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スタートアップ企業に負けない俊敏性を維持する仕組みとは?-Symantec


Symantec インドCTOのバサント・ラジャン氏

VxMSを用いたrootkit迂回(うかい)のイメージ
 株式会社シマンテックは11月5日、Symantec リサーチラボ(以下、SRL)の活動に関する報道向け説明会を開催。Symantec インドCTOのバサント・ラジャン氏が解説を行った。

 Symantecの研究組織であるSRLでは、顧客や政府機関、大学といった外部組織と協力したリサーチ活動を行うかたわら、新技術の商品化に向けた「アドバンスドコンセプト」事業を行っている。このアドバンスドコンセプトでは、新規開発グループで開発された新しい技術分野の製品を一部のパイロット顧客へ配布。顧客の実環境にて製品のテストを実施するとともに、ビジネスの可能性を評価し、その価値が認められたものを製品グループに引き渡して製品版をリリースする、といった手順を踏む。

 これまでもSRLでは多くの技術を開発し、それを製品グループへ引き渡してきたが、その例としてラジャン氏は「RAWディスクウイルススキャン」を挙げた。これは、クライアントPC向け統合セキュリティソフト「Symantec Endpoint Protection 11.0」などで採用された技術。証拠隠ぺいや各種改ざんを行うrootkitによってファイルの存在が隠されていたとしても、VxMS(VERITAS Mapping Service)テクノロジーを用いてrootkitを迂回(うかい)し、マルウェアを検知・削除できるようにする。

 ラジャン氏によれば、このVxMSは「SymantecとVeritasの技術を初めて融合させたもの」とのこと。HDD上のNTFSデータ構造へ直接アクセスしてセクタを読み取り、各ファイルを再構築する手法を用いており、買収企業の技術を既存製品と効果的にミックスして高い価値を生み出した成功事例の1つだ。

 またセキュリティ分野では、レピュテーション技術の開発についても力を入れている。マルウェアの検知にシグネチャを用いる現在の手法では、新しい脅威が日々誕生し、個々の企業・団体や特定の地域などこれまでよりも狭い範囲を対象としたスピア型攻撃が主流となる中では、効果的とはいいにくくなっているという。さらに、シグネチャが多数リリースされる中で、ウイルス対策のフィンガープリントデータベースは増大する一方であり、パフォーマンスの劣化も問題になってきている。

 こうした流れに対してSymantecでは、レピュテーションベースのシステムが今後効果的に利用できると考えて、技術開発を行っている。これは、適正なアプリケーションのフィンガープリントを記録し、そのホワイトリストに載っているソフトのみ実行を許可するという手法で、同様の製品は過去にも存在したものの、十分なホワイトリストを作成するのは難しく、実際の環境には適用しにくかった。しかし同社は、数千万にもおよぶ膨大なユーザーを抱えており、それらのユーザーからの評価情報を利用することで、もっとも正確で最新の、世界最大のホワイトリストを作成できる見込みがついたとして、製品化を行っているという。これは、2008年の最初のコンシューマ向け製品に導入される見込みとのこと。


複数の仮想マシンで共通するファイルは1つだけ保有するようにすることで、容量の削減を実現する
 一方、データセンター管理向けの技術分野の例としては、仮想マシン対応ストレージの効率化技術を挙げた。現在のデータセンターでは、仮想化技術の導入によってハードウェアコストの節約などが実現しており、データセンターの最適化が進んでいる。しかし、「各仮想マシンではOSやWebサーバーなど同じソフトを実行しているのに、別々のデータとしてSANなどの共通ストレージに格納されてしまっている」(ラジャン氏)状況で、ストレージはまったく効率化されていない。そこでSymantecは、重複排除技術によって共通のファイルを1つだけ保存すればいいようにあらため、ストレージ容量の大幅な削減を実現したという。

 このような新技術の開発・提供におけるアドバンスドコンセプトの役割について、ラジャン氏は「製品開発において、大規模企業がスタートアップ企業に後れをとることがあるのは、革新を迅速に市場に投入できないから。そこで、新製品開発ではスタートアップ企業をまねすることにした。こうした新しい製品分野への参入については、あたかも社内にスタートアップ企業を持つかのように行っている」と説明している。



URL
  株式会社シマンテック
  http://www.symantec.com/jp/


( 石井 一志 )
2007/11/05 17:47

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