバシー法、サイバー犯罪法といった分野での法整備が、欧米と比べて遅れている現状が指摘された。

 ただし全般としては、アジアの成長は今後期待できるという。「アジアの企業は強力な国際勢力となる可能性があり、今後の成長は有望。その中で、日本はロールモデルとして重要になってくるだろう。その中で、イノベーションに時間や労力、資源を費やす意欲を人々に与えるためにも、知的財産を保護する必要がある」(ハーディー氏)。


総合的なビジネス環境 ITインフラ 法的環境


URL
  Business Software Alliance
  http://www.bsa.or.jp/
  Economist Intelligence Unit
  http://www.eiu.com/


( 石井 一志 )
2007/10/01 16:09

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