Enterprise Watch
最新ニュース

ブレードサーバーの生産も開始した、日本HP東京・昭島工場レポート


日本における日本HP生産拠点「東京・昭島工場」
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は、キャリアグレードの「HP BladeSystem」投入に加えて、「HP BladeSystem c-Class」を東京・昭島工場で生産開始すると発表したが、その拠点となる同工場生産ラインを報道関係向けに公開した。

 生産拠点を東京に構えたことで、同社では、海外からの輸送コストを抑制でき、物流コストも15%削減できたという。また製品の長距離移動もないので、販売後の初期不良や故障発生率が低減、品質コストやサポートコストも削減、さらにCTO(注文仕様生産)で在庫コストも削減した。日本HPでは、こうしたさまざまなコスト削減効果を製品のコストパフォーマンスに還元しているほか、厳しい納期要求や厳密なテスト、構成フレキシビリティなどにも応えられるようにした、と意欲的な戦略をアピールしている。これまで日本向けにはシンガポール、中国、台湾などが主要生産拠点であるが、サーバーの場合40~45%程度が日本での生産で、今後はさらに日本での生産がもたらすメリットが反映しその比率は高まるもようだ。

 工場における具体的な生産は、ライン方式による「HP Pavilion Desktop PC」の製造をはじめセル方式による「HP ProLiant」などx86サーバーの製造に加えて、「HP BladeSystem c-Class」の製造を12月11日から開始した。また日本に生産拠点があるからこそ可能なシステムインテグレーションサービス「HP Factory Express Service」に関する製造等も行われている。


昭島工場のフロア構成
 東京・昭島工場では、3階にPC製造ラインをはじめx86サーバー製造ライン、ブレードサーバー製造ライン、HP Factory Expressなどの主要機能を集結させている。生産部材を保管する4階から各製品に必要な部材が持ち込まれ、製品化後、1階から搬出されていく。製造のためのフローは、PCの場合が、アッセンブリ(組み立て)からプリテスト(初期動作試験)、ランイン(連続動作試験)、ソフトウェアインストール、抜き取り検査、梱包を経て出荷される。またx86サーバーの場合がアッセンブリからプリテスト後、まとめてランイン・ソフトウェアインストール・抜取り検査を経て、ラッキング工程、システムインテグレーションの後、出荷される。ここではサーバーの製造を独自のセル方式で行う。なおx86サーバーは、シャーシに一つ一つのパーツを追加するフルカスタマイズCTO(注文仕様生産)でユーザーニーズにこたえていく。


PC・ワークステーションの製造ライン


PCやワークステーションのアッセンブリ。1ライン6mの中で1台1台異なる機種を組み立てていくが、全体の90%が5台未満の注文という。約1分に1台の割合でPCが組み立てられていくが、全体の生産時間は1台あたり2~3時間だそうだ。使用部品はバーコード管理され、間違った部品が選択されると先に進めないようになっている。 PCのプリテスト。注文どおりか否か、CPUクロック周波数をはじめメモリ容量、HDD容量などハードウェア構成の自動検査および対話式テストなどを行う。このとき専用ソフトウェアをネットワーク経由で1台1台にダウンロードしテストする。テスト項目数は対話式テストと自動検査合計で最大50項目。工程は約15~20分。 PCのランインおよびソフトウェアインストール。ランインでは、PCにプリテスト後の過負荷テストなど連続動作試験をサーバーで行う。またソフトウェアインストールは、サーバーによる集中管理のもと、OSやアプリケーションがインストールされる。ランインからソフトウェアインストールまでの工程は約2~2.5時間。

PCの抜き取り検査。ユーザーの使用環境に近い検査を抜き取りで行う。実際にプリンタを接続して印刷したり、マイクとスピーカを接続して録音・再生したり、DVDの再生を行う。 場合によっては、PC本体に重さ6kgの漬け物石をのせて検査を行うこともあるという。重いCRTモニタが載っても不具合が起きないか否かを見極めるためだ。工程は約40分。

