|
米Oracleのラリー・エリソンCEO
|
|
Fusion Applicationのデモ画面
|
多数のエグゼクティブが登場したOracle OpenWorld 2007の基調講演の最後を飾るのは、やはり米Oracleのラリー・エリソンCEO。同CEOは、11月14日(米国時間)に行われたこの講演の中で、次世代ビジネスアプリケーション「Fusion Application」を2008年上半期に提供することを明言したほか、その特徴などを解説した。
エリソンCEOはまず、Fusion Applicationの特徴について、「SOAに基づいた標準ベースのミドルウェアで構築されるほか、プロセスの自動化だけでない点が従来と異なる。よりよい意志決定ができるようにBI(ビジネスインテリジェンス)を内包する点が、大きな差別化要素だ。またSaaSとしてサービスを提供できるようにしている」と紹介。続けて、「Fusion Applicationは新しいGL(General Ledger:一般会計モジュール)なの?とよく聞かれるが、そうではない。もちろんGLは提供されるが、たくさんのコンポーネントが備ってくる」と述べた。
ただし、Fusion Applicationだけを提供するわけではない。エリソンCEOは、「Fusion Applicationが良いからといって、顧客におけるすべてのアプリケーションを、すぐにFusionベースにすることはできない。既存のアプリケーションとスムーズに共存させ、自分たちのタイミングで移行が可能なようにする。Oracle EBSが良ければ使い続けることもできる」と話す。Oracleでは、Application Unlimited戦略に基づいて既存アプリケーションのサポートを継続し、顧客のペースに合わせてFusion Applicationへの移行を可能にするという発表を何度も繰り返してきたが、この講演でも、エリソンCEO自身の口からそれを確認した形だ。
また同CEOは、業界標準のミドルウェア技術を用いているため、既存アプリケーションとの統合を容易に行えると主張。既存製品との統合性を重視し、SOAベースのプリパッケージされた統合パックを提供していくとした。
肝心の提供時期については、「2008年上半期」を明言。「最初のアプリケーションとして、SFA(営業支援)を提供する」とした。ただしSFAといっても、「Siebelの後継ではなく、共存するもの。フォーキャスティングの機能を備えた、セールスプロスペクト(見込み客の獲得)ソフトウェアだ」という。エリソンCEOはこの製品を説明するにあたってAmazon.comのレコメンド機能を引き合いに出し、「同じDVDを買ったほかの人に、こういうものが一緒に売れていますよ、と紹介するのと同じ。顧客が何を買っているのかを発見するのは、最高のリファレンスであり、また同じような製品を売るにあたっての、有効な説得材料になる。いわば、セールスの人間に対するBIである」と説明した。
なお、この製品は既存のERPやCRMとの統合をサポートし、そのために事前設定されたPIP(プロセス統合パッケージ)が用意される。「ERPには、顧客の注文情報があり、どういう製品を買ったのかという履歴があるので、セールスプロスペクターはその上にのせることになる」(エリソンCEO)。
|
エリソンCEO登場前には、歌手のビリー・ジョエル氏が登壇し、Oracleの30周年に祝福のメッセージを贈っていた
|
一方でエリソンCEOは、Oracle OpenWorld 2006で発表したUnbreakable Linuxのこの1年の動きを振り返る。「Red Hatは今でも伸びているので、Oracleはうまくやっていないのではないか、という噂があったが、Linux市場は健全な市場だから、Red Hatも伸びているし、Oracleもそれ以上の速度で伸びている」と、堅調なビジネスであることを強調。「150カ国で顧客を支援し、大手企業を含めた1000以上の顧客がOracleのサポートを利用している。顧客もパートナーがたくさんいる」と、順調さをアピールした。
また、発表したばかりのOracle VMについても触れ「Red Hatがやっていないことをやろうということで、Oracle VMを発表した」と述べる。「手ごろな価格設定が非常に魅力的で性能も高い。また、マシンAからマシンBへ、アプリケーションを機能させたままスムーズに移行できる。データセンターを最適化するときには、非常に重要な要素だ。もっとも、この機能は競争相手もやろうとしているが、Oracle VMでは、Linuxにも対応した統合管理コンソールがある。さらに、当社のデータベースでもミドルウェアでも、Linuxと仮想マシンのスタック上で動作することが確認済みだ」(エリソンCEO)。
■ URL
Oracle OpenWorld 2007
http://www.oracle.com/openworld/
( 石井 一志 )
2007/11/15 16:49
|