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IBCS、CFOへの調査結果を発表-世界規模での企業統合が成長の鍵に


 IBMビジネスコンサルティング サービス株式会社(IBCS)は12月14日、世界の主要業界のCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)と経理財務部門の上級管理職を対象に行った調査「IBM Global CFO Study 2008」の結果を発表した。

 その結果、以下の3点の結論が明らかになった。

  1. 経理財務組織が統合化された企業は、企業の効率化が実現するなどの要因により収益性が向上する傾向が顕著に
  2. 統合化された組織実現には、正確な社内数値の把握のために業務プロセスおよびデータの統合が不可欠
  3. リスク管理責任者として、CFOの役割がますます重要に

 IBCSでは、今回の調査で明らかになったCFOおよび経理財務部門の上級管理者が抱える課題をふまえ、経理財務部門の変革を支援し、BPM(ビジネス・パフォーマンス・マネジメント)やリスクマネジメントに関するフィナンシャル・マネジメント・サービスをさらに強化していく。


執行役員 パートナー フィナンシャル・マネジメント・サービス担当の渡邊達雄氏
 CFOへの調査は、2003年、2005年に続き、今回で3回目となる。実際の調査は、2007年の3月から8月にかけて、79カ国、約1,230社、うち日本企業67社を対象に、面談形式のインタビューおよびアンケート調査によって実施された。

 「当社が実施したCEO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)を対象とした調査において、成長を前提とした収益性の向上を意識する企業が増加していることが明確となった。企業の収益性向上には、グローバル化は避けて通れない課題であり、イノベーションが必要とCEOは考えている。今回の調査は、その結果をふまえて実施。CFOと経理財務部門の上級管理職が特にリスク管理において、どのような役割を果たし、それらが有効に機能しているかについて、仮説を立てて調査を行った」(IBMビジネス コンサルティング サービス・執行役員 パートナー フィナンシャル・マネジメント・サービス担当・渡邊達雄氏)

 調査の前提となっているのは、最近増加している「グローバル統合型企業=Globally Integrated Enterprise(GIE)」。世界各国に置いた工場やオフィスまで含めて、あたかもひとつの企業として仮想的に経営する企業を指す。

 GIEは、市場経済の拡大と、高度な情報通信技術や輸送網の普及が全世界規模で進展する中で、経営資源をグローバル規模で最適化し、さらなる競争力向上と経営効率化を実現すると、IBCSでは定義づけている。

 「IBM自身がGIEとして企業活動を実践し、大きな成果を収めている」(渡邊氏)


グローバル規模で統合された経理財務組織=IFOに必要な4つの要素
 さらに、IBMではGIEを実現するための経理財務組織を、「Integrated Finance Organization(IFO)」と定義。その実現には、以下の4つの要素が必要であるとする。

 1)グループ標準の義務化
 2)企業全体での勘定科目の共通化・標準化
 3)企業全体での共通データの定義
 4)標準化された共通業務プロセスの利用

 IBCSでは、この4点について、全世界企業の調査結果と日本企業の結果を比較した。

 その結果、1から4のいずれにおいても、日本企業の対応が遅れていることが明確となった。

 「これは日本で連結決算制度が導入されたのは2000年からで、まだ10年経っていない。また、子会社設立の成り立ちも欧米の企業とは異なり、企業統合を狙ったものではなく、子会社が独自に活動することを目指して誕生するといった要因があるため、グローバルな統合が進んでいないのではないか」(渡邊氏)


 IFOを実現した企業と、そうではない企業とを比較すると、IFOを実現した企業は、社内の数値データを正しく把握し、より多くの時間を意思決定や統制活動に費やしている。例えば出張費の集計にかかる時間で比較すると、全世界調査では1時間程度で集計が完了する企業が45%であるのに対し、日本では1日から1週間未満が39%となっている。しかも、1時間程度で取得している企業は、信頼性できるが43%、1日から1週間未満で取得している企業は、信頼性できるが12%と、データ集計が速いほど信頼性が高くなる傾向がはっきりと出ている。


IFOの要素である、グループ標準の義務づけの実現について、全世界の企業と日本企業との比較 IFOの要素である、企業全体で勘定科目の共通化、標準化が実現しているか全世界の企業と日本企業との比較 IFOの要素である、企業全体での共通データ定義が実現されているか、全世界の企業と日本企業との比較

IFOの要素である、標準化された共通業務プロセスの利用について、全世界の企業と日本企業との比較 IFO企業と非IFO企業が、各課題に対する効率化の比較 IFO、非IFO、日本企業のテクノロジーと業務処理作業モデルの比較

 その背景には、業務プロセスなどの共通化と共に、ERP、データウェアハウスなどテクノロジー活用がある。

 渡邊氏は、「テクノロジーと業務処理の統合は、どちらを先に実現すべきか、難しい問題ではあるが、両方が揃うことで企業の効率向上が実現していることは明らかだといえる。出張費の集計における、世界企業と日本企業の差異もオートマチック処理が実現できているか、否かによって結果に差が開いている」と、IT導入の必要性を強調した。

 リスク管理においては、日本でも日本版SOX法により、財務報告リスクをはじめとするコンプライアンス・リスクへの関心が高まっているが、これは全世界でも同様。実際のリスクは、M&Aや自然災害など経理財務以外のリスク割合が大きいものの、企業におけるリスク責任者はCFOとする企業が、全世界では多い。それに対し、日本企業では、CFOがリスク管理の総責任者と回答したのは26%で、CEOの56%を下回っている。

 また、実際にリスクが発生した場合には、日本のCFOや経理財務部門は、世界の傾向と比較して、リスク管理の報告をCEO、取締役会、事業部長、ビジネス・パートナーなど幅広く関係者に報告をする傾向にある。

 同社では、こうした結果を踏まえ、各企業のIFOへの成熟度を診断する、「IFOアセスメントツール」を提供していく。


全世界の企業と日本企業がIFO実践によりどんな作業に時間を費やしているか、過去、現在、将来目標の比較 企業におけるリスク発生時において、経理財務部門の貢献度

企業内のリスク責任者が誰か、全世界の企業と日本企業との比較 IFOを実現するためのプロセス


URL
  IBMビジネスコンサルティング サービス株式会社
  http://www-06.ibm.com/services/bcs/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/2007/12/1401.html


( 三浦 優子 )
2007/12/14 18:06

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