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「メインフレームからPCサーバーまで各市場の特性に合わせて」-富士通のサーバー戦略


経営執行役常務 システムプロダクトビジネスグループ長の富田達夫氏
 富士通株式会社は10月3日、プラットフォームビジネス戦略およびサーバービジネス戦略に関する記者説明会を開催した。

 登壇した経営執行役常務 システムプロダクトビジネスグループ長の富田達夫氏はまず、ビジネスを取り巻く環境として、企業会計やセキュリティ、環境保護などをはじめ、社会環境の変化が加速していることに言及。企業としての社会的責任が高まっている状況下で、富士通に課せられたミッションは、「変化への追随」と仮想化とNGNを軸にした「技術革新」の2本柱でもって、ユーザー企業の経営を支えることだと述べた。

 現在のサーバー市場での富士通シェアをみると、国内市場では2位(20%)、世界市場では5位(5%)。その上で富田氏は「国内では、2007年度にトップシェアを獲得できることが見えてきた」と発言。

 また、「2005年度、2006年度は売り上げはほとんど前年維持しながらも、メインフレームからオープン系システムへの移行の流れの中で利益のキャッチアップがうまくいかず、営業利益としては大幅に落ち込んでしまった。しかし2007年度は、開発コストの削減やSPARC Enterpriseの好調などがけん引して、約2倍にまで回復。移行のさなかにあっても、利益体質を維持できるようになってきた」(同氏)とした。


サーバー市場での富士通シェア 2007年は営業利益が持ち直す見込み

 今後のプラットフォームビジネスの戦略としては、1)ミッションクリティカルシステムの提供、2)データセンターへ向けた最適化、3)顧客のITインフラ最適化を3本柱に挙げる。

 メインフレーム市場が少しずつ縮小傾向にある中でも、まだ多くの基幹システムがメインフレーム上で動いている。そこで富士通は「当社のDNAであるメインフレームには今後もフォーカスしていく」(同氏)方針。さらに「プロセッサやASIC半導体などの最先端技術やミドルウェア、高品質のマネジメントサービスなどにより、ミッションクリティカルシステムを総合的に提供していく」とした。

 データセンターへ向けた最適化では、「従来は電源や空調、セキュリティ、IT機器など各コンポーネントごとに最適化を図ってきた。それはそれで今後も重要だが、今後はデータセンター全体をみながら、プラットフォームを横断的に最適化していく方針」(同氏)としている。

 そこで重要となるのが、やはり仮想化技術である。富田氏はデータセンターにおける富士通の仮想化戦略を「アプリ層と物理層の分離」「IT資源の有効活用」の2つで表現。「サーバーやストレージ、ネットワーク、各種アプリケーションを独立化することで、独立した発展を可能にするとともに、インフラをプール化して仮想資源とすることで、IT資源の有効活用を支援する」とした。

 各コンポーネントをみると、ブレードサーバーでは、来年に向けた今後の開発テーマとして、低消費電力CPUや半導体ディスク(SSD)など低消費電力テクノロジーの採用を積極的に推進する。これにより「約3.6KWの電力削減をめざす」(同氏)。

 ストレージについても、MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)技術を応用したDisk to Diskバックアップの省電力化や、RAIDコントローラの1チップ化による故障率の低減、ストレージシステム内部でHDDを暗号化する技術など、現状の取り組みをさらに推進していく。

 併せて、ミドルウェアの充実も図る。「ブレードサーバーだけをみるとHPやIBMに後塵(こうじん)を喫しているように映るかもしれないが、ミドルウェアなど周辺要素を含めれば、それほど出遅れているとは思っていない。これまで行ってきたことを今後も堅実に実施していけば、いまある問題はすべて時間が解決してくれる種類のものだと考えている」(同氏)とのこと。


データセンターへ向けた最適化。ブレードサーバーで約3.6KWの省電力化めざす ストレージでも省電力、省スペース化を図る 併せて、ミドルウェアの充実を図る

サーバー製品のロードマップ
 同社が「事業全体の核である」とするサーバー製品の戦略としては、メインフレーム、UNIX、x86、IPFの各市場の特性に適した製品を提供することで、ビジネス展開を図る。特に伸長の著しいSPARC Enterpriseでは、「これまでは富士通とSunには、それぞれの色や特性があったが、Sunとの共同開発・製造提携により製品を一本化したことで、市場に対する訴求力が向上した。今後はグローバルで市場拡大をめざしていく」(同氏)とした。具体的なロードマップとしては、デュアルコア、クアッドコアへの対応を順次進めていく方針だ。

 基幹IAサーバー「PRIMEQUEST」シリーズでは、最大500万ゲートLSIや独自の高速システムバス MTLなどの最先端技術や、スケールアウト・スケールアップ両方に対応するフレキシブル性などにより、「オープンプラットフォームでメインフレームの信頼性を提供する」(同氏)のがコンセプトだと説明。こちらもクアッドコアへ対応していくほか、Xenによる仮想化への対応も進めていくとした。

 またPCサーバー「PRIMERGY」シリーズでは、広告・宣伝の一元化による市場プレゼンスの向上や、中国製造などによるコスト削減を図っていく。そのために開発・マーケティング・営業などを一元化した精鋭チーム「ブレードサーバ・ビジネスプロジェクト」を社長直下に配置して、「市場ニーズに基づく商品力アップを図っていく」(同氏)方針。また、「北米でのBTO(Build to Order)開始やオランダFujitsu Siemens Computers(FSC)との一体開発を行うことでグローバル化の加速を図っていく」とのこと。こちらも今後、クアッドコアへの対応を進めていく予定だ。

 最後に富田氏は「グローバルでのブランド力など富士通にはまだ至らない部分もある。いまはこつこつと実績を上げていくことが重要。そのために当社は、強いサービスに向けた強いプラットフォームを提供することで、相乗効果を狙っていく」と締めくくった。


サーバー製品戦略-メインフレームおよびUNIX サーバー製品戦略-基幹IAサーバー サーバー製品戦略-PCサーバー


URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/

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( 川島 弘之 )
2007/10/03 18:44

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