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執行役員常務の丸山好一氏
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日本電気株式会社(以下、NEC)は11月26日、企業のITプラットフォームの省電力を実現する技術、製品、サービスの開発・提供に関する計画と活動を「REAL IT COOL PROJECT(リアル・アイティ・クール・プロジェクト)」として策定したことを発表した。あわせて、同プロジェクトで策定した省電力技術を具現化する新サーバーとして「ECO CENTER(エコ・センター)」(開発コード名)を開発し、今年度末に発売する計画を明らかにした。
REAL IT COOL PROJECTの発表にあたり、執行役員常務の丸山好一氏は、国内の地球温暖化対策を巡る動向について、「いよいよ2008年から京都議定書の第一約束期間が始まり、2012年までに温室効果ガス(CO2など)の排出量を1990年比6%削減することを目指し、各国が具体的な活動を開始する。日本の状況を見ると、CO2の排出量は2005年度で1990年比8%増加しているのが現状。とくに、業務領域におけるCO2排出量の増加率が最も大きく、90年比で44.6%も増えており、2010年に向けては44.2%削減しないといけない状況にある」と指摘。
こうした背景の中、今回のREAL IT COOL PROJECT策定の狙いについて丸山氏は、「当社では、以前から環境問題に積極的に取り組んでおり、2002年度からは環境経営コンセプト『IT、で、エコ』を打ち出して、ITと環境の調和を図る環境改善に力を注いでいる。そして今回、この動きをさらに加速するために、省電力ITプラットフォームへの取り組み『REAL IT COOL PROJECT』を策定した。同プロジェクトでは、IT機器そのものの省電力化だけでなく、データセンターにおける空調やUPS電源分配といった付帯設備の使用電力削減も含め、IT機器とファシリティの両方をカバーする省電力化を推進していく。これによって、2012年までに顧客のITプラットフォームが消費する電力を年間50%、IT機器のCO2排出量を累計で約91万トン削減することを目指す」と意欲を見せた。
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NECの環境経営の推移
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NECのCO2削減宣言
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省電力ロードマップ
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「REAL IT COOL PROJECT」とは
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REAL IT COOL PROJECTは、同社が昨年度に発表したITプラットフォームビジョン「REAL IT PLATFORM」に基づくもので、省電力化への具体的な取り組みとして、1)省電力プラットフォーム、2)省電力制御ソフトウェア、3)省電力ファシリティ、の3つの領域を設定している。
まず、省電力プラットフォームでは、CPU、メモリ、ディスク装置などに省電力化コンポーネントを採用するとともに、仮想化基盤を組み合わせることで、サーバー、ストレージなどハードウェア機器の省電力化実現を図る。この取り組みの一環として、データセンターの設置環境に最適な高密度・省電力サーバー「ECO CENTER」を新開発し、今年度末をめどに発売する計画。ECO CENTERは、高さ2mの19インチラックマウント筐体の中に500コアを集約することで、従来機と比較して設置スペースを最大75%、コアあたりの消費電力を最大60%削減するとともに、最大60%の軽量化を実現。ファシリティコストは、同社推定で約60%の削減が可能だという。また、同製品では、国内のデータセンターで一般的な1ラックあたり6KW以下の電源設備環境に対応したモデルも提供する予定。
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省電力プラットフォームの取り組み
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新省電力サーバ「ECO CENTER」の概要
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このほか、スーパーコンピュータやメインフレームの開発で培った自社開発技術を採用した製品を順次投入し、ITプラットフォーム全製品にわたって省電力化を推進していく。ブレードサーバー「SIGMA BLADE」では、筐体マネージメントモジュールによるきめ細やかな省電力機能を提供し、ラックサーバー比約15%の省電力化を実現。データセンター向けIAサーバー「Express5800/iモデル」では、データセンターのサーバー設置環境にあわせて省スペース・省エネルギーを追求し、ラックあたりの設置台数を2倍に向上するとともに、1台あたりの電気料金を約60%削減する。
また、SANストレージ「iStorage Dシリーズ」では、スケーラブルアーキテクチャおよびMAID技術の搭載によって、最大31%の消費電力を削減。バックアップストレージの「iStorage HS8」では、バックアップデータ内の重複部分を排除し、1/20のデータ圧縮を実現。これにより、通常のディスクtoディスクのバックアップ装置に対し、消費電力を77%削減できるという。
これらの省電力プラットフォームを支える主要テクノロジーである「冷却」と「電源」への取り組みについては、冷却では「実装最適化」と「高性能冷却」を追求。伝送回路設計と冷却設計によって、冷却に必要な電力を最大50%削減するとともに、2倍の冷却性能をもつ次世代液冷技術をベースにした高性能冷却の開発を進めていく計画。さらに、専業メーカーとのアライアンスにより局所冷却を2008年に実用化し、空調電力の20%削減を目指す。
一方、電源では、「高効率電源」と「高圧直流受電」に注力。PC/サーバー用電源の変換効率を2010年までに92%に高め、変換損失の70%削減を実現するとともに、世界的に注目されている高圧直流受電技術を2008年にいち早く製品化し、電源設備・IT機器の消費電力10%削減を目指す。
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省電力制御ソフトウェアの取り組み
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省電力制御ソフトウェアの取り組みとしては、サーバー・ストレージの省電力機能を効率的に制御し、データセンターやマシンルームにおけるIT機器そのものの消費電力を自律的に削減可能とする機能を運用管理ソフトウェアに追加することで省電力を実現する。具体的には、プラットフォーム管理ソフトウェア「WebSAM SigmaSystemCenter」および統合管理ソフトウェア「WebSAM MCOperations」により、1)業務の優先度と許容量に応じて消費電力量を制御する「強制省電力」(2008年度下期予定)と「総消費電力制限」(2008年度上期予定)、2)「VMware Infrastructure 3」などの仮想マシンを業務負荷に応じて効率的に集約し、余剰サーバーの電源を切断することで省電力を実現する「余剰サーバーの自律電源OFF運用」(2008年1月提供)、3)機器のホットスポット(熱源)を検知し、業務の効率配置と空調制御により冷却効率を改善する「ホットスポット解消」(2009年度予定)、などの機能を実現し、順次提供していく計画。
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省電力ファシリティサービスの取り組み
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省電力ファシリティサービスへの取り組みでは、データセンターやマシンルームにかかわる環境の調査、設計、構築、運用にいたるまでの各種サービスを、NECフィールディングの「ファシリティ設計・構築サービス」として提供開始する。
同サービスでは、マシンルームの発熱をコンピュータ上でシミュレーションし、IT機器と空調設備の最適なレイアウトを設計・提案する「熱シミュレーションサービス」を2008年1月から提供するほか、電源センサーや温湿度センサーからのマシンルーム運用情報をもとに、業務負荷の配置や空調機・IT機器のレイアウト改善の提案などを行うことで省電力を実現する「省電力監視・運用サービス」を2009年度に提供する予定。なお、「熱シミュレーションサービス」のモデルケースでは、空調電力20%、電気代で年間約300万円の削減を実現できるとしている。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
プレスリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0711/2601.html
( 唐沢 正和 )
2007/11/26 16:34
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