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OSS普及を阻害する「人材不足」を解消するモデルカリキュラム-IPA


IPA OSSセンター次長の杉原井康男氏
 独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)は10月26日、オープンソースソフト(OSS)技術教育のためのモデルカリキュラムに関する調査内容を説明。調査結果の概要、およびどのような基準でモデルカリキュラム作成を進めたかなどについて説明した。

 経済産業省の「2005年特定サービス産業実態調査」によると、情報サービス業に就労するIT技術者は約48万人。IPAでは、このうちOSSスキルを持った技術者はわずか19.4%の約9万3000人と推計。「絶対的に少ない」(IPA OSSセンター次長の杉原井康男氏)とし、これがOSSの普及がなかなか進まない最大の阻害要因だとした。

 そこでIPAがめざしたのが、OSS技術者育生のためのモデルカリキュラム作成である。今回の調査では、最適なモデルカリキュラムを模索するため、OSSを利用する企業のニーズと現状の教育内容とのギャップを分析。OSS技術者を取り巻く現状を把握し、それに基づいて、真に必要とされるスキルを習得できるモデルカリキュラムの作成を進めていた。


「IT技術者のスキル」と「企業の期待するスキル」のギャップ

同調査の全体像
 調査に際してIPAは、OSS関連スキルを27種類に分け、「基礎」「システム」「ネットワーク」「プログラミング」「開発体系」「セキュリティ」「データベース(DB)」「組み込みソフト」の8区分に体系化。さらに、「レベル3:他人に指導ができる」「レベル2:独力ですべて解決できる」「レベル1:指導を受けながらであれば解決できる」という3つのスキルレベルを定義した。

 その上で具体的な調査としてはまず、OSSのユーザー企業1500社、SI事業者など1350社にアンケートを行い、自社のOSS技術者にかける期待と実際のスキルのギャップを明らかにした。回答数はそれぞれ、214社、329社。

 この結果、「ユーザー企業、SI事業者とも新卒者のスキルと会社の期待には大きな差があるが、入社5年目の技術者においてはこのギャップもだいぶ埋まっている。仕事をしていく中で、会社が求めるスキルは技術者の中に育っていくものと思われる」(杉原井氏)。

 ただ問題なのは、「そのスキル習得方法の偏りだ。ユーザー企業、SI事業者ともにOSS技術者はOJT、自己学習によりスキル向上を図っている例がほとんどで、eラーニングを含めた社内研修、外部研修などの研修プログラムの活用は非常に少ない」(同氏)と発言。

 また、8区分に体系化した27種類のスキルのうち、自然とギャップが埋まるものもあれば、入社後5年たってもなかなか埋まらないものも見受けられると指摘。「Javaやネットワークサーバー管理などは敷居が低いのか、学生のうちから勉強している人が多く、またLinuxやOSセキュリティなど業務で頻繁に実用されるスキルは5年間のうちに習得する割合が高い。一方で、システムプログラミングやDB管理、暗号化など、なかなか習得率が上がっていないものもある」と説明。中でも「OSS法務関連のスキルは習得率が特に悪く、これを重視した教育プログラムが求められる」(同氏)とした。


企業のニーズに対して、現状の教育に足りないもの

 調査としては次に、OSS技術教育に特に熱心な大学・専門学校(6校)、ならびにOSS技術教育を特徴とする研修機関(5校)を全国から見つけ出し、そこで実際にどのような内容の教育が行われているのか、どのくらいのレベルなのかを調査した。

 「今回の11校では、27種類のスキルをある程度広範にカバーしているようだった。しかし、OSSスキルに特化した教育を行うのが全国で11校では少なすぎる。すそ野を広げて行かなくてはいけない。また必要なスキルを広範にカバーしているとはいえ、レベル1の内容にとどまっている授業も少なくない。企業が新卒者に求めるスキルレベルを2とすると、教育レベルの向上も必要といえる」(杉原井氏)。


以上を踏まえて、モデルカリキュラムを提言

 こうした調査結果を踏まえてIPAは、学生共通に身につけさせるべきOSSの基礎技術力を「基礎科目」、「ITサービスマネジメント人材」「アプリケーション開発人材(エンタープライズ系)」「アプリケーション開発人材(組み込み系)」「ITスペシャリスト人材」を育てる意図で、それぞれが必修として学ぶべきものを「応用科目」、必修ではないが習得することが望ましいものを「選択科目」として定義した、モデルカリキュラムを提言した。

 提言の基本方針は、学生向けのモデルカリキュラムとしてはレベル2を達成する内容を達成すること。併せて、中堅IT人材向けの教育コースウェアも提言しており、レベル3を達成することを目的としている。

 なお、今回発表された調査結果やモデルカリキュラムの詳細については、IPAがWebサイトから調査報告書がダウンロード提供を行っているので、そちらを参照されたい。


ITサービスマネジメント人材向けカリキュラムの概要 アプリケーション開発人材(組み込み系)向けカリキュラムの概要 ITスペシャリスト人材向けカリキュラムの概要


URL
  独立行政法人 情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  調査内容ページ
  http://www.ipa.go.jp/software/open/ossc/seika_0605.html


( 川島 弘之 )
2007/10/26 17:19

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