11月1日・2日の両日開催された開発者向けカンファレンス「Adobe MAX Japan 2007」では、RIA(リッチインターネットアプリケーション)のデザイナーや開発者が多数参加した。その中で、バックエンドを支える製品群として紹介されたのが、6月に発表された「LiveCycle Enterprise Suite(以下、LiveCycle ES)」だ。今回、Adobe MAX Japan 2007にも出席した、米Adobeビジネスプロダクティビティ ビジネスユニットLiveCycle Enterprise Suite担当グループ プロダクトマネージャーのアラン・ロイ氏、および米Adobe EDBUテクニカルマーケティングチーム コーポレートエヴァンジェリスト兼セールスサポートのマーク・イーマン氏に、RIA時代のLiveCycleの利用シーンなどを伺った。
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米Adobe EDBUテクニカルマーケティングチーム コーポレートエヴァンジェリスト兼セールスサポートのマーク・イーマン氏(左)と、米Adobeビジネスプロダクティビティ ビジネスユニットLiveCycle Enterprise Suite担当グループ プロダクトマネージャーのアラン・ロイ氏
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―Adobe MAX Japan 2007の参加者の反応はいかがでしたか?
ロイ氏
今回初めて日本に来ましたが、非常にフレンドリーな印象を受けました。初日の夜に行われたデベロッパーコミュニティミーティングでは、非常に活発なやり取りが行われていました。また、事例をみると、Adobe製品がさまざまな使われ方をしているのにも驚きました。表現の仕方、色の使い方が他の国と比べてあでやかで鮮やかな感じです。モバイルでの利用事例なども印象的でした。
イーマン氏
RIAのコンセプトを日本はうまく使いこなしている印象を受けました。われわれにとっても非常に勉強になります。モバイルでの活用例は、LiveCycle ESのエンタープライズソリューションを考える上で興味深いものでした。
―話をされたとのことですが、LiveCycleの認知度・利用状況はどんな感じでしょうか?
ロイ氏
私はLiveCycleの担当なので、まわりにはLiveCycleに関心がある方が集まってましたよ(笑)。ただ、実際にどの程度利用されているかといった数値まではわかりませんが。
イーマン氏
(フロントエンド側の)RIAを作っている方が、Adobe MAXでLiveCycleの利用事例などを体験して、(バックエンドの)データベースやビジネスプロセスが存在することに気づいていただけたのならありがたいですね。それにより、RIAの開発者がLiveCycleでスキルを発揮していただければうれしいです。
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LiveCycleを利用した定型文の作成フォーム。フォームで選択した内容をPDFに反映できる
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―Adobe MAXの場で拝見したためかもしれませんが、やはりLiveCycleは地味ですよね。
ロイ氏
確かにそのとおりですね。しかし、今はFlexとの統合により、RIAをフロントエンドで使えるようになりましたので、印象は変わりつつあります。
たとえば、LiveCycle ESで大幅に強化されたForm Guideを利用すると、ひとつのソースからPDFやHTML、Flashなどさまざまな形式で生成することができます。これにより、PDFで紙のイメージを持ったインターフェイスを作ったり、Flashを使えばインタラクティブなフォームを用意できます。
イーマン氏
また、利用者の好みで生成方式を選ぶこともできますし、業界で特定のフォーマットがある場合、(PDFで)それに応じたフォームを作成することもできます。
ロイ氏
重要なのは、同一のテンプレートから生成しているため、同じビジネスロジックが使われるという点です。たとえば、メールアドレスを利用するフォームの場合、間違った内容を入力したときにPDFでもFlashでもまったく同じようにエラーを返すことができます。
イーマン氏
AdobeとMacromediaが統合する話が出たときに、多くのユーザーはPDFかFlashか、どちらかを選ばなければいけなくなるのではないかと考えたようです。しかし、結果は両方のいいところを取り入れたソリューションとして提供することができました。
―エンタープライズユーザーではPDFでビジネスが完結しているのではないでしょうか? Flashで作るリッチなインターフェイスをすぐに利用しようとはおもえない気もします。
ロイ氏
そういったユーザーこそ、Form Guide機能が有効なのです。シングルテンプレートになったことで、これまでPDFを生成していたのと同じように、Flashも生成できますから。見比べて決めるなんてこともできます。また、PDFと違ってFlashならば動画を組み込んだ視覚的なフォームなども作れますから、操作ガイドを動画で再生するなんてことも可能です。
イーマン氏
多くの人がPDFに慣れているのは確かです。RIAを使うことに気づいている人はまだまだ少ないかもしれません。RIAのビジネス利用は、やっと見え始めたという感じではないでしょうか。
―AIRなどを見ていると、ユーザーインターフェイスが今後重要になってくるという印象を受けます。
イーマン氏
そうですね。その意見に賛成です。ユーザーインターフェイスエクスペリエンスを向上させるのはMicrosoftではありません。Adobeはツールズカンパニーです。あくまでもツールを提供する企業です。クリエイティブなマインドを持つ方を刺激するツールを提供するのが得意な企業であると自負しています。
ロイ氏
AdobeとMacromediaが一緒になったとき、社内には“amazing!”という感覚が起こりました。一緒になったことで、あれもできる、これもできるという新しいエネルギーが生まれたのです。そこからLiveCycleでいえばForm Guideのような新しいアイデアも誕生しています。
イーマン氏
Adobeに勤めて10年になるが、あれほど興奮したことはなかった。PhotoshopやAcrobatがつまらなかったという意味ではありませんよ(笑)。
―LiveCycleの次期バージョンでは、どのような新しいアイデアが組み込まれるのでしょう。
イーマン氏
まだ何も公式アナウンスはしていないので、はっきりとは言えませんが、AIRが大きく関わってくるでしょう。たとえば、営業担当者のように出先からネットワークに接続したり切断したりを繰り返すような使い方をしている場合でも、違和感なくビジネスを継続できるような環境を実現できると考えています。
CEOのブルース・チゼンがウォール街でアナリストに対し、「これまでのAdobe製品の中で、LiveCycleソリューションが一番大きな可能性を秘めた製品」とアナウンスしています。次の5カ年の成長を期待してください。
■ URL
アドビシステムズ株式会社
http://www.adobe.com/jp/
( 福浦 一広 )
2007/11/08 08:59
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