アイログ株式会社は今年の7月で日本法人設立10周年を迎えた。BRMS(ビジネスルール管理システム)や最適化ツールなどを主力製品として持つ同社だが、従来のコンポーネント中心のビジネスから、ソリューションビジネスへ転換を図っている。そのキーワードとなっているのが、「ユーザーが抱える痛みにどうマッチさせるか」だ。同社の現状と今後の取り組みについて、同社代表取締役ゼネラルマネージャーの和多田茂氏に話を伺った。
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代表取締役ゼネラルマネージャーの和多田茂氏
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―簡単に取り扱い製品について説明していただけますでしょうか?
和多田氏
大きく3つのカテゴリーの製品を提供しています。ひとつ目はILOG Optimization Suiteなどの最適化エンジン、ふたつ目はILOG JRulesなどのビジネスルール管理システム。そして最後にILOG JViewsなどのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)構築ツールになります。
これらは単体でみると、まったく異なる用途で用いられるようにみえます。しかし、それぞれ相関関係があるのです。
たとえば、ビジネスルール管理システムは、リアルタイムにビジネスルールに照らしあわせることができます。また最適化エンジンは、意志決定で求められる最適解を、必要な場面で検索することができます。これらは意志決定上、相関関係にあります。アイログの両製品は、それぞれ双方向にやり取りできます。
こうして得られた情報も、数字の羅列や言葉だけで表現されていては理解できません。それを地図やガントチャートなど可視化するのがGUI構築ツールです。
―企業にとって必要な製品が揃っていますね。ただ、アイログ製品の露出度が高くないように感じているのですが。
和多田氏
そうですね。それは、弊社の製品は完成した製品としてではなく、コンポーネントとして提供されているからでしょう。インテルインサイドではありませんが、各社アプリケーションに必要に応じて組み込まれて提供されることが多いのです。
コンポーネントですと、エンドユーザーがそのまま購入して使うことはできません。SIerなどがアプリケーションの形にしないと使えないからです。そのため、アイログの露出度が高くないとおもわれているのでしょう。
ですので、現在ソリューションビジネスに注力しています。
―具体的には?
和多田氏
たとえば、生保・損保などの金融業界に的を絞ったソリューションを提案しています。
ご存じのように、生保では不払い問題が深刻です。この原因のひとつに裏側のロジックが煩雑で、手作業で行われているという点があげられます。また、不払い問題に関する解決策を金融監督庁に提出しなければいけないという現実的な課題もあります。その際の解決策では、ITを利用することなどが挙げられており、ビジネスルール管理システムの引き合いが強まっているのです。
もちろん、不払い問題だけでなく、新規契約の審査時のロジックとしての引き合いも強いです。
―不払い問題がビジネスチャンスですか。意外な感じがします。
和多田氏
ユーザーが抱える痛みにどうマッチするかが重要と言えます。たとえば、レガシーシステムのメンテナンス問題などにも、弊社のソリューションがマッチするとおもっています。
そのほか、物流関連にも今後力を入れるつもりです。今年の2月にLogicToolsを買収し、物流関連のソリューションが提供できるようになっています。まだ日本語化は終わっていませんが、来年には対応できます。
―物流業界が抱える痛みはどのようなものになりますか?
和多田氏
物流業界で問題になっているのは、燃料費の高騰と環境問題です。これを解決するには、いかに物流を効率化できるかが重要になります。弊社の製品を利用することで、配送計画シミュレーションを実現できるので、これをソリューションとして提案していきます。
―なるほど。さまざまな企業が抱える悩みを解決するきっかけになっていますね。さきほどソリューションとして提案することで、認知度を高めるという話がありましたが、SIerなどのパートナーの存在も重要になるとおもいます。パートナーとの関係についてはどのように考えていますか?
和多田氏
非常に重要です。弊社製品を取り扱っていただける有力パートナーをいかに育てるかが課題となっています。
われわれの製品は単独で利用するよりも、他のプロダクトを補完する形で利用する場合が多いのです。その際、はじめて弊社製品を扱われる場合、工数見積もりに不安を感じるらしく、なかなか最初の一歩が踏み込みにくいという話を聞いています。
この最初の一歩となる導入例がうまくいくかどうかが、引き続き弊社製品を扱っていただけるかどうかにかかっているのが現状ですね。実際、最初の導入例がうまくいったパートナーは、以後積極的に取り組んでいただいています。
―製品導入の際、どういうところでつまづくのでしょうか?
和多田氏
ビジネスルール管理システムでは、あまり問題は発生していません。GUI構築ツールも同様です。難しいのは最適化ですね。経験が少ないと、お客さまとのミスマッチが発生しがちですから。こうした点でのパートナー支援もしっかりと行っていきます。
―有力パートナーの獲得が課題ですね。
和多田氏
ええ。われわれの取り扱い製品のニーズは十分にあるとみています。セミナーなどを開催しても出席率は高いです。エンドユーザーは非常に関心を示していますし、一度導入された企業の満足度も非常に高いです。今はこうしたニーズをSIerに理解していただき、導入経験を積んでいただき、積極的に取り組んでいただけるパートナーとなっていただけるようにしたいですね。
グローバルの売上を見ると、年20%以上の伸び率です。日本でも同じくらいの成長は見込めるとおもいます。また、来年4月以降に多くの商談が成立する見込みですので、40%の成長も夢ではないと考えています。
■ URL
アイログ株式会社
http://www.ilog.co.jp/
( 福浦 一広 )
2007/12/21 11:45
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