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米Radicatiのサラ・ラディカティCEO
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メールシステム、いわゆるメッセージング製品は企業で必須のシステムとして利用されるようになって久しいが、自社のシステムのTCOがどうなのかという点について気にしている管理・経営サイドは、あまり多くなかったのではないか。今回は、メッセージング製品についてのレポートを発行している調査会社、米Radicatiのサラ・ラディカティCEOに、そのTCOについての話を聞いた。
Radicatiでは、メッセージング製品を導入しているグローバル1000企業に対して調査を行い、Mirapoint Message Server、Lotus Notes/Domino 6、Microsoft Exchange 2003、Sun One(Sun Java System Messaging Server)の各製品について、TCOが3年間でどの程度かかっているかを調査している。調査対象は各製品とも3~5社で、すでに5~6年行ってきており、その手法も年を経るにしたがって洗練されてきたという。
その最新のレポートによれば、まずメッセージング製品の取得(購入)コストについては、Lotus Notes/Dominoが約600ドル、Microsoft Exchangeでも500ドル強のコストがかかっているのに対し、Sun ONEでは約270ドル、アプライアンスのMirapoint Message Serverでは120ドル弱にとどまっている。また保守コストでも、Lotus Notes/Dominoが約120ドル、Microsoft Exchangeでも約105ドルと比較的高く、Sun ONEが約55ドル、Mirapoint Message Serverでは約14ドルと、明確な差が出ている。
また、予定内・予定外を含めたダウンタイムのコストは、Lotus Notes/Dominoが98ドルと突出して高く、Sun ONEが53ドル、Microsoft Exchangeが37ドル、、Mirapoint Message Serverが26ドルの順。その他、トレーニングコストやストレージコスト、バージョンアップコストなどを見ても、概してMirapoint Message Serverが一番安く、ほかの3製品が高めという結果が出た。
こうした結果を総合して年間の平均TCOを計算すると、Mirapoint Message Serverは約133ドルでもっとも安く、次いでSun ONEが約310ドル。さらにMicrosoft Exchangeが424ドル、Lotus Notes/Dominoが約962ドル、という順番になっており、すべてにおいてアプライアンスであるMirapoint Message Serverが優位に立っている。
このような、Mirapoint Message Serverが優位という結果について、ラディカティCEOは、「例えばMicrosoft ExchangeとLotus Notesは導入にも設定にもメンテナンスにも、また日々の管理にも複雑なものがあって、あらゆるカテゴリで多くの作業を必要とする。いろいろな設定が可能であり、管理者によるアレンジが可能な分、よく分かっていないといけない。アプライアンスと比べてしまうと時間がかかる」と分析する。
しかしラディカティCEOは、「安価だから、すべてのユーザーがMirapoint製品を買えということではない」とも述べる。ではなぜ、こうした結果を公表しているのか。同CEOはそれについて、「(著名な製品だけではなく)ほかにも選択肢があるということをユーザーに呼びかけたいのだ。ハイエンドな高度なグループウェアが必要な人もいれば、安いメッセージング製品が必要な人もいるのだから」と説明する。
例えば、Lotus Notes/DominoやMicrosoft Exchangeは多様なグループウェアとしての機能も備えているが、「どの企業であっても、本当に洗練されたグループウェアやコラボレーションウェアが必要な人は少数でしかなく、通常その割合は全ユーザーの1~3割でしかない。基本的なメールで事足りる人が圧倒的に多い」(ラディカティCEO)。そうした環境では、高機能であっても複雑な製品を利用する必要がなく、必要な機能だけを備えた製品を導入すれば用は済む。
ラディカティCEOはこうしたことを踏まえて、「ユーザーの中で基本的なメールでいいという人を特定し、そこには複雑な機能を持つ製品ではなくシンプルな製品を入れていくという、ミックスアンドマッチの手法で、よりTCOを下げられるのだ。車が必要だとしても、すべての車がロールスロイスである必要はないでしょう」と述べ、製品導入にあたっては、TCOに対する十分な考慮が必要であるという点を強調している。
なお、アプライアンス以外の3製品の中では、Sun Oneが優位だが、これについては、「UNIXは、特定の環境の中で作業がしやすくコスト効率が良いという側面がある。そして一台あたりのサーバーに載せられるユーザーの数が多いので、1つのボックス上に多くの人員を載せられ、全体のサーバーの数が減らせるためにコスト面で優位性がある」と述べた。
■ URL
米Radicati
http://www.radicati.com/
( 石井 一志 )
2007/10/19 11:18
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