株式会社日立製作所は10月31日、2007年度上期連結決算を発表した。売上高は、前年同期比11%増の5兆2804億円、営業利益は513%増の1216億円、税引前利益は427%増の1360億円、当期純損失は前年同期のマイナス780億円の赤字から、650億円改善したもののマイナス130億円と赤字脱却はならなかった。
|
|
2007年度上期の業績概要
|
国内・海外の売上高
|
|
|
事業部門別売上高
|
事業部門別営業損益
|
|
中村豊明執行役専務
|
|
情報通信システム部門の売上高と営業損益
|
情報通信システムの売上高は前年同期比9%増の1兆2545億円、営業利益は10%減の124億円。
そのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比11%増の5948億円、営業利益は36%増の377億円。ハードウェアの売上高は8%増の6597億円、営業利益は前年同期のマイナス140億円の赤字から、赤字幅が拡大し、マイナス253億円となった。
中村豊明執行役専務は、「情報通信システム部門の営業利益は、見通しを大幅に上回った」としながらも、ハードディスクドライブの損失拡大が、上期のハードウェア事業の赤字拡大の懸念材料となっていることを示した。
中村専務によると、ソフトウェア/サービス事業では、金融機関向けの大口システムの開発受注を獲得するなど、システムインテグレーション事業が好調に推移。海外で2社を買収したコンサルティング事業の拡大、省エネ型データセンターを活用したアウトソーシング事業の拡大などが寄与。また、JP1などのミドルウェアが順調な導入実績を見せていることが増収増益に貢献したという。「プロジェクトマネジメントの強化や、生産性向上を着実に推進していることも成果につながっている」とした。
ソフトウェアの売上高は3%増の807億円、サービスは12%増の5141億円となった。
一方で、ハードウェアは、旺盛なストレージ統合需要やディザスタリカバリ需要などによって、ディスクアレイサブシステムが国内外で事業を拡大。ブレードサーバーも小型高集積モデルを中心に出荷台数が増加し、金額ベースでトップシェアとなる好調ぶり。さらに、指静脈認証を搭載したATMが国内で引き続き堅調だったほか、中国市場向けのATMの出荷が増加した。
|
ハードディスクドライブ事業の状況
|
しかし、ハードディスクドライブ事業は、1~6月(ハードディスクドライブ事業を担当する日立グローバルストレージテクノロジーズが12月決算であるため、日立の上期決算には1~6月分を計上)の売上高が14%増の24億7900万ドルとなったものの、営業損失は前年1~6月のマイナス1億5900万ドルの損失から、3億2300万ドルの損失へと拡大した。
中村専務は、「7月からは損益は回復基調にある。2.5インチ、3.5インチ製品の拡大とともに、価格が安定傾向にあること、新製品比率を90%に拡大するなど、競争力を持った製品構成としている点が明るい材料。研究開発の成果としてヘッドなどの主要製品の歩留まり率の改善、品質の向上が図れているのに加え、資材費削減、約400人の間接人員の削減を実行した成果が出ている」とした。
さらに、日立グローバルストレージテクノロジーズに、MaxtorからCOOを、ウェスタンデジタルからCFOを迎えるなど、対抗企業の現職トップを迎え入れて、大胆な構造改革に取り組んでおり、「これまで甘いとされていた構造改革による軽量化の促進や、経営改革に速度を持って取り組んでいけるようになった」としている。
こうした動きをとらえて日立では、今年10~12月には、ハードディスクドライブ事業の黒字転換を宣言。「大手顧客への導入が本格化すること、2.5インチ、3.5インチ、サーバー向け製品へのリソースを集中すること、さらには、メキシコ工場の閉鎖をはじめとする生産・開発拠点の最適化、日本や中国の拠点における軽量化の推進によって、黒字化を達成できる」と自信を見せた。
ハードディスクドライブ事業の通期見通しは、売上高が13%増の55億ドルとし、営業損失はマイナス3億ドルにとどめる計画とした。
なお、上期のハードウェアの内訳は、ストレージの売上高が15%増の4024億円、サーバーが7%減の442億円、PC(ビジネス用のみ)が32%減の250億円、通信ネットワークが5%減の583億円となった。
電子デバイスの売上高は前年同期比横ばいの6433億円、営業利益は7%増の258億円。
電力・産業システムの売上高は25%増の1兆5983億円、営業利益は前年の赤字から1089億円改善し、636億円。
デジタルメディア・民生機器の売上高は4%減の7280億円、営業利益は前年同期のマイナス344億円の赤字から、赤字幅を拡大しマイナス508億円の赤字となった。北米市場における50インチ以上の大画面薄型テレビの販売が当初計画の半分程度にとどまっているのが影響している。
高機能材料は、売上高が7%増の9335億円、営業利益は1%増の646億円。
物流およびサービスその他の売上高は1%増の6187億円、営業利益は35%増の107億円。
金融サービスの売上高は16%減の2223億円、営業利益は18%減の129億円となった。
2007年度通期連結業績見通しに関しては、当初計画を据え置いた。
「サブプライムローン問題の影響による消費動向の減速懸念や、原材料の高騰といった問題もあり、当初計画は変更しない」とする。
売上高は、2%増の10兆5000億円、営業利益は59%増の2900億円、税引前利益は48%増の3000億円、当期純利益は黒字転換とする400億円。
情報通信システムは、売上高で前年比1%増の2兆4900億円、営業利益で38%増の830億円と増収増益を見込んでいる。
|
|
|
2007年度通期連結業績の見通し
|
事業部門別売上高の見通し
|
事業部門別営業損益の見通し
|
■ URL
株式会社日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
2007年9月中間期 決算の概要
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/10/1031.html
■ 関連記事
・ 日立、2007年度第1四半期連結決算-ストレージ事業好調もHDDは赤字(2007/08/01)
( 大河原 克行 )
2007/11/01 00:00
|