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「業界標準技術で複雑なシステムの簡素化に尽力」、米Oracleフィリップス社長

Oracle OpenWorld 2007基調講演

チャールズ・フィリップス社長
 11月11日より開始されたOracle OpenWorld 2007。初日のオープニングキーノートに続き、今日もセッション開始前から講演会場の前には長い列ができあがっており、非常な盛況の中、チャールズ・フィリップス社長の基調講演で2日目が始まった。

 フィリップス社長は講演の中で、Oracleには大きく分けて3つのコアビジネスが存在するとしたが、そのうちもっとも著名な分野はもちろん、創業以来手がけられてきたデータベースのビジネスだ。同社は今年、4年ぶりの最新版「Oracle Database 11g」を提供したばかり。この分野ではイノベーションの結果、47%にまで市場シェアを拡大し、「2位と3位を組み合わせたよりも高いシェアを獲得している」状況で、今後はさらに、「セキュリティ、パーティショニング、RACなどでこれからも進展していく」と述べた。

 また2つ目のミドルウェアビジネスについては、「市場アナリストによれば、例えばGartnerのマジッククアドラントの中では、すべての領域でトップであり、前四半期と比べて129%の成長を遂げるなど、より早く伸びている」という状況を説明。「競合ベンダーは成長率が衰えているものの、当社には勢いがある。個々の製品市場もあるが、当社ではスイートとして考えており、これが、ミドルウェアがより大きく成長している重要な部分だろう」とした。

 最後の分野は、ビジネスアプリケーション領域。ERPやCRMといった個々の製品分野も進化しているが、「銀行、官公庁など、個々の業種に特化したアプリケーションを多く開発してきた」というように、同社では業種別の製品にも力を入れてきた。この分野では企業買収も積極的に行われており、流通向けのRetek、物流向けのG-Log、金融向けのi-flexといったベンダーを取り込み、製品力の充実を行ってきている。

 このように、Oracleでは数多くの製品によって顧客企業を支援してきたが、フィリップス社長は、「現在のITシステムにおける一番大きな問題として、システム環境が複雑化されてしまっていることがある」と指摘。さらに「業種ごとの課題は個別に解決されてきており、すべてを1社で解決できるところはなかった。しかしその結果、システムの細分化・断片化が起こり、全体を管理する人間に負担がかかる結果になってしまっている」(同社長)と話す。

 Oracleでは、こうした状況を改善するために「プロセスを業種ごとに統一し、責任を持って当社がインテグレーションを解決しようとしてきた」という。しかも、独自技術を使うのではなく、すべて業界標準に基づいて、一貫した形で行うことが重要とした上で、その結果「全環境を一目で見て、一元的に管理可能になった」と成果を強調した。もちろん、Oracleによる各製品ラインをまたがったシングルサポートの提供も、この戦略の一環だ。


基調講演の後半には、サーバーテクノロジー担当のチャック・ロズワット上級副社長も登場。製品担当者とともに、デモンストレーションを観客に披露した
 今回のOracle OpenWorld 2007でも、その戦略に基づく多くの発表がなされたが、その中でも、大きなものの1つといえるのが、「AIA(Application Integration Architecture)」のアップデートだろう。AIAとはひとくちで言うと、「ミドルウェアのスタックを使いながらパッケージされたアプリケーションを統合できるもの」(フィリップス社長)。
 ここで、サーバーテクノロジー担当のチャック・ロズワット上級副社長も登場。フィリップス社長の発言を補足し、「APIやデータフロー、データフォーマットの提供などにより、AというアプリケーションとBというアプリケーションを一緒に使えるようにする。これによって、文字通りの接続が可能になる」とAIAのコンセプトを説明する。さらに、「具体的なワークフローなどにより、完全なソリューションが提供できる。しかも、SOA Suiteに基づいているため、オープンなメッセージバスの上に載せられる点もメリットで、統合を可能にすると同時に、インテグレーションをオープンに展開できるようにする」とアピールした。

 ここでロズワット氏が説明したものが、今回新たに発表された統合支援パッケージ「Foundation Pack」だ。Oracle SOA Suite向けに提供されるこの製品を用いれば、サードパーティや企業が内製したソフトに対しても、Oracle製品同士と同等レベルの統合が可能になるという。現在、AIAでは各種アプリケーション製品に業種別ソリューションパックを付加する「Process Integration Pack」が提供されており、オーダーマネジメントなどの分野で活用されてきたほか、同日に「Siebel CRM Trade Management」とOracle EBSとのインテグレーションパックも発表されている。これらの製品を用いれば、当該アプリケーション間での完全な統合が行えるのだが、ここに、すべてのアプリケーションを対象とするこの新製品が加わることによって、さらに統合の範囲を広げられるようになる。基調講演中に行われたAIAのデモでは、開発ツールのOracle JDeveloperを利用し、容易な操作でアプリケーションの統合を実現できることを示した。

 Foundation Packのコンポーネントとしては、ユーザーの開発プロセス合理化を支援するツールのほか、サービスとその関係を可視化する「Business Service Repository」と、インテグレーションのテストを支援する「Composite Application Validation System」が提供される予定となっている。

 「統合されている、データレベルでもプロセスレベルでも統合されており業界標準に基づいている。すでにあるこういったものを使っていきながら統合させていくことで、まったく新しいカスタム化の世界が生まれてくるだろう」(ロズワット氏)。



URL
  Oracle OpenWorld 2007(英語)
  http://www.oracle.com/openworld/

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( 石井 一志 )
2007/11/13 14:51

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