PCの梱包・出荷。製品の清掃と外観検査、付属品の員数検査(バーコード管理)と添付、箱詰めそして保証書とラベル貼りが完了後、晴れて出荷となる(ここで抜き取り検査を行う場合もある) 出荷可能な状態となったPC。注文から基本4営業日での出荷が厳守されるそうだ。

x86サーバーの製造ライン


x86サーバーのアッセンブリ。専用の組み立てベンチによる少量多品種生産を行っており、このラインで廉価版からハイエンドまで製造する。またバーコードリーダーによる構成品チェックと各部品に組み込むS/N(シリアルナンバー)の取得も行う。x86サーバーの場合は、PCやワークステーションのような作業分担制ではなく、一人の担当者が組み立てから完成まで行うセル方式を採用している。工程は10~30分程度。 x86サーバーのプリテスト。診断プログラムによるハードウェア構成チェックと機能検査(自動および人間が立ち会ってLEDの光具合などをみる対話式)を行う。約30分の工程。

x86サーバーのランインおよびソフトウェアインストール。米HP本社で組まれたワールドワイド用診断プログラムによるロングランテスト(自動)を行う。約6~12時間の工程。手前の画面はテスト状況を表している。x86サーバーのソフトウェアインストールは、OSとアプリケーションのソフトウェアインストールを行う。 x86サーバーの抜き取り検査。FPIA(Factory Product Integrity Audit)は、アッセンブリからここまできたもののうち10%を検査する。構成はじめケーブリング、機能、付属品の確認を行う。またさらにそれらのうち10%を対象にCDIT(Customer Driven Interactive Test)により、エンドカスタマーの視点で員数はじめ外観、機能確認などの検査を行い、梱包される。

ブレードサーバーの製造ライン


HPブレードサーバーのアッセンブリとプリテスト、ランイン。ここではトレーニングを受けた担当者があたる。専用組み立てベンチによる少量多品種生産。バーコードリーダーによる構成品のチェックとS/N取得が行われる。プリテストは、診断プログラムによるハードウェア構成チェックと機能検査(自動と対話式)が行われる。約30分の工程。またランインは診断プログラムによるロングランテスト(自動)が行われる。約6~12時間の工程。 HPブレードサーバーの抜き取り検査。CDITにより10%を対象として、エンドカスタマの視点で、構成や機能確認などの検査が行われる。 HPブレードサーバーの梱包・出荷(写真左側)。付属品のチェックおよび添付後、梱包・出荷される。

HP Factory Express

HP Factory Expressの工程
 客の希望どおりにラックへの機器組み付けなどを行うのが、「HP Factory Express Process」。付随の信号ケーブルや電源ケーブルは、各機器からの廃熱と設置後メンテナンス性を考慮して取り回しする。

 レベル1~5まであり、レベル1はサーバー単体での組み込みやOSインストールなどシステムインテグレーション作業。レベル2はレベル1にラッキング作業を加えたもので納品まで。設置や動作確認など保守が可能なパートナー向け。レベル3はレベル2にオンサイトサービスを加えたもの。保守が不可能なパートナーの場合にHPエンジニアが赴き、代わりに行う。レベル1~3は顧客にとって価格を抑えられるメリットがある。

 またレベル4、5はバリューサービス。レベル4はより複雑なラック単位でのシステムインテグレーション作業で、現場での設置や動作確認のほか、パートナとともに構成書の作成・確認なども行う。レベル5はレベル4に専任技術者によるコンフィギュレーションなどを加えたもの。設定値の設計支援や技術支援オリエンテーションも行う。


顧客の注文通りに組み込みや動作確認、ファームウェアのバージョンアップなどを行う作業。ここではアッセンブリやテスト、最終検査など認定された作業者が担当する。ここで、サーバー単体の作業のみの場合は終了後このまま梱包出荷される。 システムインテグレーション。サーバー単体やラッキングなどを終えて必要に応じてここでOSのインストールなどインテグレーションが行われる。従来の構成指示書にしたがった多くの手入力による設定を省略し、CDとフロッピーを挿入してブート後はインストール終了までノータッチといった自動化により、入力ミスを減らし効率化している。注文した顧客も随時ここで確認できるようにもしている。 非常に多くの注文を、ミスなく管理するためにこうした画面でインテグレーション作業の進ちょく状況を確認できる。具体的な作業中と終了は一目瞭然だ。

HP Factory Expressを利用するあるビッグな案件例。この例は16ラックでブレード380枚というスケールの大きなものだ。 UNIXハイエンド機である「HP Integrity Superdome」導入を行うHP Factory Expressの例もみられる。


URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/

関連記事
  ・ 日本HP、ブレードサーバーを国内生産-国内シェア50%を目指す(2007/12/11)


( 真実井 宣崇 )
2007/12/13 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.