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スティーブ・バルマーCEO、“Software+Services”を語る-米Microsoft

Microsoft Japan Partner Conference 2007講演

 米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが、11月8日に、東京・六本木のグランドハイアット東京で開催した「Microsoft Japan Partner Conference 2007」で講演を行った。

 バルマーCEOは、冒頭、「Thank You」と書かれたスライドを示し、「Microsoftは、ビル・ゲイツが創業した際に、ソフトウェアに特化することを決め、それ以来、パートナーを通じてビジネスを行っている。直販をするのではなく、パートナーと一緒に努力することで強くなっていく企業だ」と切り出した。

 また、2007年7月から始まった同社の2008年度において、OSやセキュリティ、運用管理、エンターテイメントなどの数多くの製品を投入することを示し、「2008年度は、2007年度以上にワクワクする1年になる。なかでも、Windows Server 2008、SQL Server 2008、Visual Studio 2008の3つのプロダクトが、大切になる」とした。


バルマーCEOが提示した「Thank You」のスライド 2008年度に発売する製品群 その中でもWindows Server 2008、SQL Server 2008、Visual Studio 2008の3つが大切だという

米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO
 バルマーCEOは、今回の講演のなかでは、「Software+Services」を、キーワードに話を進めた。

 「Software+Servicesは、どう技術が実装されるか、どうビジネスモデルとして展開していくか、が重要なポイントとなる。これから10年後の世界はどうなるか。私は、データやトランザクションの多くが、自社のファイアウォールのなかで展開され、独自に管理されているという今の使い方から、情報やシステム管理の機能、アプリケーションやデータなどが、インターネットクラウド上に格納され、社員が持つリッチクライアントやモバイル機器から、これらを利用するようになると考えている」とした。

 クラウドから配信されるサービスを、パソコンや携帯電話で利用する世界を、Microsoftは描いているというわけだ。

 だが、こうも語る。「Webブラウザで機能するものもあり、また、リッチなクライアント環境で機能するものもある。シンクライアントの世界になるという人もいるが、私はそれだけの世界にはならないと考えている。また、Software+Servicesはホスティングの世界と同じではないかという声もあるが、ホスティングは、独自の環境を作り、自社以外のデータセンターに情報を格納するというものであり、アーキテクチャの再構築といった観点が強い。Software+Servicesの世界では、セキュリティレベルの高い環境で、インターネットクラウドからさまざまな用途で利用できるようになり、しかも、標準的なものを使い、多くの企業がこれを共有しながら利用することになる。低コストで、俊敏性を発揮できる環境を実現でき、エンタープライズシステムのいいところ、インターネットクラウドのいいところ、モバイルデバイスのいいところを組み合わせたプラットフォームが提供できるようになる」。

 一方でまた「ただし、これは、一夜にして変化するのではなく、ゆっくりと変化していく。ここ数年は、既存のビジネス同様に、ソフトウェアプロダクトを販売していくが、ゆっくりとその形は変わっていくことになる。それに伴い、Microsoft自身のビジネスも、パートナー自身のビジネスのやり方も変わっていく。そこで、お互いに協力できるチャンスを見つけだしていく必要がある」とした。


 ビジネスの変化については、バルマーCEOは、ひとつの事例をあげた。

 「いまから10年前に、パートナーには大きなビジネスがあった。それは、TCP/IPのプロトコルスタックをWindowsに実装するというビジネスである。しかし、Windowsに標準で実装されるようになり、パートナーにとっては、ビジネスを奪われることになるという人もいた。だがこの移行によって、パートナーにとっては、さらに大きなオポチュニティを切り拓くことができた。同様に、Software+Servicesも新たな機会をもたらすことになるだろう。仕事はなくなる可能性はある。しかし、変化することで、ビジネスはなくならないはずだ。ITインフラ投資のうち、約70%が既存システムの保守・運用のために利用されているのが現状。しかし、Software+Servicesによって、ユーザー企業は新たなITやビジネスバリューに投資していくことができるようになる。そうした時代の変化にあわせたスキルを身につけることが大切。ビジネスモデルを再定義することも大切だ」とした。

 また、「Software+Servicesによって、Microsoftは直販するのではない。パートナーを通じた再販を行うこと、パートナーがカスタマイズをしていくこと、サービスを統合したり、独自のサービスを組み込んで提供したりすることができる。Windows Liveにおいても、ホスト運用型の仕組みや、自社運用、サービス提供、再販のほか、カスタマイズをはじめとする開発サービスなどのチャンスもある。Microsoftは、これからもすばらしい製品を出し、利益を出し、顧客満足度を高める。常に、新たな方向性を押さえて、新しいテクノロジーを作り出し、ビジネスを拡大する」とした。


マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長

People-Readyビジネスの概要
 一方、日本法人のダレン・ヒューストン社長は、3年目に突入したPlan-Jが順調に進ちょくしている状況を説明。Win-Winのパートナーシップを拡大し、IT業界のパートナーと深いエンゲージメントを実現していること、日本市場にあわせたイノベーションが進展していること、デジタルインクルージョンの促進を進めていることを示した。だが、その一方で、先進的なデジタルワークスタイルを進展させていく必要があることや、日本における生産性を引き上げていく必要があることを指摘した。

 「マイクロソフトでは、People-Readyビジネスを実現することに力を注いでいるが、ここにはセキュアな環境基盤、ビジネス生産性基盤、アプリケーションプラットフォーム、重点ソリューションエリアの4つの観点がある。People-Readyビジネスは将来のビジネススタイルになる。オープンスタンダードの活用によって、パートナーのみなさんには多くのビジネス機会を生かしてほしい。マイクロソフトは、信頼される文化を作り、パートナーを支援していきたい。パートナーのみなさんには、自らの会社で当社の製品を使っていただくこと、新製品に対する準備に取りかかっていただくこと、スキルを高めること、マイクロソフトのプラットフォームを使って差別化できる強みを追求することを要望したい。そして、当社製品の良さを語ってほしい」などとした。


質問に回答する米MicrosoftのバルマーCEO(中)と、日本法人のヒューストン社長(右)、樋口COO(左)
 講演の最後には、質疑応答の時間が設けられ、バルマーCEOのほか、日本法人のヒューストン社長、樋口泰行COOが登壇した。

 Software+Servicesによって、パートナーとの関係はどう変化していくのかという質問に対しては、「パートナーとの関係は進化していく。だが、この世界においても、再販モデルを整備して、Microsoftのサブスクリプションを販売した場合にも、パートナーが収入を得られるようにする」とし、「Software+Servicesを導入するのは、まずはコンシューマであり、次にエンタープライズ、中規模企業という形になるだろう」などとした。

 また、樋口COOはこれを補足し、「マイクロソフトは、パートナー戦略が基本。SaaSの仕組みを導入しても、パートナーの枠組みを提供していくことは変わらない。パートナーを通じて、顧客に付加価値を提供していく」とした。

 一方、Dynamicsに関する質問については、「Dynamicsは参入したばかりであるが、Dynamics CRMおよびAXをサポートする専門人員が約30人いる」とヒューストン社長が説明。樋口COOは、「Dynamicsこそ、パートナーの力を借りなければできない商品。業種、業務の実績や、ERPのノウハウを持ったパートナーとやっていく。営業、マーケティング、エンジニアをひとつにまとめて推進する体制としており、これからがんばっていく」とした。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/


( 大河原 克行 )
2007/11/08 17:45

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