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NGNによる防災、生体認証によるテロ・犯罪対策などの事業を強化-NEC


官公ソリューション事業本部長の清水隆明氏

官公ソリューション事業領域

防災NGNの概要
 日本電気株式会社(以下、NEC)は12月14日、官公ソリューション事業本部の戦略説明会を開催。同本部長の清水隆明氏が登壇し、「安心・安全な社会の実現に向けて、防災や国際テロや犯罪に対する事業を強化していく」と説明した。

 官公ソリューション事業本部ではこれまで、主に国・自治体・地域に向けて、「航空交通管制システム」、高速道路での「前方障害物情報提供システム」「地震活動等総合監視システム」「牛肉トレーサビリティ」などのソリューションを提供してきた。防災に関しても、無線や情報システム、消防司令システムなどさまざまなソリューションを提供し、高いシェアを有している。一方で「これら既存の防災システムには、大きな課題が存在している」と清水氏は語る。

 防災時の対応には、国が行う「公助」と住民同士が行う「自助・共助」の2つが存在する。課題とは、これらの相互接続性が欠けている点だと清水氏は指摘。「公助の面をみると、これまで組織・地域ごとにネットワークや情報システムが構築されてきたため、互いが切り離されてしまっている。まずは、これを接続しなくてはいけない。さらに、国の防災システムはどうしても公助の色合いが強く、自助や共助では利用できない場合が多い。しかし実は、阪神・淡路大震災の時、生き埋めなどになった人の救助は、実に97%が自助・共助によって行われたという。住民が国の防災システムを利用して、自助・共助をより円滑に行える仕組みがあれば、効率的な救助活動が可能になるはずだ」と述べた。

 NECでは、これらの課題をNGNによって解決する方針。「次世代の防災ネットワークでは、相互接続性、広帯域、制御性、セキュリティなどが求められるが、これらは標準的なNGNがめざす姿と一致している。当社では現NGNに防災性を付加し、“防災NGN”として実現。公助と自助・共助の両面に貢献したい」(同氏)としている。


 具体的には、防災NGNを構築し既存ネットワークとの融合を図り、国から都道府県・市町村にまで至る縦方向の連携、および組織間・地域間の横方向の連携の実現をめざす。さらに、国の防災システムを住民が密に利用できるようにするポータルシステムを開発するほか、キャリアの通信網がすべてダウンしても連絡が取れるよう、衛星・地上・地下に三重化された新たなアクセス手段を構築するといった計画を進めている。

 このための実活動として、防災関連省庁への提言、実証実験の提案、中央防災ネットワークと省庁LANの相互接続や件の防災行政無線のIP化などの商談を現在進行中。ポータルシステムに関しても、すでにプロトタイプ開発に着手。実現すれば、国から情報を掲示するほか、住民が提供する「風邪薬が不足している」などの現場の情報を地図上に表示し、公助と自助・共助活動の連携が可能になるという。

 防災事業について、3~5年をめどに500億円規模へ拡大めざす方針。


公助向け防災システムの高度化 自助・共助支援システムの整備

 一方、国際テロや犯罪に対する事業強化としては、生体認証に注力する方針。「バイオメトリクス市場は拡大しており、3年後には1.6倍の420億円へ達する見込み。技術的にも進化し、指紋や静脈、虹彩などのほかに、においや声、肌、遺伝子、まばたき、歩き方と種類自体が増えている」(同氏)。

 こうした状況の中、NECでは、日本・米国をはじめ海外22カ国に捜査用途の指紋認証システムを納入するほか、香港には顔認証による入国管理局システムを納入するなど、多数の導入実績を築いている。清水氏によれば、「捜査用途のバイオメトリクスは、海外ではすでに成熟した市場。今後は香港の事例のように、入出国管理や国民ID管理などの市場拡大が予想される」とのことで、日本でも、法務省入国管理局が11月20日より指紋・顔情報など個人識別上を活用した入国審査システムを開始している。

 清水氏は「捜査用途の市場はもちろん、今後は新しく高まってきた入出国管理・国民ID管理用途の市場に対して、バイオメトリクス事業を拡大していく」と意気込む。具体的には、「これまでと同様に継続的な技術研究開発を行い、新しいバイオメトリクス技術を開拓していくとともに、欧州、東京、北米、中南米、アジアパシフィック、中国の6極体制でグローバル化を進める。現地法人では、人材育成と機能の強化を図り、一部技術移転なども進め、グローバルでSIが可能な体制をめざす」(同氏)とのこと。

 これにより、バイオメトリクス事業では3年間で400億円の売り上げをめざすとしている。



URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.nec.co.jp/press/ja/0712/1401.html


( 川島 弘之 )
2007/12/14 16:04

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